令和5年度特別展ロゴマーク

第I部 本のかたち

1. 住吉物語絵巻 2軸

室町時代初期-中期 【所蔵情報(電子資料あり)】

住吉物語絵巻 2軸
鎌倉時代の『住吉物語』に取材した絵巻物。現状は改装補修の際の錯簡補写を交えて順序もなくつなぎ合わせた零本となっているが、室町期に遡る奈良絵による絵巻。『住吉物語』原作は『源氏物語』以前10世紀に作られたが、現存本は鎌倉時代の改作で、霊験譚の要素をもつ分かりやすいシンデレラ・ストーリーとして後世に受容された。

2. 住吉物語 5巻4冊 (巻1欠)

江戸時代初期 【所蔵情報(電子資料あり)】

住吉物語 5巻4冊 (巻1欠)住吉物語 5巻4冊 (巻1欠)
鎌倉時代の『住吉物語』に取材した奈良絵本。横本。表紙は濃紺地に金泥草花松等(各冊異る)模様、見返は菱形紋押銀箔、料紙は間に合い紙を使用し、各冊ともに6面の画図がある典型的な奈良絵本。各面13行で写すが、行間を均等にするため見当針を通して目印を付けている。

3. 悉曇要決 4巻4冊

信毫写 天福2(1234)年 【所蔵情報(電子資料あり)】

悉曇要決 4巻4冊悉曇要決 4巻4冊悉曇要決 4巻4冊
平安時代中期の天台僧で日本悉曇学(音韻学)中興の祖、明覚(1056-1106以前)の作。悉曇(サンスクリットについての研究)の概説であるが、当時の日本語の音韻と比較して記述した点が平安時代語の記述として注目される。本書は各冊奥書に、治承5(1181)年に越前豊原寺で写されたものを、天福2年に伊豆走湯寺などにおいて信毫が写したとある。各冊表紙に「成菩提院」「心俊」と所有者の署名があり、粘葉装の原装訂を残す。

4. 浦風 3巻1冊

江戸時代初期 【所蔵情報(電子資料あり)】

浦風 3巻1冊浦風 3巻1冊
室町物語。海からの風に感応して生まれた浦風姫が比叡山の真如僧都の母となる伝記物語。上中下3巻を1冊にまとめる。各巻に奈良絵風の画図4面があり、すべてで12面となる。印記「残花書屋」は、明治、大正時代の詩人、評論家で、紀州徳川家南葵文庫主任、日本女子大教授を務めた戸川残花(1855-1924)の蔵書印。綴葉装(列帖装とも)で、赤と白のかがり糸でかがり止めされている。

5. 蒙求 1冊

(唐)李瀚著 室町時代後期 【所蔵情報(電子資料あり)】

蒙求 1冊蒙求 1冊
中国の児童用の教科書。古代から南北朝までの古人の言行を題材として、暗唱しやすいように4字句で表し、類似の故事を一対にしている。形態として朗誦用の標題本と、標題ごとに典拠本文を摘記した注本との二種がある。本書は前者で、朗誦できるように全文に声点、漢字音のカナが付されている。印記「弥家蔵書」は、太政官の文書をつかさどる職を世襲した小槻宿禰家の蔵書印。原装巻子本を袋綴に改装してある。

6. 嘉慶2年4月5日 [足利義満御判御教書]

 【所蔵情報(電子資料あり)】

嘉慶2年4月5日 [足利義満御判御教書]
北野社家松梅院旧蔵「北野神社文書」の1点。中世の文化史・社会経済史上重要な資料群である。本紙は嘉慶2(1388)年4月5日に、筑後国御井郡に置かれた北野社領庄園について、将軍足利義満が、地頭北野家兼の子孫らによる競望と守護以下の妨げとを停止し、北野社に安堵することを証したものである。「左大臣源朝臣」のあとに義満の花押を押す。

7. 長秋詠草 3巻1帖

室町時代中期 【所蔵情報(電子資料あり)】

長秋詠草 3巻1帖長秋詠草 3巻1帖長秋詠草 3巻1帖
藤原俊成(1114-1204)の家集。治承2(1178)年3月に成立し、同年夏守覚法親王に進覧された俊成自撰の原形本の形を伝える本。上巻に久安百首・述懐百首を、中巻に四季歌・賀歌・恋歌を、下巻に雑歌・釈教歌・神社歌その他をそれぞれ収める。古筆了雪(1612-1675)によって姉小路基綱(1441-1504)筆と鑑定されている。綴葉装。

8. 源氏物語 54巻付1巻 53冊 (欠2巻)

江戸時代中期 【所蔵情報(電子資料あり)】

源氏物語 54巻付1巻 53冊 (欠2巻)
紺地の表紙に、当該の巻から想起される草木の下絵が金泥で描かれており、黒漆塗抽出箪笥に収納されている。その作りは、江戸時代前期、中期の嫁入り本の典型。胡蝶巻、宿木巻欠。貴重な調度品として保管されていたことをうかがわせ、書入はほぼない。続篇とされる山路露巻を付す。綴葉装。

9. 土左日記 1巻 (尊経閣叢刊)(複製)

東京 : 育徳財団 昭和3(1928)年 【所蔵情報】

土左日記 1巻 (尊経閣叢刊)(複製)土左日記 1巻 (尊経閣叢刊)(複製)土左日記 1巻 (尊経閣叢刊)(複製)
藤原定家(1162-1241)自筆、前田育徳会尊経閣文庫蔵国宝「土左日記」の複製本。定家の奥書によると、文暦2(1235)年5月に蓮華王院宝蔵の紀貫之自筆「土左日記」を見得て、それを書写した。原本は白紙のままの表紙を付した縦40センチ、横51センチほどの紙26枚をつないだ無軸無紐の巻子本で、外題には「土左日記〈貫之筆〉」と書かれていたという。さらに原本の面影を伝えるために末尾14行分を臨模して残してある。綴葉装。

10. 孝経 1冊

(漢)孔安国伝 文政6(1823)年跋 【所蔵情報】

孝経 1冊孝経 1冊孝経 1冊
孔子が説いた孝道を中心とした曾子学派の著。『論語』と並んで、儒教の基本図書として重視された。孔安国伝は中国においては唐末五代の間に忘逸したが、日本においては明経道博士清原、中原両家に伝承されて、後世まで盛行した。本書は現伝しない弘安2(1279)年の年紀をもつ巻子本を文政6年に模刻刊行したもの。出版の経緯は原本の所蔵者であった福山藩主阿部正精(1775-1826)の跋に詳しい。なおこの跋文が藩儒伊沢蘭軒(1777-1829)の手になることは、森鷗外『伊沢蘭軒』に語られている。

11. 孝経 1冊

(唐)玄宗注 ; 狩谷望之校 湯島 [江戸] : 求古楼 文政9(1826)年跋 【所蔵情報】

孝経 1冊孝経 1冊孝経 1冊
天宝5載(746年)重注の玄宗御注孝経北宋版本を、文政9年に狩谷望之(棭斎)(1775-1835)が模刻刊行したもの。棭斎による『孝経』の中日にわたる伝来から説き起こし、原本を模刻刊行する意義をいう長大な跋が載る。本書の原本、孤本である北宋版本は宮内庁書陵部現蔵にかかり、1023年から1033年の間の刊本で、もと棭斎の求古楼に蔵されていた。ほぼ原本の面目を伝える優れた翻刻本である。
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