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展示資料


展示資料をご紹介いたします。
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第1部  |  第2部

第2部 ◆ 歴史家の仕事(メチエ)

24.Michel Sauvageau, Coûtumes de Bretagne, Rennes: J. Vatar, 1742.

所蔵情報

  『ブルターニュ地方の慣法』(レンヌ、1742)。ブルターニュ地方の慣習法は中世末期の14世紀に初めて成文化され、1480年には公刊された。その後、何度も印刷に付されたが、18世紀に入ってブルターニュ高等法院弁護士ミシェル・ソヴァジョー(生歿年不詳)が最初の版のブルターニュ慣習法を新たに印刷に付させたのが本書である。出版地がブルターニュ地方の主要都市レンヌであるところも興味ぶかい。二宮の代表的論文のひとつ「印紙税一揆」覚え書」の対象である1675年に起こったブルターニュの大叛乱は、その背景にある税制や土地制度についての知識がなければ十分に理解することができないが、これらは慣習法と深く関わるものであった。


25.Finances (Encyclopédie méthodique, ou par ordre de matières, par une société de gens de lett s, de savans et d'artistes), 3 vols., Paris: Chez Panckoucke; Liege: Chez Plomteux, 1784, 1785, 1787.

所蔵情報

  『財政学事典』(『体系百科全書』所収、パリ、リエージュ、1784、1785、1787)。『体系百科全書』は、ディドロ編纂の有名な『百科全書』を増補改訂して完全なものとする意図で企てられた。『百科全書』がアルファベット順に編集されているのに対し、こちらは学問分野別に編集されているのが特徴である。「体系」百科全書と名乗るゆえんである。刊行の中心となったのは、出版業者シャルル=ジョゼフ・パンクーク(1736-1798)で、1782年に刊行が開始され、その後五十年の歳月を費やして二百八巻が出版されたが、未完に終わった。本学の二宮文庫には、このうち『法学事典』十巻、『財政学事典』三巻が収められている。二宮は論文「「印紙税一揆」覚え書」において、『財政学事典』の諸項目を参照している。


26.Charles-Joseph Mayer, Des États généraux, et autres assemblées nationales, tome 1-18, The Hague; Paris: Chez Buisson, 1788-1789.

所蔵情報

  『全国三部会ならびに他の国民的会議体について』(ハーグ;パリ、1788-1789)。1788年8月、国王ルイ16世は、翌年5月に全国三部会を召集することを約束した。財政難を解決するために、諸身分から協力をとりつけようとしてやむなく行ったものだった。しかし、全国三部会は1614年を最後に百五十年以上ものあいだ開かれていなかったので、その代議員の構成方法・選出方法、開催後の討議形式をどのようにすべきかについて、議論が巻きおこった。そうした世論を背景として、過去に開催された全国三部会や名士会議について、資料を集め説明を加えているのが本書である。シャルル=ジョゼフ・マイエ(1751-1825?)著。


27.Détails authentiques, relatifs à la tenue des Etat-Généraux; en 1614, au commencement de la majorité de Louis XIII, London; Paris: Chez Knapen & fils, 1788.

所蔵情報

  『1614年の全国三部会開催に関する誤りのない詳細』(ロンドン;パリ、1788)。1788年8月に国王政府が翌年の全国三部会召集を約束すると、その開催形式がどのようなものであるべきかが問題となった。実際に1789年5月に開催されると、第三身分の代表たちが身分別投票ではないかたちでの投票を求めたのをきっかけとして、国民議会が成立することになることからも分かるように、 これは重要な問題だった。それを検討する際に、人々は過去の三部会についての知識を得ようとしたが、とりわけ強い関心が集まったのは、もっとも近い1614年のそれであった。


28.Mathieu-François Pidansat de Mairobert et Barthélemy François Joseph Mouffle d'Angerville, Journal historique de la révolution opérée dans la constitution de la monarchie françoise, par M. de Maupeou, chancelier de France, 7 vols., London, 1776.

