ご挨拶


 

附属図書館長ご挨拶


 附属図書館では、これまで学内組織の協力を得つつ、本学が所蔵する貴重資料などを広く公開する展示事業を行ってきました。今回の特別展は、人文社会系の津崎良典准教授(フランス哲学)のご指導のもとに、附属図書館と人文社会科学研究科との共催により、「歴史家 二宮宏之の書棚」と題して開催するものです。

 本学の附属図書館には、約八〇の文庫があります。そのなかで最新かつ最大のものが、歴史家・二宮宏之氏の旧蔵書、二宮文庫に他なりません。二宮氏は、長らく東京外国語大学で教鞭をとられ、専門領域であるフランス絶対王政期の国制史や思想史に加え、フランス革命史や社会史について珠玉の論攷を世に問うてこられました。その過程で役立てられた洋書約九〇〇〇冊から二宮文庫は成り立っています。関連領域の主要二次文献を網羅しているのみならず、一六世紀から一八世紀にかけてヨーロッパ各国で刊行された王令・法令集などの貴重な一次資料が数多く含まれています。附属図書館では二宮家での配置をほぼそのまま踏襲しており、二宮史学の全容を俯瞰することができます。

 二宮文庫の受入調整役は、本学の立川孝一名誉教授(フランス史学)が在職中の2008年に引き受けられ、津崎先生に引き継がれました。当初附属図書館では、植松貞夫旧図書館長が相談を受けましたが、中央図書館耐震改修工事がありすぐにお引き受けすることは出来ませんでした。本格的な受入作業は、2012 年、中山伸一前図書館長の時代に開始されました。その後、膨大な冊数におよぶ旧蔵書の受入には長い年月を要しましたが、二宮氏の歿後一〇周年という記念すべき年に全ての受入作業が終了しました。

 本特別展の実現は、多くの関係者のご尽力の賜物であります。とりわけ『二宮宏之著作集』の刊行元である岩波書店からは後援を受けることができました。二宮氏の歿後、著作集の編集にあたられた岩波書店編集部の杉田守康氏には、岩波書店が所有する関連貴重資料を貸与いただきました。深く御礼を申し上げます。

 本特別展を通じて多くの方に、我が国の人文科学と社会科学の発展に必ずや貢献するであろう二宮文庫の意義をご理解いただければ、附属図書館長としてこれに優る歓びはありません。

     
2016年秋
附属図書館長 西川 博昭
 

人文社会科学研究科長ご挨拶


 戦後日本の西洋史学を牽引した二宮宏之氏は、フランス絶対王政期の国制史、社会史、そして思想史を専門としました。2012年、その旧蔵洋書の大半が筑波大学附属図書館に寄贈されました。

 本特別展ではそれらのなかから、二宮氏が研究の過程で実際に繙かれた稀覯書を中心にご覧いただきます。とりわけロワゾー『官職論ならびに権力論、身分論』やゴドフロワ父子『フランス儀典書』といった一七世紀に刊行された書物、ドラマール『ポリス提要』やドゥリ『王国年鑑--1789 年版』といった一八世紀に刊行された書物は、フランス史学における最重要資料であります。是非ご堪能ください。

 寄贈書のなかには、我が国の他の大学図書館には所蔵されていない書物が数多く含まれています。私どもは、この貴重な二宮文庫の恩恵を受け、本学における研究と教育がいっそう充実したものになると喜んでおります。また、すでに学外の研究者からも貸出依頼が寄せられております。本文庫は、我が国の人文科学ならびに社会科学の深化に大きく寄与することでしょう。

 このような喜びと楽しみを私たちに分け与えてくださった寄贈者の二宮素子夫人に、深い謝意を表します。二宮夫人は、単に寄贈を申し出られたのみならず、附属図書館の受入作業が煩雑にならぬよう細心の配慮を最大限に示してくださいました。そこには、それなしには人文科学も社会科学も決して立ち行かない「書物」というものに対する深い愛が感じられます。

 展示品の選定には、谷川多佳子名誉教授(フランス哲学)をはじめ学内の有識者のみならず、二宮宏之氏と生前に深い学問的交流をもたれた歴史家たち、宮崎揚弘名誉教授(慶應義塾大学)、林田伸一教授(成城大学)、高澤紀恵教授(国際基督教大学)に貴重なご助言を賜りました。さらに林田先生と高澤先生は、本図録のために解説文を特別に寄稿してくださいました。お二人とも二宮氏から学問的訓練を受けられたわけですが、師匠の旧蔵書に解説文を執筆するという行為には、一人の歴史家の仕事が次世代に確実に受け継がれる様を見る思いがいたします。その二宮氏によって高く掲げられたフランス史学の炬火が、この特別展を機に、更に若い世代に力強く引き継がれることを期待いたします。

2016年秋
人文社会科学研究科長 山田 博志
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