筑波大学附属図書館展示Blog  2011年10月
筑波大学附属図書館で開催している特別展・企画展のスタッフブログを復元したものです。
※展示当時の情報を尊重し、参照リンク先URLやコメント等は基本的に当時のまま掲載しております。

本日17時、おかげさまで無事特別展の会期が終了しました。ご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました。ご来場者総数は814人でした。

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 多くの皆様のご来場に重ねて御礼申し上げます。

本日、山田学長、赤平副学長、鈴木副学長に観覧いただきました。谷口先生の説明に耳を傾けられ、時折質問を交えながら興味深くご覧になられました。

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 特別展も残り少なくなりました。資料やパネルを追加して、当初よりわかりやすくなりましたので、既にご覧いただいた方にも楽しんでいただけると思います。皆様のご来場をお待ちしています。

たくさんの皆様にお越しいただきありがとうございます。ご来場いただいたお客様のアンケートをご紹介します。

  • 普段はみることができないような資料を見ることができとても勉強になりました。写本された時代が異なる同じ文献を見比べることができた点が特に興味深かったです。矢印で示されている部分が何を伝えているのか一部わかりづらい点があったので近くに説明等があればよかったです。(学生)
    *ご指摘のとおり矢印だけではわかりづらいところもあるため説明を加えました。観覧の栞やポスターについてのパネルなども追加しましたので、再度のご観覧をお待ちしております。

  • 貴重な資料展示よかったです。今後も企画をよろしくお願い致します。(学外・牛久市)

  • 見ごたえのある展示でとてもよかったです。(学外・水戸市)

  • 漢籍という地味なテーマだが、ポスターの明るさに興味をひかれて来ました。中国の文化が日本にいかにはいってきたか、漢籍を通して考えることができました。時代を経てきた貴重書の数々を見せていただき、慶長年間などに思いをはせました。図録の解説はとてもよみごたえがあり、再度熟読したいと思います。(教職員)

  • 冊子のみでもかなり勉強になりました。無償で知識を得て、持ち帰る事ができる事に感謝しております。(学内)

  • 意義のある展示であると思います。日頃漢籍に接する事が少なくなっているが、久し振りに旧い記憶が眼前によみがえってきました。ありがとうございました。(学外・ひたちなか市)

  • 実際に自ら手に取って、どのようなものかを見ることが出来るスペースがあったのが良かった。展示中の貴重書は、手に取ることも、自ら調べることもあまり無い分野のものばかりだったので新鮮だった。また、変色や破損箇所があるものの、書籍としての形をたもっていることが驚きだった。附属図書館の資料保存能力に脱帽でした。(学生)

  • ガラスに自分の姿が反射して見づらい。(学内)
  • ケースの角にある史料やキャプションが少し見づらかったです。(ガラスのつぎ目がジャマをして…)貴重な史料を拝見できる機会を設けていただき、ありがとうございます。(学外・土浦市)
    *今回は展示品の数が多くガラス越しで見づらい場所もあり申し訳ありません。また、このほか文字が小さいので読みづらいというお声もいただいております。

  • 貴重書は筑大の誇り。ありがたく拝見しました。筑大からの情報発信として、今回の企画は価値が高いと見ました。ご担当の方、まことにごくろうさまでした。(教職員)

  • 興味深い展示でした。ありがとうございました。(学外・水戸市)

  • 漢籍に大変興味を持っておりましたので、講演会と展示を併せて学ぶ事ができ、勉強になりました。パンフレットもいただけて満足です。また古典籍に関する展示をお願い致します。(学生)

  • 貴重な書物を見られてよかったです。質問できる人がいなくて残念でした。(学外・つくばみらい市)

  • 久しぶりに良い勉強をしました。(市内)

  • 貴重な文献とは一言に言い切れない展示品に触れることができ大変有意義で幸福なひとときでした。(中略)学生時代を想起したり、今回の大震災、台風、諸々の現在過去未来への想像が際限もなく広がっています。ありがとうございます。静かな感動と感謝をこめて…(学外・石岡市)

