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資料紹介

ディジタル図書館に関する資料

宇陀則彦

1999年2月、図書館情報大学は附属図書館を中心にディジタル図書館(ULIS-DL)を スタートさせた。ULIS-DLは一次資料中心の他のディジタル図書館とは異なり、 二次資料すなわちメタデータを中心にした世界でも類を見ない新しいタイプの ディジタル図書館であり、 図書館情報大学らしい性格を持ったディジタル図書館である。 (ULIS-DLについては図書館情報大学附属図書館図書館報 Vol.15, No.1, 1999に 簡単な紹介がある。) このULIS-DL発足を機に、教職員と学生がディジタル図書館に関わる機会はます ます増えるだろう。そこで、今回はディジタル図書館に関する資料を紹介する。

A. ディジタル図書館とは何か

[1] 長尾 真. 電子図書館 岩波科学ライブラリー15. 岩波書店 1994.

マルチメディアなどのコンピュータ技術と情報組織化などの図書館技術を 関連づけてディジタル図書館の将来像を描いている。同じ技術を使ってい ても、ディジタル図書館はWWWやデータベースとはここが違うのだという点 を明確に示した本である。

[2] 山本毅雄. 21世紀の本の読み方 岩波 高校生セミナー9. 岩波書店 1999.
[3] 山本毅雄. 電子図書館員の仕事とその道具. ディジタル図書館 No.1, p.29-37, 1994

[1]とは違った視点でディジタル図書館の将来像を示している。 [2]はディジタル図書館だけでなく、電子本やインターネットなど電子情報の 世界全般について論じている。

B. ディジタル図書館を包括的に解説した書籍

[4] Michael Lesk. Practical Digital Libraries. Morgan Kaufmann, 1997
[5] 谷口敏夫. 電子図書館の諸相. 白地社. 1998
[6] 杉本重雄. 第7章ディジタル図書館 情報機器論 新現代図書館学講座16. 東京書籍 1998

ディジタル図書館を包括的に解説した書籍は少ない。まとまってディジタル 図書館の実際について書かれた書籍と言えば、洋書では[4]がお薦めで、早々に 翻訳されるべき本である。日本では[5]がもっともよくまとまっている。[6]は ディジタル図書館周辺の技術も解説されており、ディジタル図書館とあわせて 理解できる。

C. ディジタル図書館の意義と諸問題

[7] 原田 勝. 未来の図書館. 松籟社. 1987
[8] 田屋裕之. 電子メディアと図書館. 勁草書房, 1989

[7]は80年代後半における図書館の未来像について論じた本。[8]は電子出版と電子 メディアの発展が図書館に与える影響について論じた本。どちらも、この時点で 既にディジタル図書館について論じていたという点は特筆に価する。

[9] Michael Lesk. ディジタル情報とディジタル図書館の将来的価値. 情報管理 Vol.38, No.12, p.1063-1079 1996
[10] 日本薬学図書館協議会「薬学図書館」編集委員会編. 電子図書館とマルチメディアネットワーク. 日本図書館協会, 1996
[11] 石川徹也編. 特集 電子図書館はどうなる. 人文学と情報処理 別冊1. 勉誠出版, 1999.

[9]は[4]の著者が日本で講演したときの話をまとめたもの。 [10]はドキュメントデリ バリー、 資料の電子化、著作権など関連する諸問題について個別に論じている。 [11]は出版、流通、美術館、博物館、利用者という専門的観点からディジタル図書館に ついて論じている。

D. 図書館サイドからの視点

[12] マイケル K. バックランド. 高山正也, 桂 啓壯訳. 図書館サービスの再構築. 勁草書房, 1994.
[13] ウィリアム F. バーゾール. 根本 彰, 山本順一, 二村 健, 平井歩実訳. 電子図書館の神話. 勁草書房, 1996.
[14] 根本 彰. 図書館研究への儀式的アプローチ − バーゾール 「電子図書館の神話」の意義 −. 図書館界, Vol.48, No.5, 1997

[12]は図書館サービスの観点からディジタル図書館を論じている。[13]は出版された 当時、ディジタル図書館を否定的立場から論じた本として話題になったが、実際は、 従来の図書館との立場を明確に論じたのであって、ディジタル図書館を否定したわけ ではない。この本はまずは訳者の一人が解説した[14]に目を通してからのほうが 理解しやすいだろう。

E. 出版サイドからの視点

[15] 季刊 本とコンピュータ No.1(1997年夏)-

電子出版を中心に、本とコンピュータに関わる広範な記事が載っている。 出版界から見たディジタル図書館像を知ることができる。

[16] 合庭 惇. デジタル知識社会の構図. 産業図書, 1999.

