第III部 写した本・刷った本
25. 百万塔 附無垢浄光大陀羅尼経自心印陀羅尼 1枚(1基)
奈良 宝亀元(770)年 【所蔵情報(電子資料あり)】
26. 伴善男物語 3巻1軸
安永7(1778)年写 【所蔵情報】
27. 白氏文集 71巻(巻24-37欠)目1巻 14冊
(唐)白居易著 ; 那波道円校 元和4(1618)年刊 【所蔵情報(電子資料あり)】
29. 訂正常陸国風土記 1冊
⻄野宣明校訂 ⽔⼾ : 聴松軒 天保10(1839)年刊 後印 【所蔵情報】
『常陸国風土記』は奈良時代に編纂された官撰地誌で、現存する五カ国の風土記のうちの一つ。本書は国学者で水戸藩士の西野宣明(1802-1883)が校訂して頭注を加えた『常陸国風土記』の最初の本格的注釈書である。天保10年に水戸聴松軒から刊行され、後に水戸藩や江戸の玉巌堂(和泉屋金右衛門)から刊行された。本書は版木(茨城県立歴史館ほか蔵)や自筆稿本(静嘉堂文庫蔵)も現存する。
今回の出展品のうち、資料28は初印本で、資料29は後修本である。まず、冒頭の小宮山昌秀(1764-1840)の序文末尾に版下揮毫者である立原杏所(1786-1840)の署名があるが、前者はそこに落款印があるのに対し、後者はない。立原杏所は本書刊行の翌年に亡くなっており、印は初印本のみに捺されたものと思しい。また、本文17丁裏の頭注を見ると、前者で黒くベタ塗りになっている部分が、後者では加筆されている(写真参照)。彫らずに残しておいた部分に、後から加筆した注を彫ったものだろう。
今回の出展品のうち、資料28は初印本で、資料29は後修本である。まず、冒頭の小宮山昌秀(1764-1840)の序文末尾に版下揮毫者である立原杏所(1786-1840)の署名があるが、前者はそこに落款印があるのに対し、後者はない。立原杏所は本書刊行の翌年に亡くなっており、印は初印本のみに捺されたものと思しい。また、本文17丁裏の頭注を見ると、前者で黒くベタ塗りになっている部分が、後者では加筆されている(写真参照)。彫らずに残しておいた部分に、後から加筆した注を彫ったものだろう。
30. 古今和歌集 20巻2冊
紀友則ほか撰 正和元(1312)年 【所蔵情報(電子資料あり)】
平安時代前期に成立した最初の勅撰和歌集。本書は藤原定家校訂本のうち二条家相伝本である貞応本系に属する写本。ただし定家本の本奥書はない。烏丸光広(1579-1638)の極書(下巻末)や古筆了仲(1656-1736)の極札(別紙)には、世尊寺流第12代行尹(1286-1350)の筆とする。奥書によれば正和元年に二条為親自筆本を書写・校合し、翌年に宗匠本(二条為世本)でさらに校合したという。朱筆の声点や勘物もこうした諸本から書き写したものと思しい。なお、定家自筆本やその忠実な写本は本来、全1冊で歌を一行書きにするが、本書は上下2冊に分け、歌は二行書きし、新しい巻は必ず見開きの右側から書き始めるなど、全体にゆったりとした作りになっている。
31. 古今和歌集 20巻2冊 (二十一代集 56冊のうち)
紀友則ほか撰 京都:吉田四郎右衛門 正保4(1647)年刊 【所蔵情報】
平安時代前期に成立した最初の勅撰和歌集。本書は京都の書肆、吉田四郎右衛門が刊行した二十一代集の一部で、正保4年の刊記を持つことから正保版二十一代集と呼ばれる。吉田四郎右衛門は近世前期から幕末にかけて多くの書籍を刊行した書肆で、中でも二十一代集は200年以上にわたって増刷を続けた主力商品であった。ただし、古今和歌集を含む八代集相当部分は、当初別の書肆から刊行されており、その版木が元禄10(1697)年-宝永6(1709)年頃に吉田四郎右衛門に渡った際、新古今和歌集巻末に正保4年の刊記を入れて刊行された。本学所蔵品には新古今和歌集と新続古今和歌集の巻末にそれぞれ吉田四郎右衛門の刊記があることから、これ以降の刷りと考えられる。