V. 「原理論」の体系化

 戦後、東京大学社会科学研究所に教授として招かれた宇野は、『價値論』、『恐慌論』、『經濟原論』等を続々と出版した。宇野は従来の学説にとらわれることなく、『資本論』を批判的に摂取して彼独自の原理論体系を確立していった。
 宇野理論体系は、価値主体を入れる器としての「流通論」、労働価値説をもとに資本家と労働者との階級関係を規定する「生産論」、資本家間の分配関係を規定する「分配論」から構成されている。そして、この「原理論」を基礎に、「段階論」、「現状分析」が位置付けられている。
 マルクス主義の既成の権威に屈することなく自らの諸説を展開する宇野の研究業績は、若き研究者や学者を魅了した。戦後、彼らは宇野の論旨を継承、発展させ、日本におけるマルクス経済学研究の水準を飛躍的に上昇させたのである。
 やがて宇野の提唱する学説は、宇野個人の学説にとどまらず「宇野学派」という呼称を生み出すまでになり、日本のマルクス経済学界に確固たる地位を築くのである。

*戦前、宇野が親しくしていた学者、文化人から贈られた書籍

37. 高橋里美 『全體の立場』 岩波書店,1932,初版第1刷   所蔵情報
38. 武市健人 『ヘーゲル論理學の體系』 岩波書店,1950,初版第1刷   所蔵情報
39. 森戸辰男 『全勞働収益權史論』 弘文堂,1969,新装版第1刷   所蔵情報
40. 大内兵衛 『經濟學』(全書版) 岩波書店,1951,初版第1刷   所蔵情報
41. マルクス著 向坂逸郎訳 『資本論』 第一巻 岩波書店,1967,初版第1刷   所蔵情報

*「原理論」関連

42. 宇野弘蔵 『價値論』 (社會主義經濟學 III) 河出書房,1947,初版   所蔵情報
43. ノート「價値論」   所蔵情報
44. 宇野弘蔵 『經濟原論』 上巻 岩波書店,1958,第15刷   所蔵情報 
45. 宇野弘蔵 『経済学演習講座 経済原論』 青林書店,1955,第1版 
出版社からの「新訂経済原論:執筆者分担一覧」が挟んである
46. 宇野弘蔵 『経済原論』 岩波書店,1952,第1刷 
47. ノート「経済原論 II」 
48. 宇野弘蔵 『経済原論』 岩波書店,1977,合本改版第1刷   所蔵情報
49. 宇野弘蔵 『経済原論』(全書版) 岩波書店,1964,第1刷   所蔵情報
50. ヘーゲル著 松村一人訳 『小論理学』 北隆館,1947   所蔵情報
目次に『経済原論』の構想が書き込んである
51. 宇野弘蔵 『恐慌論』 岩波書店,1953,第1刷   所蔵情報
52. ノート「恐慌論 I」   所蔵情報
53. 手稿「恐慌論」 (公開講義(54.)の準備原稿)   所蔵情報
54. 講演記録「恐慌論」 (記録者不明)
(昭和30年10月8日 法政大学公開講義 「マルクス主義講座第三回」)   所蔵情報
55. ノート「経済学方法論」   所蔵情報
56. 宇野弘蔵 『経済学方法論』 東京大学出版会,1962,初版第1刷   所蔵情報
57. 研究会記録「出席者及び質問」 (記録者不明)   所蔵情報 (注記記載:「宇野文庫-10」(ゼミにおける?)「出席者及び質問」と題した原稿用紙あり(5枚))
58. 宇野弘蔵 『資本論の経済学』(新書版) 岩波書店,1969,第1刷 
59. 準備ノート「資本論の経済学」   所蔵情報
60. 宇野弘蔵 『資本論の経済学』(新書版) 岩波書店,1971,第4刷   所蔵情報

*書き込みの多数ある『資本論』(文庫版)各冊

61. マルクス 『資本論 第一巻第一分冊』 岩波書店 1958 第18刷改版   所蔵情報
62. マルクス 『資本論 第一巻第五分冊』 岩波書店 1929 第1刷   所蔵情報
63. マルクス 『資本論 第二巻第一分冊』 岩波書店 1953 第7刷   所蔵情報
64. マルクス 『資本論 第二巻第二分冊』 岩波書店 1953 第4刷   所蔵情報
65. マルクス 『資本論 第二巻第三分冊』 岩波書店 1953 第4刷   所蔵情報
66. マルクス 『資本論 第二巻第三分冊』 岩波書店 1954 第3刷
67. マルクス 『資本論 第三巻第一分冊』 岩波書店 1953 第3刷   所蔵情報
68. マルクス 『資本論 第三巻第二分冊』 岩波書店 1952 第1刷   所蔵情報
69. マルクス 『資本論 第三巻第三分冊』 岩波書店 1953 第1刷   所蔵情報
70. マルクス 『資本論 第四巻第三分冊』 岩波書店 1954 第1刷

戻る(IV. 治安維持法による検挙)
次へ(VI. 「現状分析」の試み)
宇野文庫フロントページに戻る