電子出版の話題を中心にディジタル図書館との関わりについて論じ、知識社会の新しい形態であるデジタル知識社会の展望を述べている。

F. 研究動向および事例報告

[17] 「電子図書館Ariadne」情報管理 Vol.38, No.3からNo.7 1995まで
[18] 杉本重雄. ディジタル図書館に関する最近の話題. 情報管理 Vol.39, No.7, p.473-482 1996
[19] 「特集 ディジタル図書館」. 情報処理 Vol.37, No.9, 1996
[20] 「特集 マルチメディア時代の図書館ー電子図書館ー」学術月報, Vol.50, No.3, 1997
[21] 「特集 電子出版・電子図書館」情報管理 Vol.42, No.1, 1999
[22] 「特集 電子図書館」情報の科学と技術 Vol.49, No.6, 1999
[23] 特集 Digital Libraries. Communications of the ACM. Vol.38, No.4, 1995
[24] 特集 Digital Libraries Global Scope, Unlimited Access. Communications of the ACM. Vol.41, No.4, 1998

1994年から1997年にかけては多くのディジタル図書館システムが実際に構築された 時期であり、ディジタル図書館が机上の空論でないことが証明された。1998年から 1999年にかけてディジタル図書館は第2ステージに進むことになる。

G. 学術雑誌および議事録

[25] ディジタル図書館 No.1, 1994 - (最新号No.14)

1994年から世界中で本格的にディジタル図書館プロジェクトが開始されたのに あわせて、本学でも同年8月からディジタル図書館ネットワークが形成され、 その活動の一環として年に3回、本学でディジタル図書館ワークショップが 開催されている。これはその論文集である。ここには国内外問わずディジタル 図書館に関する最新の話題が盛り込まれている。

[26] International Journal on Digital Libraries

Springer発行の学術雑誌。

[27] International Symposium on Digital Libraries(ISDL)

本学主催の国際シンポジウム。これまでISDL'95とISDL'97が開催されている。 アジア地域では最も大きな会議。今年の9月に本学20周年記念に合わせてISDL'99 が開催される。

[28] ACM Conference on Digital Libraries(DL)

1994年から毎年開催されているシンポジウム。ACM主催。最新の技術論文が載る レベルの高いシンポジウム。

[29] IEEE Forum on Research and Technology Advances in Digital Libraries(ADL)

これも毎年開かれているシンポジウム。その時点で最も重要な話題を中心に セッションを組む。特にパネルディスカッションはたいへんエキサイティング である。IEEE主催。

[30] Research and Advanced Technology for Digital Libraries, European Conference(ECDL)

1997年から毎年開催されているヨーロッパの会議。ヨーロッパの動向を知ること ができる。

H. メタデータ

[31] 「メタデータ」情報の科学と技術. Vol.49, No.1 1999
[32] 永田治樹. 第6章 目録とメタデータ 学術情報と図書館. 丸善, 1997.

メタデータについての解説。メタデータの研究動向を知るには[31]、 目録との関連でメタデータの意義についてより詳しく知るには[32]を読むとよい。

I. WWWページ

さて、ここまで紙の資料について説明してきたが、実は紙の資料よりWWW上の電子資料の ほうが遥かに多くの情報が得られる。ディジタル図書館はコンピュータネットワーク上に 存在するので、ディジタル図書館自身の情報も自然にネットワーク上に置かれる。 WWWのデータは本学の教職員、学生にとってはもはや紙よりアクセスしやすいはずなので、 あえて取り上げなかった。数も膨大なので、ここでは4つだけ紹介するにとどめる。

[33] D-LIB Magazine. http://www.dlib.org/
[34] Ariadne newsletter. http://www.ariadne.ac.uk/

ディジタル図書館に関するオンライン雑誌。

[35] Digital Libraries Initiative. http://www.dli2.nsf.gov/

ディジタル図書館に関して最も有名な大規模プロジェクトのホームページ。

[36] Dublin Core Metadata Initiative.http://purl.oclc.org/dc/

本学ディジタル図書館に関連の深いDublin Coreのホームページ。


本学・助手
Basic Materials in Digital Libraries. by Norihiko Uda