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展示資料


展示資料をご紹介いたします。
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第1部  |  第2部

第1部 ◆ 歴史家の肖像(ポルトレ)

1. Antoine François Prévost, Manuel lexique, ou Dictionnaire portatif des mots françois dont la signification n'est pas familiere a tout le monde, 2vols., Paris: Chez Didot,1755.

所蔵情報(全文あり)
   

 『言葉の手引き――その意味が人口に膾炙していないフランス語のための携帯用辞典』(パリ、1755)。 長編小説『マノン・レスコー』の作者として知られるアントワーヌ・フランソワ・プレヴォ(1697-1763)が作成したという点でユニークかつ貴重な仏仏辞書。 プレヴォ師は、最初は自分用に言葉のノートを作成していたが、当時イギリスで出版されていたダイチェの英語辞書 New General English Dictionary を高く評価し、これを仏語に縮約翻案した。 仏文学者として著名な渡辺一夫の旧蔵書を、二宮が譲り受けた。


  

2. Abbé Duclos, Dictionnaire bibliographique, historique et critique des livres rares, précieux, singuliers, curieux, estimés et recherchés, 3vols., Paris: Chez Cailleau et fils, 1790.

所蔵情報(全文あり)

 『稀覯本書誌事典』(パリ、1790)。印刷本のみならず写本も含み、言語もフランス語、ギリシャ語、ラテン語、イタリア語、スペイン語、英語をカバーしている。 それらの取引価格の記載がある。「すべての著述家、書誌家に、また、知識を持って書籍商を営もうと望む者に有用かつ必要な書物」と標題にあり、当時の利用のされ方も窺える。 1790年にデュクロ師(生歿年不詳)により三巻本で出版されたが、のち1802年に四巻本に増補され、書誌学者として著名なブリュネ(1780-1867)により出版されている。渡辺一夫旧蔵書。


  

3. Marc Bloch, Les caractères originaux de l'histoire rurale française, Paris: Armand Colin, 1952.

所蔵情報(全文あり)

 マルク・ブロックの代表作。初版1932年刊行の本書は、発展段階と地域類型を問題関心とし、遡行的・比較的方法を用いた画期的農村史。 すぐ売り切れ、日本には少部数しか入っていない。敗戦後の日本では、農村問題は学問的にも焦眉の課題であったから、二宮は個人で日本銀行にこの本(1952年再版)の輸入を申請した。戦後七年を経てもドル不足により個別の審査が必要だった。 邦訳は、『フランス農村史の基本性格』(河野健二・飯沼二郎訳、創文社、1959)として出版。

  

4. Paul Raveau, L'agriculture et les classes paysannes, Paris: Librairie des sciences politiques et sociales, 1926.

所蔵情報(全文あり)

 『16 世紀オー・ポワトゥー地方における農業と農民階級』(パリ、1926)。ヨーロッパでは、19世紀末から物価史の研究が始まっていた。 1873年に始まったヨーロッパおよび北アメリカにおける大不況という現実を反映したものだった。この大不況においては、とくに農産物価格の長期低落が見られたから、物価史の研究も農業に関わるデータを多く蒐集して行われた。 そうした研究の中でもすぐれたもののひとつが、このポール・ラヴォー(1845?-1930)のモノグラフィーである。 二宮は16世紀の土地問題を卒論の研究テーマにした。日本にはまだ西洋史に関する史料や研究書が少なかった1950年代において、この書物から二宮が得たものは多かった。未邦訳。


  

5. Jean Meuvret, Études d'histoire économique, Paris: Armand Colin, 1971.

 フランス17・18世紀の経済史ほとんどすべての領域で、その問題はムーヴレ(1901-1971)に聞け、といわれるほど、深くかつ該博な知識を有していた著者は、その成果を活字にすることにきわめて禁欲的で、『経済史論集』とでも訳せるこの書は珠玉の論文集である。 急逝する十日前に刊行を見た。展示本は、二宮への著者献呈本。特別出展(二宮宏之蔵)。未邦訳。


  

6. Albert Soboul, Les campagnes Montpelliéraines à la fin de l'Ancien Régime, La Roche-Sur-Yon: Imprimerie Henri Potier, 1958.

