筑波大学附属図書館報「つくばね」
平成17年度大学図書館職員長期研修に参加して
大澤 類里佐
 7月4日から15日まで,筑波大学主催,文部科学省共催の平成17年度大学図書館職員長期研修に参加させていただきましたので,簡単な報告をさせていただきます。

 大学図書館職員長期研修は「全国の国立大学図書館等の中堅職員に対し,学術情報に関する最新の知識を教授するとともに,図書館経営・情報サービスの在り方について再教育を行い,職員の資質と能力の向上を図ることにより,大学図書館等の情報提供サービス体制を充実させること」を目的として,毎年開催されています。今年度は全国の国公私立大学から集まった図書館職員39名が参加し,東京・代々木のオリンピック記念青少年総合センターを会場に講義や実習に汗を流しました。かつては3週間と"長期"研修でしたが,昨年から2週間になり,その分,内容は濃く,受講生は忙しくなって,終ってみればあっというまのようでした。

 研修は,講義・企画立案演習・国立国会図書館見学から構成されていました。
 講義は,
    ・図書館経営
    ・学術情報流通
    ・情報サービス
の3本柱からなり,ほぼ半分を図書館経営論が占めていました。法人化後の大学の中での図書館の位置づけ,今後の運営戦略などについて諸先生の熱い講義を受けることができました。
 企画立案演習は,予算獲得の訓練もかねており,
1. 全体での共同討議で各大学の抱える問題や解決策を発表し,
2. 4班に分かれて,学術情報の収集・発信の企画を立て,
3. プレゼンテーション演習で技術を学び,
4. 最終日に実際に企画提案を行う
実践的なものでした。もちろん,割り当てられた時間ではとうてい足りず,我が班は会場近くのおでん屋さんにノートパソコンを持ち込んでシナリオ作成,昼食をとりながら練り直しと,まるで学生時代のゼミ合宿のようなありさまでした。そして、かなり練り上げたと自負?して「医学文献ナショナル・アーカイブ協同構築プロジェクト」という企画で発表に臨んだのですが,「予算のとれる」という条件は難しく,「内容が難し過ぎる」「何をして欲しいのか不明確」という厳しい講評をいただきました。しかし,発表までの過程で一つの目標に向かって色々な背景を持つ,しかし図書館という同じ場で働く他大学職員と突っ込んだ話し合いができたことは大きな収穫でした。みなさん優秀で,しかも問題意識を持っており,非常に刺激を受けました。
 また,国会図書館見学では普段入ることのできない書庫内や資料修復の様子を見学することができたいへん興味ぶかいものでした。

 さて,研修全体を通して話題になったのは,"学術機関リポジトリ"でした。学術機関リポジトリとは非常に単純化してしまえば大学の構成員による論文等の研究成果を,各大学が収集・管理し,メタデータ化することで外部から容易に検索・入手できるようにする仕組みのことです。学術機関リポジトリには即効性はありません。学術雑誌の高騰に即座に対処できるものでもありません。ですが,大学は何をしているか?という説明責任を果たし,研究成果を社会に還元する有力な鍵となります。図書館が大学情報発信の中心になることで容易なアクセスが可能になりますし,研究者にとっては文献の管理や個人Webページの管理といった繁雑な作業からの解放に繋がることが期待されます。講義の中の「集める時はローカルに,探す時はグローバルに」という言葉が印象に残っています。筑波大学は先駆的な電子図書館の構築を行っており,プロジェクトや科学研究費の報告書や博士論文を収集・発信してきました。しかし,ややもすると図書館にとって収集しやすいもの,発信しやすいものにかたよっていたかもしれません。また,発信とはいえ「待ち」の姿勢ではなかったかと考えさせられました。学術機関リポジトリは「打って出る図書館」に変わる好機なのだと思います。学内構成員のみなさんの理解とご協力が必要ですし,積極的にご協力いただけるような存在感のある図書館に変わっていかなければならないと感じました。

 最後になりましたが,忙しい中を快く送り出してくださった附属図書館のみなさんに深く感謝します。ありがとうございました。

(注)
大学図書館職員長期研修の趣旨,歴史,筑波大学が開催している経緯等については「つくばね」29巻2号をごらんください。

今年度の日程,講義要網はhttp://www.tulips.tsukuba.ac.jp/pub/choken/で公開されています。

(おおさわ・るりさ 情報サービス課相互利用係長)
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