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(20)資料紹介

「図書館・情報メディア双書」について

黒古 一夫

 「図書館情報学」にしろ,「情報メディア論」にしろ,他の学問領域,例えば文科系の哲学や文学,歴史学,政治学,経済学等,あるいは理科系の物理学,化学,天文学等と較べればすぐ分かるように,歴史の浅い「学問」である.コンピュータの発達に伴って進展した「情報学」「メディア論」はともかく,図書館が古代社会からずっと存在していたにもかかわらず,である.
 そのように,「歴史の浅い」学問である「図書館情報学」「情報メディア論」も,昨今著しい成果を挙げつつある.図書館の図書館学関係の棚の前に立ってみれば,そのことは一目瞭然である.おびただしい数の「図書館情報学」「情報メディア論」関係の書籍が並んでいる.双書・シリーズ類もたくさんある. そんな「図書館情報学」「情報メディア論」の現状に対して,開学20周年(短大時代やそれ以前の歴史を含めれば80年になろうとしている)を迎える本学に何かできないか,というのが「図書館・情報メディア双書J(勉誠出版,全15巻,以下続刊の可能性あり)刊行のきっかけであった.しかも,それは本学の歴史や現状を考慮して,今までの学問的成果を取り入れつつ,「入門者・初心者」にも分かりやすい書き方,内容にする,というものであった.企画は開学20周年・創基80周年記念事業が開始される1999年9月末の2年ほど前に立てられ,刊行に向けて準備が開始された.
 「双書」 の構成は,以下の通りになった.

第1巻 図書館史・総説(藤野幸雄)★
第2巻 世界の図書館(寺田光孝編)★
第3巻 ディジタル図書館(田畑孝一)★ 第4巻 電子出版-その現在と未来(石塚英弘) 第5巻 電子時代の著作権(山本順一)★
第6巻 情報検索の考え方(緑川信之)★
第7巻 人はどのように文字を読んでいるか(椎名 健)
第8巻 図書館資料の諸相(原 淳之編)
第9巻 これからの公共図書館(薬袋秀樹)
第10巻 建築から図書館をみる(植松貞夫)★
第11巻 インターネットと「情報」の行方(岩窪まり子)
第12巻 図書館を使う(遠藤卓郎・黒古一夫編)★
第13巻 メディア・センターとしての学校図書館(平久江祐司)
第14巻 インターネット上の文化資源(山本毅雄)
第15巻 図書館情報学の課題と展望(吉田政幸)
★印 既刊[010.8:To‐72]


上記のように,既刊7巻,未刊行8巻.これまで刊行されたものについては,概ね好評をもって迎えられている.残りの巻の刊行を心待ちにしているとの声も多く聞かれる.
 これは,「図書館情報」の名前を冠した大学の関係者が執筆した「図書館情報学」「情報メディア論」が卒業生および関係者を含む多くの人々に長い間待たれていた,ということなのかもしれない.版元は15巻で終わりではない,と言っている.進展する新しい学問の現状にあわせて,続刊・改訂版が次々と出れば,と考えている.
本学教授
Concerning the Library and Informational Media Series, by KAZUO KUROKO