所蔵情報

  『大法官モプーによる改革についての編年史』(ロンドン、1776)。アンシアン・レジーム末期の18世紀後半になると、高等法院が世論を背景に王権との対決の姿勢を強めるようになった。これに対して、大法官の職にあったモプーは高等法 院の権限を大幅に縮小する改革を行った。この改革についての賛否は別れ、高等 法院は抵抗を続けた。改革に関わるそうした一連の出来事の説明と資料を年代順 に編んだものが本書である。編者は、いずれも作家兼ジャーナリストのピダンザ・ ド・メロベール(1727-1779)とムフル・ダンジェヴィル(1729?-1794?)で、モプーには批判的である。


29.Almanach royal, année commune M. DCC. XXXIX, Paris:Chez la veuve d'Houry & Debure, 1789.

所蔵情報

  『王国年鑑――1789年版』(パリ、1789)。『王国年鑑』には王家、親王家、高位聖職者、軍人、主要な役所を構成する人名などが掲載され、毎年発行された。職業上の必要からこうした人名についての情報を必要とする者は多かったので、少なからぬ発行部数を誇った。本書はフランス革命勃発の年に出版されたもの。この年鑑は、出版業者ローラン・ドゥリ(?-1725)によって1683年から発行され始めた。当初は別のタイトルがつけられていたが、ルイ14世が1699年にこれを献上させ、1700年から『王国年鑑』(アルマナ・ロワイヤル)の名称で発行されるようになった。


30.Jacques Necker, De la Revolution françoise, 2 vols., 1796.

所蔵情報

  ネッケル(1732-1804)は、フランス革命前夜、財務長官として国家の財政赤字を埋めるべく、課税方式の改革などに取り組む。しかし、免税特権階級の強い反対に遭う。さらにマリー・アントワネット一派の圧力を受け、1789年7月11日に解職。三日後のパリ民衆によるバスティーユ襲撃の一因であった。その後、復職するも翌年には辞職、帰郷し、自身の財政改革の弁明とフランス革命の批判を主眼とする書物を執筆。そのひとつが大著『フランス革命論』(出版地不詳、1796)である。


  

31.Charles Loyseav, Cinq livres dv droict des offices, avec le livre des seignevries, et celvy des ordres, Paris: Chez la Veuve Abel l'Angelier, 1613.

所蔵情報

  『官職論ならびに権力論、身分論』(パリ、1613)。著者のシャルル・ロワゾー(1564-1627)は、17世紀フランスを代表する法学者であり、法の実務家。サンス上座裁判所判事、ロングヴィル公妃所領の代官、パリの弁護士組合長を務めた。彼の著作は広く読まれ、生前に二つの版、歿後に五つの版の著作集が刊行された。本書は、生前の二つの版のひとつ。「官職論」(1610)、「権力論」(1608)、「身分論」(1610)などを収める。


  

32.Clavde Ioly, Les oevvres de maistre Charles Loyseav,advocat en parlement, Paris: Chez la Veuve de Gervais Alliot & Gilles Alliot, 1666.

所蔵情報

  『高等法院弁護士シャルル・ロワゾー著作集』(パリ、1666)。ロワゾー(1564-1627)の歿後にクロード・ジョリ(1607-1700)の編集により刊行された著作集のうちのひとつ。ロワゾーが著作を発表したのは、フランスで長く続いた宗教戦争がようやく終息した時期だった。国王の主権を強調する彼の議論は、アンリ4世の下で秩序の再建につとめるフランス王権に正統性の根拠を与えるものだった。


  

33.Antoine Favvelet-dv-Toc, Histoire des secretaires d'estat, contenant l'origine, le progrès, et l'etablissement de levrs charges, Paris: Chez Charles de Sercy, 1668.

所蔵情報

  アントワーヌ・フォーヴレ・ドゥ・ト(生歿年不詳)による『国務卿職の歴史――その起源・発展・確立』(パリ、1668)。国務卿職は、宮内卿、外務卿、陸軍卿、海事卿の四人の行政執行部門の長より成り、大法官、財務総監の職とならぶ重職である。本書はそうした国務卿職とそれを担った人物の家系を顕彰する意味をもったと考えられる。それぞれの家系の紋章も添えられている。


34.Jacques Savary, Le parfait negociant, Paris: Chez les Freres Estienne, t. I, 1757; t. II, 1753.