 10月9日の特別講演会にもアンケートをいただいております。
  • 近未来カフェの客が講演会中に出入りし、ipadをタッチしているというのはいかがなものか。会場設営に関しては工夫が必要なのではないか。(以下略)(学内)
  • 大変良い講演でした。(詳細にわたり解りやすいお話しでした。)(市内)
  • “跋”について基本的な知識がなかったので大変詳細に説明いただきありがとうございました。いろいろな本が先生方によって紹介され皆さんの目にふれる機会をつくっていただくことは図書館にとって大変有意義なことと思います。(学内)

 アンケートをお寄せいただいた皆様どうもありがとうございました。ほかにも直接ご意見をいただいた方々もありがとうございました。特別展は今週いっぱい開催しております。一度来られた方もまたお越しください。お待ちしております。

先日話題とした漢字の読みの問題の続きです。今回の特別展では、一番初めに『論語集解』が展示されていますが、これは魏の何晏によって編纂されたものです。実は、これについて「何晏」というのはどう読むのですか、というご質問がありました。そこで、急遽会場配布用の「栞」を作り、人名を中心にいくつか読みを振りました。この栞では「何晏」には「かあん」と読みを振りました。
 「何晏」の読みは、複数の辞典・インターネット等の情報源で調べても「かあん」と同じ読みで出てきます。ところが、前回話題にした白氏文集同様、「読み癖」「習慣」等の原因で、人名にも読みが複数出てくるものがあります。
 たとえば漢代経学を集大成したといわれる後漢の鄭玄は、大辞泉では「ていげん」、日本国語大辞典では「じょうげん」という見出し((「ていげん」とも)という注あり)のもとに記述されています。また、ウィキペディアの「鄭玄」の項目でも「ていげん」と読んでいますが、「中国人名は漢音で読まれることが多いが、鄭玄のように古くから日本で知名度の高い人物は古代の呉音が残るので、「じょうげん」と呼ばれることが多い。」という注が付けられています。
 これについて、松浦友久先生は
 『万葉集』という名の双関語 (かけことば) : 日中詩学ノート 大修館書店、1995.4,
の「ふみは『文集』『文選』」(p.202~212)の中で、以下のように述べています。

  • 一般に、「呉音」とは、奈良朝の初めごろまでに伝えられた南方(江南)系の発音、「漢音」とは、奈良朝から平安初期にかけて伝えられた北方(長安)系の発音、とされている。
  • 固有名詞は対象と密着しているので、呼びかたを変えてしまうと対象の“性格”や“内容”と“呼びかた”とのあいだに大きなズレが生まれやすい。
  • (このため)晋初の「杜預」は依然として伝来当時の呉音(「どよ」)で呼ばれ、後漢の「鄭玄」(じょうげん)も『毛(もう)伝・鄭(てい)箋・孔(こう)疏』などと併称されるときは漢音で呼ばれながら、単独にはおおむね呉音のままで呼ばれている。
 我々の栞でも「鄭玄」には「じょうげん」と読みを振っていますが、これは以上のような理由によるものです。
 ところで、松浦先生はこれに続けて
  • ただし「孔子(こうし)」が「孔子(くじ)」でなくなったように、極度に頻出する場合には、違和感が薄れて変化しやすい
とも述べられています。
 さて、実は、我々の栞中に「孔安国」が出てくるのですが、これには「ぐあんこく」と読みを振っています。孔安国は、多くの辞典では「こうあんこく」と読まれています。日本国語大辞典でも「こうあんこく」で項目が立てられていますが、さすがに"「ぐあんこく」ともいうという"と説明も付されています。固有名詞は呼び方が変化しにくい、という原則にしたがえば、「ぐ」で呼ばれそうなものですが、知名度の問題とともに、孔安国は孔子の子孫でもあるので、一般に「こう」と呼ばれることが多いのでしょう。
 ここで参照した松浦先生の著作は、大変読みやすく、また興味深いものです。この方面にご関心のある方は、ぜひご一読ください。

