宇川 彰
筑波大学電子図書館が開館のはこびとなった。京都大学電子図書館と並んで、国立大学図書館中での嚆矢を切ることとなる。昨今のインターネットの広まりを考えれば、時宜を得た開館であることは言うまでもないが、本学図書館での長年に亘る電子化への取り組み、そして平成3年以来の二期に亘る電子図書館整備計画が実を結んだ。ところで、電子図書館と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。自分の卓上のPCからインターネットを通じて入館する。物理学者としての自分を忘れ、興味の赴くままの探索者となるならば、貴重資料のコーナーにまず目が行くことだろう。British Libraryには、Magna Cartaの原文画像と対訳があった。BeoWulfも見つけた。京都大学電子図書館では、源氏物語の中院文庫版。「いづれの御時にか」に始まる懐かしい文章を見ることができる。画像データベース化され、書誌解題とリンクされた貴重資料は、電子図書館のメインメニューの一つだろう。
暫く貴重書で時間をつぶしたら、研究者としての自分を取り戻し、学術雑誌のコーナーへ足を向ける。つい数年前までは、図書館に出向いて、製本された分厚く重い雑誌を書架から降ろし、目当ての論文をコピーするのに結構な時間を割いたものである。ここ数年、物理学の分野では雑誌のon-line化が急激に進んでいる。電子図書館では、出版元のサーバを訪れて、最新号の目次を見ることも出来れば、画面で論文に目を通して両面プリンターに送れば、研究室に居ながら雑誌そっくりのコピーも手に入る。主要な雑誌はon-line版のサテライトが電子図書館に置かれる日も遠くないかもしれない。
学術論文出版について、物理・数学分野ではもっと先鋭な事態が実現している。米国Los Alamos国立研究所にe-print archiveが1991年以来運営され、最近では各国にそのサテライトが設置されている。このarchiveに、研究者は電子メールを使って自由に論文を登録することができる。論文には登録番号が付され、翌日から世界中の研究者に公開されるし、検索機能を使って過去の論文の検索・ダウンロードも自由である。電子文書館の名にふさわしい、インターネットによる学術情報伝達の革命である。国境を越えた学術情報の集積点としての電子図書館の今後を考える上で、示唆に富む存在ではないだろうか。
コンピュータとインターネットの発達が革命的なものであることは誰もが同意するだろう。その中で、電子図書館の実現できる機能は、まだまだ模索段階にあるように思われる。筑波大学電子図書館でのinnovativeな取り組みを期待したい。
(うかわ・あきら 物理学系教授)