筑波大学附属図書館報「つくばね」
第18回国立大学図書館協会シンポジウム(東地区)が筑波大学で開催されました
富田 健市
 平成17年12月8日(木)〜9日(金)の2日間に渡り,(図・挨拶をする植松館長)筑波大学情報メディアユニオンにおいて,「機関リポジトリ:学術コミュニケーション機能回復の新たな方向を探る」をテーマとして,第18回国立大学図書館協会シンポジウム(東地区)が開催されました。東地区を中心に27大学から39名の図書館員が参加し,学術情報流通の新たな担い手として注目を集めている「機関リポジトリ」を巡って,講演・報告・討議が行われました。なお,西地区は11月16日(水)〜17日(木)の両日,同じテーマで岡山大学を会場に開催されました。
 1日目は,植松附属図書館長からの機関リポジトリへの期待を交えた歓迎の挨拶の後,当日のテーマを「機関リポジトリとその周辺を理解する」として進められました。まず,「機関リポジトリの背景について」というテーマで,(図・1日目全体討議の様子)西原副館長からは研究者として図書館に期待する機能を中心に国内における機関リポジトリを巡る状況について,常磐大学の栗山人間科学部助教授からはシリアルズクライシスを背景とする発生の経緯を含めた海外の最新動向についての講演があり,さらに国立情報学研究所の尾城コンテンツ課長から「国立情報学研究所の学術機関リポジトリへの取組み」と題して,同研究所の活動の現況と今後の展望について報告がありました。その後,全体討議が行われましたが,各所属機関の現状を背景として,理念・理想の学習の段階から現実の業務として実施する段階へ移行するにあたっての疑問点・問題点が多く出され,実務面も含めた議論が展開されました。
 2日目は,「機関リポジトリを構築する」をテーマとし,すでに機関リポジトリに取組んでいる,千葉大学,北海道大学,東京大学,筑波大学の4大学から事例報告がありました。(図・挨拶をする植松館長)すでに本格的に運用を開始しているところから計画段階のところまで,取組状況の異なる各大学から実例に即して問題点や解決策が提示されました。その後,再び全体討議が持たれましたが,ここではやはり実践面について話題が集中しました。主な課題としては,大学全体の合意の形成,研究者の理解と参加,運営担当人員の確保などが挙げられ,先行機関での取組みなどについて意見の応酬が活発に行われました。また,大規模なアンケートなど単独の大学では困難な事業や,職員数が十分でない大学への支援活動など,国立大学図書館協会への要望も寄せられました。
 2日間を通して,各参加者が「機関リポジトリ」について理解を深めるとともに,具体的に構築していくための第一歩を踏み出す契機となったところも多かったのではないかと思います。
(とみた・けんいち 情報サービス課長)
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