林文庫
東京高等師範学校教授林泰輔の旧蔵書1,903 点から成るコレクシ ョン。大正11(1922)年12月受入。林文庫は、ほとんどが我が国で書写された漢籍と和刻の漢籍であるが、元亀写本の論語集注ほか貴重なものが少なくない。
日本で書写された集註本最古の写本。本書に施されている訓点は桂庵点と称される訓点法によっており、訓点史上、経学史上において重要な研究資料である。
『論語抄』
零本(存巻七〜十) 二冊 [ 室町時代後期 - 江戸時代初期 ]写
何晏集解の文明7年奥書本。経文には訓点を付す。巻末識語の末尾「文明七乙未仲冬上浣題」の後に、改行して「可耻々々、没蹤跡処」とある。この八文字は他の文明本にはない。
『論語集解』
五冊 [ 室町時代中期 ]写
巻末に「堺浦道祐居士重新命工鏤梓 正平甲辰五月吉日謹誌」の識語をもつ、正平版論語単跋本の写本。印記に「円融印」「盛胤之印」とあり、天台宗円融印の梶井宮盛胤法親王の所蔵本であることを示す。
『論語抄』
九冊 [ 慶長・元和中(1596-1624) ]写。古活字版。
第一冊に「船橋蔵書」の印記がある。「船橋」とは、博士家である清原家の流れを汲む、儒道を家業とし歴代天皇の侍読をつとめた家柄である。この「論語抄」について、林泰輔は、『論語年譜』に「論語抄の中に於て最も完備せしものの如くなれば、清家中にありても特に学識ありしものの作なるべし。」と記している。