10月12日、鈴木昌平氏が人文社会系の中野目先生とともに特別展を観覧されました。鈴木氏は中国文学者・鈴木虎雄のご子孫にあたり、書状・書画等約760点を本学にご寄贈くださいました。今回の展示ではその貴重なコレクション「鈴木虎雄関係史料」の中から4点を初めて公開しております。

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comments[2011-10-13/FS]

貴重な史料のご寄贈、本当にありがとうございました。

10月9日、13時半から14時半すぎまで谷口先生の講演会が集会室で行われました。近未来書籍空間と同じ会場で30名以上の方が熱心に聞いてくださいました。引き続き行われた展示会場でのギャラリートークでは、実物を前にして先生に詳しく丁寧にお話をしていただきながらみなさん熱心に観覧されていました。先生、長い時間ありがとうございました。

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comments[2011-10-13/FS]

谷口先生、ありがとうございました。講演会の写真、近未来書籍空間のディスプレイ等の様子もわかり、いい雰囲気ですね。

附属図書館集会室を会場に行われた学内研究企画「近未来書籍空間」が雙峰祭グランプリ2011を受賞しました。昨年の「近未来書籍カフェ」に続いて2冠達成,おめでとうございます!
 企画では図書館キャラクターがまじゃんぱー(親しみを込めてがまじゃんぱー先生と呼ばれています)も活躍していましたが,実はアカデミックながま先生,特別展もしっかり見ていました!

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展示に見入るがまじゃんぱー

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歴聖大儒像にびっくり

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記帳していただきました。


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がまじゃんぱー先生直筆サインです

comments[2011-10-13/FS]

がまじゃんぱー先生直筆のサイン、貴重ですねー!

昨日(9日)の特別展WGのTwitterでお知らせした白氏文集の読みの問題について、ご報告します。この読み、アンケートでも以下のようにご質問がありました。

  • 白氏文集は「はくしもんじゅう」ではありませんか?「はくしぶんしゅう」とあってびっくりしました。
 そうですよね。古典の時間に「はくしもんじゅう」と習った、という方も多いのではないかと思います。この問題については、三省堂の「ことばと学びの宇宙」というページの高等学校の教科書に関する質問の中に、同じ質問があります。
これに対する答えは
『白氏文集』は、平安時代にわが国に舶載されて以降、「はくしぶんしゅう」と呼ばれました。平安期以後もしばらくは、「もんじゅう(もんじふ)」の例は見られません。やがて、明治中期頃より、「呉音・漢音」、「読みぐせ」などの問題が複雑に絡まって、「もんじゅうという読み方が流布したと考えられます。
ということで、参考文献が紹介されています。
 ここで参考文献にあがっている著者の中でも、明治大学の神鷹徳治先生は、この問題について精力的に論文を発表されています。神鷹先生の論考のうち、2010年3月に発表されたものが明治大学のリポジトリで公開されており、インターネットで容易に参照することができます。
〔蔵書の玉手箱〕六たび-『文集』は<もんじゅう>か<ぶんしゅう>か-
 図書の譜:明治大学図書館紀要14(2010.3)(本文はこちら)