所蔵情報(全文あり)

 『アンシアン・レジーム末期におけるモンペリエの村々』(ラ・ロッシュ = シュル = ヨン、1958)。 本書は、ソブール(1914-1982)の学位請求論文『パリのサンキュロット』とともに提出された副論文で、師ルフェーヴルの農民革命研究にならい、モンペリエのリセ(高校)教師時代に行った周辺の農村地帯の研究である。 これに対して主論文は、革命下の都市パリの民衆を扱って注目を浴びた。本書は、留学生時代の二宮への著者献呈本。未邦訳。


  

7. Albert Soboul, La civilisation et la Révolution française II, Paris: Arthaud, 1982.

所蔵情報(全文あり)

 ソブールには、革命期の民衆運動のみならず幅広い視点からの研究論文も多いが、一般読者むけの大著も少なくない。 本書はその一例で、アンシアン・レジーム期を扱った『文明とフランス革命』第1 巻の十年後にパリで公刊された第2巻である。展示本は、二宮への遺族献呈本。未邦訳。


  

8. Albert Soboul, Portraits de révolutionnaires, Paris: Messidor/Éditions sociales, 1986.

所蔵情報(全文あり)

 『革命家たちの肖像』(パリ、1986)。本書は、ソブールが1957年から1982年にかけて講演や全集の序文など折にふれ書いた長短の文章から、弟子のマゾリックが編んだもので、バブーフ(1760-1797)やサン = ジュスト(1767-1794)など誰でも知っている名前から、無名の人物まで、フランス革命を生きた十四人の肖像である。 展示本は、二宮への著者献呈本。未邦訳。


  

9-1. Pierre Goubert, L'Ancien Régime, t. 1, Paris: Armand Colin, 1969.

所蔵情報(全文あり)

9-2. Pierre Goubert et Daniel Roche, Les Français et l'Ancien Régime, 2 vols., Paris: Armand Colin, 1984.

所蔵情報(全文あり)

 グーベール(1915-2012)は、教区簿冊を初めて体系的に用いた学位論文『1600年から1730年までのボーヴェとボーヴェジ』でボーヴェ地方の人口動態を明らかにして、一躍脚光を浴びた。 右の『アンシアン・レジーム』(パリ、1969)は、16世紀から18世紀のフランス社会を「アンシアン・レジーム(旧体制)」と呼び、独特の視線で描いた学生用のもので、批判評も多かったが、グーベール自身もそれを意識してか、二宮への献辞に、「このフランスの辛い食べ物をあなたに」と書いている。 1975年来日。東京大学では「18世紀における放浪・乞食・犯罪についての諸研究」と題する講演を行った。 左の『フランス人とアンシアン・レジーム』全二巻(パリ、1984)は、グーベールの指導を受けたダニエル・ロッシュ(1935-)による研究成果を前者に追加したもの。 前者にはなかった図像資料も多く取り入れられている。二宮はロッシュの仕事を評価し、日本への招聘を何度か企画するが、様々な事情から叶わなかった。いずれも著者献呈本、未邦訳。


  

10. Robert Mandrou, Introduction à la France moderne (1500-1640): essai de psychologie historique, Paris: Albin Michel, 1974.

 第二次世界大戦後花開いたフランス史学を担ったひとりマンドルー(1921-1984)の仕事の核心は、心性史であろう。『近世フランス序論――歴史的心理学の試み』と題して1961年にパリで刊行されたこの書は、副題からも分かるように、まず《人間の尺度》として「からだ」と「こころ」を扱い、ついで、「社会環境」「活動」と続くきわめて個性的なものである。 二宮は本書から大きな刺激をうけた。1972年、フランス政府派遣文化使節として日本に招請したのは、この新しい歴史学と日本の歴史学との交流を二宮が企画したことによる。 本書はポケット版。二宮への献呈本である。特別出展(二宮宏之蔵)。未邦訳。


  

11. Robert Mandrou, De la culture populaire aux XVIIe et XVIIIe siècles: la Bibliothèque bleue de Troyes, Paris: Stock, 1964.

所蔵情報(全文あり)

 本書は、青本とよばれた民衆向け廉価本の印刷地トロワに遺された史料群を分析して、民衆の心性を描こうとした画期的著作。 その後さまざまな後発研究と賛否の議論がわきおこった。 マンドルーが教鞭をとったパリ大学ナンテール校は、書物の社会史の一拠点となる。 翻訳は、『民衆本の世界―― 17・18世紀フランスの民衆文化』(二宮宏之・長谷川輝夫訳、人文書院、1988)として出版。


  

12. 『歴史・文化・表象――アナール派と歴史人類学』 ジャック・ルゴフほか著 二宮宏之編訳 岩波書店 1992.