所蔵情報

  『完全な商人』は、著者サヴァリ(1622-1690)によるサヴァリ法典(1673年制定)の解説書。財務総監コルベール(1619-1683)の命によるこの法典は、商業帳簿および財産目録に関する規定を含んでいることから、会計史上、劃期的意義を有する。つまり、すべての商人に決算書の作成を義務付けたのだ。本書は、この法典の解説のみならず、商業実務の解説も含んでいるため好評を博し、出版後は増刷されただけでなく、各国語に翻訳された。二宮が所蔵していたのは、1675年刊行の初版ではなく、18世紀半ばのパリでの再刊本。


35.Pierre Neron et Estienne Girard, Les edicts et ordonnances des tres-chrestiens roys, François I. Henry II. François II. Charles IX. Henry III. Henry IV. Lovys XIII. et Lovys XIV, Paris: Chez Theodore Girard, 1666.

所蔵情報

  『いともキリスト教的なる国王フランソワ1世、アンリ2世……の王令集』(パリ、1666)。中世のヨーロッパでは、人々は国家が定めた同一の法の下に暮らしていたわけではなかった。地域的な慣習法、都市法また職業団体の法が大きな役割を果たしていた。ところが絶対王政期に入ると、王権の伸長にともなって、国王のつくる法すなわち王令が重要性を増してくる。本書は、代表的な王令集のひとつで、ルイ14世親政初期の時代までの王令を収録する。宗教戦争に終止符を打ったことで有名なナントの王令なども収録されている。編者のピエール・ネロン(生歿年不詳)、エチエンヌ・ジラール(生歿年不詳)はともにパリ高等法院弁護士を務めた。


36.Theodore Godefroy et Denys Godefroy, Le ceremonial françois, 2 vols., Paris: Chez Sebastien & Gabriel Cramoisy, 1649.

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  『フランス儀典書』(パリ、1649)。16世紀半ば以降、王権の伸長とともに宮廷がその存在を大きくすると、儀礼についての関心が高まり、複数の儀典書が編まれることになった。本書はその代表的なもので、いずれも法学者で王室修史官であるテオドール(1580-1649)及びドニ・ゴドフロワ(1615-1681)父子の手になる。1619年にテオドールが本書の原型となる儀典書を刊行していて、本書はドニが新たな史料を加えて刊行したもの。成聖式、入市式、婚礼、出生祝賀、三部会、名士会、親裁座、修道行列、テ・デウムが扱われている。


  

37.『二宮宏之著作集』全五巻 二宮宏之著 岩波書店 2011.

所蔵情報

  二宮の歿後、生前に深い学問的交流をもった歴史家たち、福井憲彦、林田伸一、工藤光一が編集委員となって出版された。フランス語による論攷の邦訳、単行本未収録の論攷、小論や書評など、二宮が書いた様々な文章が集成され、かつ、主題別に編成されている。「社会史」「身体性と心性」「ソシアビリテ(社会的結合)」「歴史認識」など、現代歴史学を理解するうえで欠かすことのできない方法論と概念についても、玲瓏な筆致で味わい深い考察が展開されている。


38.Pons-Augustin Alletz, Cérémonial du sacre des rois de France, Paris: Chez G. Desprez, 1775.

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  『フランス国王成聖式の手引き』(パリ、1775)。国王が歿して新しい国王が即位すると、新国王はランス大聖堂で大司教による塗油を中心とする成聖式と呼ばれる一連の儀式を執り行うのが、フランスの伝統であり、これによって国王は聖性を身に帯びるとされた。ルイ15世が1774年5月に歿すると、挙行される予定の新国王ルイ16世の成聖式に対する一般の関心が高まった。そうした関心に応えて売り出されたのが、本書である。重厚なゴドフロワの儀典書とは異なり携帯サイズで、序文には「観衆として成聖式に立ち会う人々にとって便利で有益でありましょう」とある。ポンス = オーギュスタン・アレツ(1703-1785)著。


39.Nicolas de La Mare, Traité de la police, t. I et II,Amsterdam: Aux dépens de la Compagnie, 1729; Continuation du Traité de la police, Paris: Jean-François Hérissant, 1738.