 この論考では、神鷹先生がこれまでにこの問題について論じられた5編の論文の情報も見ることができ、非常に参考になります。少し長いですが、以下にこの論考からの引用を記します。
この問題は以下の二点にまとめることが出来る。
その一.『文集』の読みは江戸時代以前はむろんのこと、明治二〇年代までは例外なくどの資料も〈ぶんしゅう〉と読んでいる。〈もんじゅう〉と読まれるようになったのは明治三〇年代以降のことである。
その二.漢音の〈ぶんしゅう〉を呉音の〈もんじゅう〉と読むようになった理由は、明治三〇年代には義務教育の普及により、小学校於いて作文教育が進行したことによって「卒業文集」「遠足文集」などが編まれることが増えた。それに対して国文学者の方から『白氏文集』との読み方を区別するために〈もんじゅう〉という読み方が提出され、この同音回避の現象が国文学や中国文学の分野に広く受け入れられたことによる。
 以上のように、そもそも呉音と漢音という読みの違いの問題があり、さらに明治以降の教育の問題が関わってくる、ということで、非常に興味深い指摘がなされています詳しくは、この論考をはじめとする神鷹先生の諸論文をご覧ください。また、三省堂のサイトにあがっている参考文献もあわせてご参照ください。
 なお、大東文化大学の山口謡司先生のサイトにも、この件についての「「ぶんしゅう」から「もんじゅう」へ」と題するエッセイがあり、その中で「呉音と漢音」のことについても説明されています。
 以上のような文献をご覧いただくと、我々の特別展で「はくしぶんしゅう」と読んでいる理由がご理解いただけると思います。漢字の読みは難しいものですが、中国の古典では、いわゆる「読み癖」「習慣」によるものがあり、特に難しいですよね。この問題については、もう少し本ブログで話題にしたいと思います。

本日から筑波大学学園祭「雙峰祭(そうほうさい)」が始まりました。特別展会場にもかすかに,楽器の音が響いています。附属図書館内では,正面入口向かって左側の集会室で,図書館情報メディア研究科宇陀・松村研究室・附属図書館共同実施「近未来書籍空間」を開催中です。
 明日,同じく集会室で特別講演会を開催します。未来の読書空間の中で,古から伝わる書物についてのお話を聞いてみませんか?

特別講演会「日本人のよんだ漢籍」
10月9日(日)13:30-15:30
筑波大学中央図書館2階集会室
講師 谷口孝介(筑波大学大学院人文社会科学研究科教授)
※申込は不要です。当日会場にお越しください。
 講演の後には,講師の谷口先生によるギャラリートークも予定されています。ご来場をお待ちしています。

ブログの更新に間が空いてしまいました。今日は、附属図書館ボランティアのみなさんを対象に、谷口先生によるギャラリートークが開催されました。参加者はボランティア11人+職員6名。予定を15分オーバーして詳しく説明していただきました。

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展示室が人でいっぱいに。

 お話の中で、印象に残ったことをいくつか。

○そもそも「漢籍」とは?
中国の書物で、普通は仏教の教典を除いたものです。儒教の中心的テキスト「経」、歴「史」、儒教以外の思想書「子」、文学書「集」の四つに分類されます。

○マニアックな一冊
図録【7】『孝経』は福山藩主・阿部正精(まさきよ)所蔵の原書をコピーして出版したものですが、送りがなや訓点を表すために黒赤二色刷にしているのみならず、文字の欠けや虫食いまで再現されています!ちなみに阿部正精の息子はペリーと日米和親条約を締結した老中・阿部正弘。また跋(後書き)は正精の名前になっていますが,実は森鴎外の史伝で知られる伊沢蘭軒が書いたものです。

○書き込みたくなる印刷
図録【15】『白氏文集』は古活字版と呼ばれる、木活字で印刷された書物です。古活字版の特徴は、行間がゆったりとしていること。そこについつい、書き込みたくなるのは古今を問わないようで、今回展示している一冊のようにきれいなものは少ないそうです。

○どこかにいってしまった本
中国で「小説」とは”つまらないもの、読み捨てにされたもの”でした。そのため,『遊仙窟』は中国では名前のみ伝わる書物になってしまいました。いっぽう、日本では図録【23】『遊仙窟鈔』のように研究対象とされ注釈本も出回り、参考【6】のように明治時代の中国の外交官が日本に残っていることに驚くことになりました。

 図録を読んでも難しい言葉がたくさんでてきますが、お話を聞いて興味が湧いてきました。谷口先生、ありがとうございました!
 なお,この記事や学園祭用に作った「観覧の栞」を書く際には,JapanKnowledge(ジャパンナレッジ プラス)が大活躍でした。学内の方は無料で使えますから,図録や解説でわからない言葉が出てきたらぜひ,活用してください。図書館トップページの左側,データベースの事典・辞書のJapanKnowledge+NRKがリンクです。