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 本書は、アナール派の代表的歴史家、そして二宮と生前に深い学問的交流をもったルゴフやビュルギエールらの来日講演と対談記録からなる。 副題にある「アナール」とはフランス語で「年報」を意味する。幾度か誌名変更があったが今日まで刊行が続くフランスの学術誌『社会経済史年報』を主要舞台に集った歴史家集団をアナール派と呼ぶ。 前世紀以降、歴史学に大きな影響を与えている彼らの特徴は、たとえばネーデルラント継承戦争(1667-1667)といった政治的事件に傾注する事件史や、ナポレオン(1769-1821)といった著名人を主軸とする偉人史とは異なり、民衆の生活文化や社会全体の「集合記憶」に注目することだ。 そこで導入されたのが、経済学、統計学、人類学、言語学などの異分野の研究成果である。 副題に「歴史人類学」という術語が用いられているゆえんである。


  

13. Jacques Le Goff, Pour un autre Moyen Âge: temps, travail et culture en Occident, Paris: Gallimard, 1977.

所蔵情報(全文あり)

 著者のルゴフ(1924-2014)は、フランス中世史研究の雄で、1972年に高等研究院第六部門(のち社会科学高等研究院と改組)の第三代の長となる。 歴史学に民族学の成果と方法の導入を主張した1976年の東京講演は、ルゴフ・ショックと言われてヨーロッパ史のみか日本史研究者の間にも受容と批判が渦巻いた。 翌年刊行された本論文集『もうひとつの中世のために――西洋における時間、労働、そして文化』(加納修訳、白水社、2006)は、時間・説話・夢・森と荒野など広大な主題を扱う。 展示本は、二宮への著者献呈本。


  

14. Jacques Le Goff, La naissance du purgatoire, Paris : Gallimard, 1981.

所蔵情報(全文あり)

 聖書に煉獄の記事はない。これは13世紀ごろ広まった概念で、それまで教会に疎まれていた商人層の力の増大など社会変化に伴う現象と言える。 1984年に刊行されたルゴフのこの大著は非常に大きな反響を呼んだ。 展示本は、二宮への著者献呈本。邦訳は、『煉獄の誕生』(渡辺香根夫・内田洋訳、法政大学出版局、1988)として出版。


  

15. Jacques Le Goff, La civilisation de l'Occident médiéval, Paris: Flammarion, 1982.

 著者ルゴフが四十歳のときに出版した代表作『中世西欧文明』(桐村泰次訳、論創社、2007)の新版(パリ、1982)。 中世ヨーロッパの鳥瞰図にして「虫観図」――これは二宮の造語である――として世界的ベストセラーとなり、二十ヶ国語以上に翻訳された。 第1部では、ローマ時代末期から後期中世までを通史的に描出し、第2部では10世紀から13世紀を中心に主題的に《中世西欧文明》の特徴を剔抉する。 具体的には、中世における時間と空間の関係、教皇と皇帝の対立、技術と自然の関係、都市と農村の相違など。 展示本は、二宮への著者献呈本。特別出展(二宮宏之蔵)。


  

16. Jacques Le Goff, L'imaginaire médiéval, Paris: Gallimard, 1985.

所蔵情報(全文あり)

 ルゴフの『中世の想像界』は、その『もうひとつの中世のために』の続編に当たる。 著者によれば、或る時代の全体像を理解するためには、経済、社会、そして法律を通して見えてくる《現実》の世界のみならず、その時代の人々が何を感じ、想い、夢見ていたのか、つまり《想像》の世界も考察すべきだという。 なぜなら、経済的・社会的・法律的側面は、あくまでも時代の《骨》であり、人々の想像の産物こそが《肉》だから。 展示本は、二宮への著者献呈本。その一部の邦訳は、『中世の夢』(池上俊一訳、名古屋大学出版会、1992)に所収。


  

17. Maurice Agulhon, Pénitents et francs-maçons de l'ancienne Provence, Paris: Fayard, 1984.

所蔵情報(全文あり)

 マンタリテ(心性)とともに、1970年代から、ソシアビリテ(人と人との結びあうかたち)はフランス歴史学の主要な分析概念となったが、その端緒は、アギュロン(1926-2014)の1966年の論文『南仏のソシアビリテ』である。 特有の濃密な社会関係を表現するものとして採られたこの言葉は、広く論議され、それらの批判を取り入れて再構成されたのが、本書『アンシアン・レジーム期のプロヴァンス地方における悔悛苦行兄弟団とフリーメイソン』(パリ、1984)である。 本書は著者献呈本。未邦訳。


