家根(やね)じつくゐとて瓦(かはら)のすき
を雨(あめ)のまわらぬよふにねる
も左官(さくわん)の仕事(しごと)なり鬼瓦(おにかはら)も
好(この)みにて家号印(やごうのしるし)又は紋所(もんところ)
なぞ差別(さべつ)あり
十九
とゐといふて
木(き)にてくりたるも
あり大(たい)ていは大(あふ)き
なる竹(たけ)をふたつ割(わり)
にしてふしぶしをよく
けづりのきさきへはり
がねにてとめるしぜん
家根(やね)より落(おち)る雨水(あめみづ)を
うけるためなり
二十
渋(しぶ)ぬりは家(いへ)のそと
まわりを好(この)みに随(したが)ひ
生渋(きしぶ)又ははい墨(ずみ)を入(いれ)て
ぬるも雨(あめ)のしぶきか
かりても木のくさらぬ
ためなり
此外塗家土蔵造(このほかぬりやどそうつくり)など
品々其人(そのひと)の好(この)みあれども
此職方(しよくがた)にて出来(でき)るゆへ此篇
までにて家造りの一通りをしる也