第2章 釈奠器

12. 雲龍蒔絵尊案

山内豊雍献納 安永3(1774)年
東京国立博物館所蔵 Image: TNM Image Archives

雲龍蒔絵尊案

 尊案とは、尊と呼ばれる酒を入れる器を置く机である。釈奠においては、尊案の中央には、雷神蒔絵尊を置き、その左右に水牛を象った犠尊と象を模した象尊が並べられた。
 総体に黒漆、天板の中央に龍をあらわす。空間に雲を配し、鰭と脚部に雷文を施す。土佐藩9代目の山内豊雍(1750-1789)による献納品。安永3(1774)年12月に献納された。天板裏に金蒔絵銘があり、来歴がわかる。東京高等師範学校旧蔵品。資料13とともに明治37(1904)年6月16日、東京高等師範学校校長の嘉納治五郎によって帝室博物館に寄贈された。

13. 海藻蒔絵俎

蜂須賀治昭献納 安永4(1775)年
東京国立博物館所蔵 Image: TNM Image Archives

海藻蒔絵俎

 俎とは、鯉鮒、豕、小鹿、大鹿などの贄を入れる台のこと。長方形の被蓋造の箱に四脚を付けている。表には詰梨地を施し、内側は朱漆塗。縁は金沃懸地。箱の蓋、身の側面、鰭と脚部に海藻を散らす。本作は、徳島藩11代目の蜂須賀治昭(1758-1814)による献納品。安永4(1775)年2月に献納された。台裏に金蒔絵銘がある。

14. 闕里誌 巻1

(明)孔貞叢撰 大坂 : 河内屋喜兵衛 宝永6(1709)年刊 12巻6冊 【所蔵情報】

闕里誌 孔子の肖像画 闕里誌 器物の図絵

 孔子の子孫と言う孔貞叢が孔子廟の制度・祭祀・沿革について集成した書物の和刻本。闕里(山東省曲阜県)は、孔子が弟子の教育にあたり、没した地であり、孔子廟が所在する。巻1には「図像誌」が収められ、孔子の肖像画のほか、「礼器図」、すなわち孔子祭(釈奠)に使用されていた神聖な器物の図絵が見える。そのなかには、江戸時代に湯島聖堂で執行された釈奠において祀られていた礼器と同様の形態をもつものも見受けられる。 (ネ359-5)


15. 聖堂之画図

菱川師宣あるいは菱川派の作 元禄4(1691)年刊 1枚 【所蔵情報(電子資料あり)】

聖堂之画図

 元禄4(1691)年に移転したばかりの湯島聖堂が描かれている。落款は見られないが、人物描写などは菱川師宣あるいは菱川派の特徴を示す。聖堂が大きく配され、その周囲には行き交う人びと、仰高門内の東舎で行われる公開講釈の様子などが描かれる。また、画面上部には孔子や十哲、聖堂内を飾る扁額に描かれた先賢先儒の図像が並び、画面中央右には内陣の配置が示される。画面中央左には徳川光圀によると言われている一文が枠内に挿入される。この文には、日本の儒教の伝来、その長い低迷への嘆きと、聖堂建立と儒学の復興に対する称賛、出版にいたる経緯が記述されている。 (121.53-H76)