  

18. Pierre Deyon, Le mercantilisme, Paris: Flammarion, 1969.

所蔵情報(全文あり)

 デイヨン(1927-2002)は、フランスの代表的経済史家のひとりで、17世紀アミアンの研究で学位を得た。本書は、重商主義について論じた解説で著者の献呈本。 標題もそのまま『重商主義』(パリ、1969)である。彼は、日本では、1980年に社会経済史学会で行った報告「「原基的」工業化モデルの意義と限界」(産業革命以前の地域的農村工業論。二宮宏之訳ならびに解説)などで知られる。未邦訳。


  

19. Jean-Louis Flandrin et Massimo Montanari, éd., Histoire de l'alimentation, Paris: Fayard, 1996.

所蔵情報(全文あり)

 フランドラン(1931-2001)は、高等研究院第六部門の文明史家デュプロンのもとで長く研鑽を積み、1975年、のちに『農民の愛と性』と題して邦訳の出た書物を始め、歴史的考察の域外とされていた近世フランスの性のありようを論じて学界を驚かせた。 1980年代半ばからは、《食》の史的研究を牽引するリーダーとして、本書をはじめ、大部の書物を刊行した。 邦訳は、『食の歴史』全三巻(宮原信・北代美和子監訳、2006)として藤原書店より刊行。展示本は、二宮への著者献呈本。


  

20. Jean-Louis Flandrin et Jane Cobbi, éd., Tables d'hier, tables d'ailleurs, Paris: Odile Jacob, 1999.

所蔵情報(全文あり)

 前著『食の歴史』の言わば続編に当たる本書は、標題の『昨日の食卓、余所の食卓』(パリ、1999)からも分かるように、その研究対象を広義におけるヨーロッパだけでなく、アジア・アフリカ・南アメリカにまで広げて、飲食の歴史を辿る。 編者フランドランらの視座は、食糧供給、食糧危機、さらには食糧飢饉に関して統計資料から見えてくる数量的事柄のみならず、ヨーロッパ圏外の人々はこれまで具体的に何時、何処で何をどのように飲食し、飲食にどのような感情を抱いていたのか、そしてヨーロッパ圏の過去における飲食習慣とどのように相違するのか、という社会史的・心性史的・比較文化史的な問いにも向かう。 展示本は、二宮への著者献呈本。未邦訳。


  

21. 『宗教戦争』ジョルジュ・リヴェ著 二宮宏之・関根素子訳 白水社 1968.

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 文庫クセジュの一冊として刊行された本書は、16世紀後半フランス、カトリック対プロテスタントの抗争内乱を描いた時代史の基本文献。著者のリヴェ(1916-2002)は、二宮の恩師ムーヴレと親交があった。 二宮は学生時代から、渡辺一夫のルネサンス研究、大塚史学双方に強く惹かれており、留学当初この時代の研究を志したが、史料と留学の時間的制約から断念。 この訳書は、その初志と結びつく。 原著は極めて簡潔で、理解を助けるため、訳者がさまざまな附録や詳細な系図を付した。 原著は、1962年にLes guerres de religionとしてパリで出版。


  

22. 『革命的群衆』ジョルジュ・ルフェーヴル著 二宮宏之訳 岩波書店 2007.

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 著者ルフェーヴル(1874-1959)は、1920年代から始まる現代歴史学の中心的存在のひとりで、革命史研究の泰斗。 本書は、民衆運動史の古典。民衆運動の自発性・自立性、集合的記憶の果たす役割など、現在の主要論題がすでに指摘されている。 二宮は、「印紙税一揆」に関する分析に新しい視角を得た。原著は、1932年 Foules révolutionnaires としてパリで出版。


  

23. 『革命前夜の地下出版』ロバート・ダーントン著 関根素子・二宮宏之訳 岩波書店 1994.

所蔵情報(全文あり)

 革命前夜には啓蒙思想のショックはすでに吸収されていた。ヴォルテールの後継者たちは上流社会に包摂され、言うべき事柄をもたなかった。 王権を揺さぶっていたのは、どん底の世界に住む三文文士の書き散らす発禁文書だったのではないか。 著者ダーントン(1939-)による本書はフランスでも第一級の研究として名高い。 原著は、1979年に The Litterary Underground of the Old Regimeとして出版。



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