令和6年度特別展ロゴマーク

ご挨拶

附属図書館長ご挨拶

 筑波大学附属図書館特別展へのご来場、心より歓迎申し上げます。
 筑波大学附属図書館では平成7年度の中央図書館新館竣工時に貴重書展示室が設置されて以降、学内各組織の協力を得つつ、本学開学以来所蔵する貴重な資料を広く公開する展示事業を行ってきました。今年で30年目を迎えます。
 貴重書展示室では、期間を設けて特別展や企画展を行うほか、年間を通じて「日本の出版文化」をテーマに、部分的な展示換えを行いながら常設展示をしておりました。
 昨年度は創基151年筑波大学開学50周年のタイミングで、この常設展示の刷新を図ることも踏まえ、古典籍へのアプローチという観点で令和5年度附属図書館企画展「古典籍のインターフェース」を開催しました。「本のかたち」、「本の構成」、「写した本・刷った本」、「本を分類する」という主題に対応した資料の特徴を解説する内容は、企画展終了後にも常設展示として引き継がれています。今日まで連綿と受け継がれた書物の成り立ちや、奥行きを理解できる常設展示は、授業や自習にもお使いいただける内容と自負しております。皆さま、ぜひお気軽にお立ち寄りください。
 今年度は芸術系、人文社会系と共催で、特別展「忠孝一本 -江戸時代のモラリティ-」 を開催します。
 「忠」とは君主に対する忠誠を、「孝」とは親に対する孝行を意味する儒教の考え方です。江戸時代には、これらは同義と見做され、君主に対する忠誠と親に対する孝行の双方を大切にすることが、社会全体の安定に役立っていました。しかし、第二次世界大戦後、伝統的な家制度が否定されるようになると、「忠」の考え方は薄れていきました。それに対して、「孝」の精神は時代とともに変化はしているものの、現在も息づいています。
 今回企画する展覧会は、昔の人間関係を振り返りながら、現代の社会をあらためて見つめ直す試みでもあります。前近代の「忠孝」を無条件に肯定するものではありませんが、そこには現代に失われた大切なものがあるかもしれません。古代中国を端緒とし、日本を含めた東アジアやヨーロッパに広がったこれらの概念を展示資料で解説します。
 この展覧会を通じて、今の人間関係を見直すきっかけになれば幸いです。


令和6年秋
附属図書館長
西尾チヅル

芸術系⻑ご挨拶

 このたび、附属図書館と芸術系、人文社会系の共催により、特別展「忠孝一本 - 江戸時代のモラリティ-」を開催いたします。本展覧会は、江戸時代の人々の生活や価値観を紹介し、その文化に息づいていた道徳観を再評価することを目指しております。
 江戸時代は日本の歴史の中でも安定期であり、その時代に培われた文化や社会システムは現代にも多大な影響を与えています。その一つが、当時の人々の生活に根付いていた道徳観です。道徳とは、単なる規範やルールではなく、他者との調和や共生を重んじる心の在り方を指します。展覧会では、江戸時代の庶民から武士まで、様々な階層の人々がそれぞれの立場で道徳を実践していた具体例を紹介します。
 現代社会では、江戸時代の道徳観の全てを肯定することはできません。しかし、私たちが学べることは多いのではないでしょうか。例えば、人間関係の在り方や、個人の責任と社会との調和など、現代の課題に対するヒントが得られるかもしれません。
 最後に、本特別展の開催にあたりご協力いただいた関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。また、ご来場の皆様がこの展示を通じて、江戸の道徳に触れ、新たな発見を得ていただければ幸いです。


令和6年秋
芸術系長
田中佐代子

⼈⽂社会系⻑ご挨拶

 このたび筑波大学附属図書館と芸術系、人文社会系共催で特別展「忠孝一本 ‒ 江戸時代のモラリティ-」を開催します。
 筑波大学の起源は明治5年、江戸幕府最高学府湯島聖堂内に設立された東京高等師範学校に遡り創基152年の歴史があります。中国に起こった儒教は、長きにわたり東アジア文化圏、さらには日本人の知的骨幹となり、ひいては理性の時代の欧米世界にも影響を与えました。本学の木全徳雄元教授と堀池信夫名誉教授のご研究がその事実を証明しています。
 本展では、儒学者の著作や忠孝を題材とした文献・挿画などを展示します。これを通じて江戸時代の人々が儒教をどのように生活に取り入れ、精神形成し、社会秩序を形成していったのかが理解できます。また、企画されている特別講演会では、研究者や専門家が儒教の現代的意義について講演し、展示内容について学術的な議論を展開します。
 AIやIT技術が注目される現代にあって、私たちは歴史の教訓に学びながら、未来へと歩みを進めることが大切ではないでしょうか。本展が皆様にとって江戸時代の人生観・世界観を深く理解し、現代社会の在り方を再考するきっかけとなることを期待しています。


令和6年秋
人文社会系長
臼山利信