筑波大学附属図書館報「つくばね」
≪シリーズ 国立大学法人元年  2≫  法人化に伴う規則の改正について
富田健市
 前号では,2004年4月1日を境とする,国立大学法人の発足への取組み及び直後の状況についての紹介があった。しかし,残念ながら全ての準備を法人化前に行えたわけではなく,諸般の事情によって法人化後に整備せざるをえなかったものもある。ここでは,その中から利用者の皆様に直接関係がある利用規則類について,どのような理由からどのように変更される予定なのかについて紹介することとしたい。
 国立大学法人筑波大学附属図書館利用規程は,2004年4月1日から適用されているが,内容的には旧規則をほぼ踏襲したものであったため,1年かけて見直しを行い2005年4月からは改正されたものを適用する予定である。主な改正点は2点である。
<卒業生等への貸出の拡大>
 現行利用規程では,希望が多かったにもかかわらず,本学の卒業生をはじめとする学外の一般の方には通常は貸出が出来ないこととなっている。しかし,生涯学習の普及,地域貢献への社会的要求の高まりなどもあいまって,貸出を行うこととした。もちろん,本学図書館は大学図書館として本学の研究・教育・学習の支援を行うことが使命であり,学内の構成員の利用を妨げることがあってはならない。従来は,学外者であっても筑波研究学園都市の研究者等に対しては,5冊3週間以内の条件で貸出を行ってきた。貸出できる学外者の範囲を拡大するにあたって,現段階でどの程度の利用があるのかを判断するのが困難なため,全ての学外者への貸出条件を,本学の学群生の貸出条件が10冊3週間以内であるのに対し,当初は3冊3週間以内とする予定である。実際に運用を行う中で,利用者の皆様の声を聞きながら,必要があれば貸出条件の見直しを進めていきたい。

<教員特別貸出の見直し>
 現行規程では,本学の教員は教員特別貸出として,当該学系等の経費で購入した図書館資料(貴重図書,準貴重図書,雑誌及び新聞を除く),旧東京教育大学蔵書,重複図書館資料で館長が指定するものについて,100冊まで1年間,更新制限無しという条件が認められていた。これは,本図書館の理念が集中管理であることから,教員の手元に置く図書の冊数を制限しようとすることが背景にあって制定された制度である。しかし,100冊という制限は研究を行う上で少なすぎるという意見が多くの教員から寄せられている。さらには,手元に置いておける冊数が限定されていることが,教員の図書購入意欲を減退させることとなり,蔵書の充実への障害となっているとの指摘もあった。また別の要素として,法人化に伴い教員の所属単位が従来の学系から専攻へと変更になったために,「当該学系等の経費で購入した図書館資料」という定義をそのまま適用できなくなったということもあり,教員特別貸出について見直しを行った。
 従来の教員特別貸出の意義としては,自分の研究に必要な図書を校費で購入した場合に自分の手元に置いておく,自分で購入したもの以外でも当面の研究に必要なものを一定期間手元に置いておくという二つの側面があったと考えられる。このため,それぞれの側面に対応した二つの特別貸出を設定した。
 第一は,自分の研究に必要な図書を購入した場合に自分の手元に置いておくという要望に応えたもので,「大学教員特別貸出」という名称である。これは,当該大学教員及びグループの経費で新規に購入した図書館資料(貴重図書,準貴重図書,雑誌及び新聞を除く。),旧東京教育大学蔵書及び重複図書館資料で附属図書館長が指定するものについては,冊数は無制限で1年間,更新制限無しという条件である。来年度の新規購入分からは自身あるいは所属グループのものであれば,無制限に手元に置くことが可能である。なお,現在教員特別貸出で貸出中のものについては,移行措置としてこの枠での継続を可能とする予定であるが,その場合でも一度返却された図書は,たとえ自身で購入したものであっても対象とならないので,注意が必要である。
 第二は,自身で購入して一度返却した図書等,図書館経費以外で購入したもので当面の研究に必要な図書を一定期間手元に置いておくという要望に応えるもので,「大学教員研究用長期貸出」という名称である。これは,図書館経費以外で購入された図書館資料(貴重図書,準貴重図書,雑誌及び新聞を除く。),旧東京教育大学蔵書及び重複図書館資料で附属図書館長が指定するものについては,冊数100冊まで1年間,更新無しという条件である。集中管理の基本理念を残すことと,従来の100冊枠の対象範囲への配慮から,このような条件とした。
 今後は,この二つの貸出を活用して研究を進めると同時に,図書館の蔵書の充実にも一層のご協力をいただきたいと考えている。

<開館日等変更への柔軟な対応>
 なお,利用規程の内容についての主な改正点は以上の2点であるが,その他に今回は規程の構成についても見直しを行い,開館日・開館時間・貸出条件等,随時見直しを行う必要のある項目については迅速に対応できるような枠組みに整備した。広く,利用者の皆様の要望をお聞きして,より充実した図書館サービスを提供していきたい。
(とみた・けんいち 情報サービス課長)
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