5. 附属図書館の将来構想の検討 - 2020年度(令和2年度)研究開発室成果報告

解説

 第5プロジェクトは、「附属図書館の将来構想の検討」です。 プロジェクトの担当室員は、人文社会系および図書館情報メディア系の先生方と学術情報部長です。これに、図書館職員で組織する「筑波大学附属図書館将来構想検討タスクフォース」と「学習支援推進ワーキンググループ」が協力をする体制でプロジェクトに取り組んでいます。 以下の記述は、タスクフォースの活動が中心になります。

「筑波大学附属図書館将来構想検討タスクフォース」は、令和元年5月に附属図書館運営委員会の下に設置されました。附属図書館の将来構想といっても、喫緊の課題もありますし、中期的な課題、さらには長期的な取り組みが必要となる課題もあります。このタスクフォースでは、第4期中期目標・中期計画期間である2022~2027年(令和4~9年)を対象期間として構想を考えることとしています。

 令和元年度は、将来構想を考えるための関連資料や参考資料などを共有し、ブレインストーミング的なミーティングを行いました。また、タスクフォースメンバー以外の図書館職員も参加することのできる意見交換会を開くなどして、検討項目の整理を進めました。

 令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大が、大学の活動全般に対して大きな影響を与えましたが、図書館に関してもサービスや活動を考える契機となりました。ラーニングコモンズの整備など、学習や教育を支援する場としての図書館の取り組みが近年関心の高かったことですが、あらためて考える必要に迫られています。また、電子化の必要性がデジタル・トランスフォーメーション(DX)という言葉とともに喧伝されており、取り組みの遅れを指摘する声もあります。さらに、電子資料の利用に関連しては、著作権法改正の動きもあり、教育活動における著作物の利用に関する改正法が令和2年4月28日から施行されました。同法の図書館関係の権利制限規定の見直しも、文化庁の審議会で検討が進められており、図書館サービスにも影響があると推測されます。

 タスクフォースの活動としては、7月に設置したワーキンググループが、蔵書構築や資料保存について検討を行い、「筑波大学附属図書館蔵書構築方針(案)」を取りまとめつつあるところです。

 タスクフォース自体の活動は11月に入ってからとなりました。 前年度中に整理した項目を基に、さらなる整理やそれぞれの項目に関連する具体的な取り組み等について意見交換を行い、文章化と推敲を重ね、現在、次のように将来構想(案)を構成しています。

  1. 附属図書館の使命と目標
  2. 将来構想2022-2027の目標
  3. 目標達成のために取り組む活動

 「1.」は平成24年2月の附属図書館運営委員会で承認されたもので、それを踏まえたうえで2022~2027年の目標を設定し、さらに、その目標を達成するための具体的な取り組みを示すような構成です。

 ポスターでは「4.筑波大学附属図書館将来構想2022-2027(項目整理)(案)」として、2022~2027の目標の要点を5つ掲げ、それぞれに関連する取り組みの一部を次のとおり紹介しています。

(1) 研究力強化ならびに教育の質の向上に資する学術資料の整備
蔵書整備の方針策定、資料保存・管理・配置の適正化、狭隘化対策、全学的な電子ジャーナル等の整備、電子資料の充実、IIIF対応デジタルアーカイブ構築、日本語の歴史的典籍国際共同研究ネットワークへの参画

(2) 教育や学習を効果的に支援する利用環境の整備及びサービスの提供
次世代学習スペース整備(バリアフリー化、アクセシビリティ向上、グローバル対応等)、バーチャルな利用環境整備、リモートアクセスサービス拡充、ICT環境整備

(3) オープンアクセス及びオープンサイエンスの推進
つくばリポジトリのコンテンツ充実、研究データ管理・公開・保存等の検討、関連部署との連携協力、研究開発室の活動成果活用

(4) 利用者のニーズに対応した学術情報リテラシー支援教育の展開
利用者ニーズ(学群生・大学院生、留学生、社会人学生等)に応じた教育支援、教育プログラムとの連携、著作権法改正等への対応

(5) 情報発信、社会貢献、職員の能力向上
図書館活動の可視化、ブランディング戦略、つくば市域図書館連携協議会の活動推進、展示会の開催、高大連携サービスの継続実施、研修機会の活用等による能力向上

 なお、これらは現時点での整理ですので、今後、変更される場合があります。

 令和3年度は第3期中期目標・中期計画期間の最終年度で、令和4年度からは第4期中期目標・中期計画期間になります。 すでに第4期の目標等の設定に関しては、文部科学省から「中期目標大綱(素案)」が示されており、各法人ではそれを基にした目標の検討が進められていると思います。各法人が中期目標と中期計画の素案を国立大学法人評価委員会の提出するのは、今年7月末目途となっていますので、そのスケジュールにも留意しながら、第4期の活動に向けて、あるいは年度計画を考えるためにも、引き続き附属図書館の将来構想の検討を進めたいと思います。

 

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