令和5年度特別展ロゴマーク

第II部 本の構成

12. 新古今和歌集 20巻2冊

源通具等奉勅撰;山﨑宗鑑写 室町時代中期 【所蔵情報(電子資料あり)】

新古今和歌集 20巻2冊新古今和歌集 20巻2冊新古今和歌集 20巻2冊
奥書はなく、江戸時代前期の古筆鑑定家、古筆了祐(1645-1684)の「山﨑住宗鑑〈新古今和歌集/全部上下二冊〉」という極札により、山﨑宗鑑の筆とされる。表紙は藍色金砂子。重ねた料紙を二つ折にして綴じる綴葉装。料紙は両面書写に用いられる厚手の鳥の子。古写本の蒐集家として知られる大島雅太郎(1868-1948)による「青谿書屋」の印記がある。本書は小学館の新編日本古典文学全集『新古今和歌集』の底本に用いられる。

13. 伊勢物語 2巻2冊

作者不詳 【所蔵情報】

伊勢物語 2巻2冊伊勢物語 2巻2冊伊勢物語 2巻2冊
平安時代に成立した歌物語。必読の古典として後の時代にも広く受容された。垣間見に始まる男女の逢瀬を描いた「むかしおとこうゐかうふりして」から始まる一節は、今でもこれを採択する教科書が多い。装訂は綴葉装で、四つの穴をあけて上二つ下二つの穴をそれぞれ別の糸で綴じる。筑波大学の前身である東京高等師範学校の教授を務めた岡倉由三郎(1868-1936)による「岡倉文庫」の印記がある。

14. 伊勢物語肖聞抄 3巻3冊

宗祇述 ; 肖柏記 慶長14(1609)年刊 【所蔵情報(電子資料あり)】

伊勢物語肖聞抄 3巻3冊伊勢物語肖聞抄 3巻3冊伊勢物語肖聞抄 3巻3冊伊勢物語肖聞抄 3巻3冊
内題には「伊勢物語聞書」とあるが、外題の「肖聞抄」に従う。代表的な『伊勢物語』古注釈書の一つ。嵯峨に住した豪商の角倉素庵(1571-1632)による刊行とされ、漢籍仏典の版行を主とした当時、日本の古典文学作品が出版された意義は大きい。刊記に見える「也足叟素然」は、江戸時代前期の公卿、中院通勝(1556-1610)のこと。本文は古活字版、刊記のみ整版。東京文理科大学初代学長の三宅米吉(1860-1929)の「三宅蔵書」の印記がある。

15. 伊勢物語惟清抄 1冊

三条西実隆述 ; 清原宣賢記 製作年不詳 【所蔵情報(電子資料あり)】

伊勢物語惟清抄 1冊伊勢物語惟清抄 1冊伊勢物語惟清抄 1冊
代表的な『伊勢物語』古注釈書の一つ。巻首に清原宣賢(1475-1550)の自序が見え、大永2(1522)年5月に受けた三条西実隆(1455-1537)の講義を書き留めたことが分かる。このような師説の口伝を筆録したものを幅広く「聞書」と呼び、とくに古典籍の通釈を主とした口語体の講義録を「抄物」と呼ぶ。巻末の奥書には、同年9月に実隆自身が校閲したことを証し、宣賢の娘を妻とした左大史の小槻伊治(1496-1551)が大永3(1523)年6月に朱点を入れたことを記す。

16. 伊勢物語(真名本) 2巻1冊

建部綾足校訂 京 : 風月荘左衛門 明和6(1769)年刊 【所蔵情報】

伊勢物語(真名本) 2巻1冊伊勢物語(真名本) 2巻1冊伊勢物語(真名本) 2巻1冊
京都の大書肆、風月荘左衛門(1701-1782)による売り出し。書名は国文学研究資料館国書データベースによるが、内題・尾題・版心には「伊勢物語」、外題には「旧本伊勢物語」、序には「楷書勢語」とある。ほかにも漢字のみによって表記される伊勢物語の真名本は数本が残されるものの、その文字遣いには誤りが多いため、仮名本の成立を遡るものとは考え難い。本書は、その文字遣いの誤りを建部綾足(1719-1774)が正したものという。

17. 仁勢物語 2巻2冊

作者不詳 江戸時代初期刊 【所蔵情報(電子資料あり)】

仁勢物語 2巻2冊仁勢物語 2巻2冊仁勢物語 2巻2冊
書名は下巻の外題による。上巻は第一次版本とされるが、下巻は第一次版本を覆刻した第二次版本で、柱の部分に丁付け等が加わる。書名の「仁勢」は「似せ」の意で、その内容は『伊勢物語』をもじったパロディ。初段は「をかし、男、ほうかふりして」から始まる。江戸時代初期には『伊勢物語』の流行を受けて、同書のパロディが数多く出版された。本書は岩波書店の日本古典文学大系『仮名草子集』の底本に用いられる。

18. 論語集解 2冊(零本)