  『ポリス提要』(第1、2巻は1729年出版のアムステルダム版、「続編」は1738年の版)。コルベールの特命をうけたパリのシャトレ裁判所警視、ニコラ・ドラマール(1639-1723)が、パリ高等法院の文書を用いて大都市の秩序維持に必要な古今の法や規則を四十年近くの歳月をかけてまとめ、解説した。はじめて近代ポリスの礎石を築いた大著。この時期のポリスとは、現在の警察という意味より広く、都市の秩序を維持するための行政全般をさす。第1巻と2巻は1705年から1719年に初刷が出版された。二宮が所蔵していたのは、1729年に増補されたアムステルダム版。道路行政を扱う「続編」は、ドラマールの歿後に協力者ル・クレ・ド・ブリレによって出版された。通常併せて四分冊だが、二宮旧蔵のものは三分冊である。特別出展(二宮宏之蔵、筑波大学附属図書館寄贈予定)。


40-1.Du Chesne, Code de la police, ou analyse des reglemens de police, divisé en douze titres, Paris: Prault, 1757.

所蔵情報

  ドュ・シェーヌ著『ポリス法典あるいはポリス規則概要』(パリ、初版、1757(右);増補第三版、1761(右下))。地方でポリスの実務に携わる人びと用にドラマールの『ポリス提要』を圧縮、編纂したハンドブック。当初ドラマールは一二の領域を扱う構想を持ち膨大な史料(現在のフランス国立図書館手稿部のドラマール文書)を集めていたが、実際に出版にこぎ着けたのは半分の領域についてのみであった。他方、ドュ・シェーヌはドラマールの構想通りに一二の領域を扱っている点でも興味ぶかい。前半は、簡潔な説明、後半は関連する重要王令などが収録されており、アンシアン・レジームの人びとの日常にどのような権力関係がはりめぐらされていたかを教えてくれる。著者ドュ・シェーヌは、シャンパーニュ地方の一都市の警察代官であった。


40-2.Du Chesne, Code de la police, ou analyse des réglemens de police, divisé en douze titres, Troisiéme edition revue, corigée, augmentée & mise en deux parties, Paris: Prault, 1761.

所蔵情報

  

41.Edme de La Poix de Freminville, Dictionnaire ou traité de la police génerale des villes, bourgs, paroisses et seigneuries de la campagne, Paris: Gissey, 1758.

所蔵情報

  エドム・ド・ラポワ・ド・フレマンヴィル著『地方の都市・町・教区、領主領の包括的ポリス事典あるいは提要』(パリ、1758)。ドラマールの『ポリス提要』が主に大都市パリのポリスを扱った四巻の大型本であるのに対し、地方都市や教区でポリス実務に携わる読者の便のために、四つ折り版一冊にまとめられた手引き書である。『ポリス提要』出版後の法や規則を収録し、内容もアルファベット順に簡潔にまとめられている。当時のポリスの管轄領域の広さに応じて、内容は宗教、司法、公共の安全と清掃、技術工芸など多岐にわたる。著者フレマンヴィルは、ラ・パリス侯爵領の代官であった。


42.Code municipal, ou analyse des reglemens concernant les officiers municipaux, Paris: Prault, 1761.

所蔵情報

  『都市法典、あるいは都市役人が関与する規則概要』(パリ、1761)。都市役人の任務遂行のために必要な法や規則の歴史をたどり、項目ごとにまとめた手引き書。17世紀末から王権は、それまで各都市が自ら選出してきた都市役人職の売却と廃止を繰り返す。1733年に新たに都市役職を売却し、新たな購入者が任務に就いたことが本書出版の背景であったと考えられる。徴税管区ごとに入市税の税率一覧が付されており、きわめて実用的である。著者の名前はないが、長年、市参事会のメンバーとしての経験を新参者に伝えるために執筆したと緒言にある。


  

43.François-Vincent Toussaint, Les moeurs, 1755.

所蔵情報

  フランソワ = ヴァンサン・トゥサン著『習俗論』(1755)。匿名かつ出版地と出版者の未記載で出版されたが、パリ高等法院の弁護士トゥサン(1715-1772)を著者とする。本書の初版は1748年。冒涜的かつスキャンダラスな書と受け止められ、高等法院から発禁処分を受ける。著者トゥサンは、1761年にブリュッセルへの亡命を余儀なくされるのだが、その間も『百科全書』の多くの項目を執筆している。ベルリンで客死。立川孝一と渡部望による邦訳は、『習俗』(国書刊行会、2001)に所収。


44.François-Vincent Toussaint, Eclaircissement sur les moeurs, Amsterdam: Chez Marc-Michel Rey, 1762.