(魏) 何晏注 1890-1891年頃印 【所蔵情報(電子資料あり)】

論語集解 2冊(零本)論語集解 2冊(零本)論語集解 2冊(零本)
現存最古の『論語』注釈書。日本では、もと正平19(1364)年に版行されたものがあり、そこから跋文の削られた板木が明治23(1890)年ごろに現在の東京国立博物館へと伝わった際、複数部が刷られた。本書はその一部とされる。板木が腐蝕の甚だしい状態であったため読むには堪えないが、日本における『論語集解』の伝来と受容を示す資料と言える。巻首には東京文理科大学にて教授を務めた諸橋轍次(1883-1982)の識語がある。

19. 論語集解 10巻2冊

(魏)何晏注 光緒10(1884)年刊 【所蔵情報】

論語集解 10巻2冊論語集解 10巻2冊論語集解 10巻2冊
駐日公使であった清・黎庶昌(1837-1897)によって出版された『古逸叢書』のうちの一つ。随員であった楊守敬(1839-1915)とともに、日本に残る漢籍のうち善本を集めて覆刻再版したもので、本書は、堺の道祐居士によって正平19年に版行されたことを記す跋文を持つ、いわゆる単跋本に基づく。巻末には、日本における漢籍の伝存状況を解説した森立之(1807-1885)の手に成る『経籍訪古志』を引用する。

20. 論語集解義疏 10巻4冊

(魏)何晏注 ; (梁)皇侃疏 19世紀末年刊 【所蔵情報】

論語集解義疏 10巻4冊論語集解義疏 10巻4冊論語集解義疏 10巻4冊論語集解義疏 10巻4冊
中国では一時散逸していたが、日本では足利学校にその写本が伝わり、江戸時代中期には儒学者の根本武い夷(1699-1764)の手によって校刊された。これが中国に伝わり、清・乾隆帝の勅撰による一大叢書『四庫全書』に入れられ、のちには清・鮑廷博の『知不足斎叢書』や清・鍾謙鈞の『古経解彙函』にも収められることになる。本書では、大字単行で記された本文に対して、まず何晏の注が続き、さらに皇侃の疏が小字双行で示される。

21. 論語(朱熹集註) 10巻4冊

(宋)朱熹注 ; (日本)林羅山点 京 : 長村半兵衛 : 河南四郎右衛門 : 梶川七郎兵衛 : 植村藤右衛門 安永5(1776)年刊 【所蔵情報】

論語(朱熹集註) 10巻4冊論語(朱熹集註) 10巻4冊論語(朱熹集註) 10巻4冊論語(朱熹集註) 10巻4冊
題簽の下側は摩滅しているが、合刻された『大学』の題簽に「道春点」とあるように、本文には江戸時代初期の儒者である林羅山(1583-1657)の訓点が施される。何晏『論語集解』や皇侃『論語集解義疏』を古注と呼ぶ一方、朱熹『論語集注』は注釈の画期をなしたものとして新注と呼ばれる。林羅山の訓点も新注に基づいたもの。余白には多くの書き入れが見られ、それでも収まらない場合には付箋を貼付して追記される。

22. 桂菴和尚家法倭点 1冊

桂庵玄樹撰 江戸時代初期刊 【所蔵情報(電子資料あり)】

桂菴和尚家法倭点 1冊桂菴和尚家法倭点 1冊桂菴和尚家法倭点 1冊
朱熹『論語集注』をはじめとする宋学の影響のもと、新注による経典の訓法を説いた書。四書五経の注釈、句読の切り方、助辞の読み方等、古注と新注の違いを具体的に示す。それまでは博士家をはじめ古注による訓法に従っていたが、とくに五山僧を中心に宋学の影響を受けるなか、新注の解釈に基づいた訓法が求められるようになった。本書は、経典解釈が新注へと傾倒する過程を示すとともに、日本における宋学受容の一端を伝える。のち、林羅山の道春点にも影響を与え、江戸時代における朱子学盛行の基礎となる。

23. 論語白文 2冊

伊藤善韶撰 寛政5(1793)年刊 【所蔵情報】

論語白文 2冊論語白文 2冊
注釈を除いた『論語』の白文に対して、孔子の古義に立ち返ろうとした伊藤仁斎(1627-1705)の『論語古義』に基づいて訓点を付したもの。巻頭には『論語古義』と同じく、仁斎の長男、伊藤東涯(1670-1736)による正徳2(1712)年の序が見える。善韶は東涯の三男、仁斎の孫にあたる。朱子学を官学と定める江戸時代において、仁斎のように反朱子学の立場を取るものもあり、本書の刊行によって仁斎の提唱する古義学の受容される様相が窺い知られる。

24. 論語古訓正文 2巻1冊

太宰定保校 ; 太宰春台点 東京 : 小林新兵衛 宝暦4(1754)年刊 天明7(1787)年再板 【所蔵情報】

論語古訓正文 2巻1冊論語古訓正文 2巻1冊
太宰春台(1680-1747)の『論語古訓』に基づいて『論語』の白文に訓点を付したもの。春台は、朱子学や古義学を批判する荻生徂徠(1666-1728)に学び、同門の服部南郭(1683-1759)と並んで蘐園学派の双璧と称された。本書は、初学者向けに刊行されたもので、重刻されたことからも受容の広さが窺われる。刊記には広告があり、春台の著作が並ぶ。