所蔵情報

  フランソワ = ヴァンサン・トゥサン著『習俗論に関する釈明』(アムステルダム、1762)。本書には著者の実名はないが、『習俗論』の著者による、との表記がある。前著『習俗論』が無神論的である、との批判に応えた書。


  

45.François-Alexandre Aubert de La Chesnaye Des Bois, Dictionnaire historique des moeurs, usages et coutumes des François, 3 vols., Paris: Chez Vincent, 1767.

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  フランソワ = アレクサンドル・オベール・ドラシェネ・デボワ著『フランス人の習俗・習慣・慣習に関する歴史事典』(全三巻、パリ、1767)。著者オベール・ドラシェネ(1699-1783)は元修道士の著述家。四十年以上にわたり博物学、軍事、貴族家門、食物など幅広い分野について驚異的な数の書物、事典を著す。本書は、祖先の習俗や制度などを歴史的に逸話を交えて解説しているが、豊富な歴史的知識をアルファベット順に事典形式でまとめた点に特徴がある。


46.Hiroyuki Ninomiya, ≪ Un cadre de vie rurale au XVIIe et au XVIIIe siècle: la seigneurie de Fleury-en-Bière ≫, in Paris et Ile-de-France, Mémoires, t. 18-19, 1970; t. 20, 1972.

所蔵情報

  パリ南方50キロのフルーリ = アン = ビエール領主領の社会経済史的研究(全二部)。フランス語で執筆されたこの論文は、領主関係資料、県文書館史料、公証人記録・教区簿冊を渉猟し、領主領と村の生活を明らかにした。非常に高い評価を受ける。邦訳は、「一七・一八世紀における農村生活の一実態――フルーリ = アン = ビエールの領主領」として岩波書店刊『二宮宏之著作集』第4巻(2011)に所収。


  

47.Louis-Alphonse Sevenet, Coutume du bailliage de Melun, Paris: Chez Gogué, 1777.

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  『ムラン国王裁判所管区の慣習法』(パリ、1777)。中世末以降、王権は各地の慣習法の成文化を国王裁判所管区ごとに行うよう命じた。また、時代が下るにつれて生じる社会状況との食い違いは、改訂によって補われることになった。そのようにして成文化されたものをムランの公証人やパリ高等法院弁護士を務めたスヴネ(生歿年不詳)が刊行したのが本書。フランス留学中に二宮が研究対象として選んだのは、パリ地域南端に位置するフルーリ = アン = ビエールという土地であったが、ここはムランの国王裁判所管区内にあった。


48.Arthur-Michel de Boislisle, Mémoire de la généralité de Paris, Paris: Impr. nationale, 1881 (Collection de documents inédits sur l'histoire de France).

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  歴史家ボアリール(1835-1908)による『パリ管区地方長官報告書』(パリ、1881)。絶対王政の地方行政の軸となった国王直轄官僚である地方長官による任地についての報告書を収めた史料集。二宮がフランス留学中に研究対象とした村はこの管区内にあった。19世紀は、史料にもとづいた事実確定を重視する学問としての歴史研究がヨーロッパで形成され発展する時期で、そうした歴史学の基礎となる史料の編纂、刊行も盛んに行われた。当時公教育大臣だったギゾー(1787-1848)の肝煎りで1835年に刊行が始まった「フランス史未公刊史料集成」シリーズの一巻。


49.『マルク・ブロックを読む』二宮宏之著 岩波書店 2005.

所蔵情報

  マルク・ブロック(1886-1944)は、卓越したヨーロッパ中世史家。彼はまた、リュシアン・フェーヴル(1878-1956)とともに1920年代末に雑誌『アナール』を創刊して「社会史」の旗を掲げ、歴史学という学問のあり方に大きな変革をもたらし、その影響は、現代日本の歴史学にも間接的に及んでいる。そして、彼は、ナチス・ドイツ占領下において、非合法のレジスタンス運動に加わり、逮捕され銃殺されるという悲劇的な死をとげたことから、日本でも終戦直後から知識人の間でよく知られていた人物でもある。本書は、1998年に行われた岩波市民セミナーでの講義をもとに書き下ろされた。



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