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資料紹介49

文献探索法に関する図書

大庭一郎

 我が国の初等・中等教育では、教師が教科書に基づいて授業を展開する知識伝達型の教育が中心を占めている。それに対して、大学教育では、講義の他に、演習、実験、ゼミナール等の時間が幅広く設けられており、学生自身が主体的に学ぶ問題解決型の学習が強く求められるようになる。このような問題解決型の学習を進めるには、大学図書館等を上手に活用し、自分が必要とする文献(ネットワーク情報資源も含む)を自由自在に入手・活用する力を身に付けることが重要である。

 本学では、図書館情報学に関する様々な科目の中で、図書館等の情報サービス機関について学習し、各種の文献の特性、組織化方法、探索法を学ぶことによって、図書館の利用法や文献探索法の知識を包括的に学ぶことが可能である。しかし、多くの大学では、このような知識を正規の科目の中で教えておらず、学生は文献探索の力を試行錯誤しながら身に付けているのが現状である。そこで、このような状況を改善するために、我が国では、1980年代後半から、一般的な文献探索法に関する図書が相次いで刊行されるようになった。本学の学生がこのような図書を読むことは、本学で学んだ文献探索法に関する知識を整理したり、これらの知識を一般の人にわかりやすく説明する方法を身に付ける上で重要である。

 文献探索法に関する図書の中で初心者向けにわかりやすくまとめられているものは、『学生・社会人のための図書館活用術』(藤田節子著、日外アソシエーツ、1993)[015:F-67]である。この図書では、図書館や図書館サービスの種類、目録の使い方、調べるための本(レファレンス・ブック)の使い方、データベースの利用法、等がわかりやすく説明されている。工夫を凝らした図版が随所に用いられており、読者の理解を助けることも特徴のひとつである。
 『チャート式情報・文献アクセスガイド』(大串夏身著、青弓社、1992)[015.2:O-26]は、文献探索のルートを6枚の図版にまとめ、個々のルートについて主要なレファレンス・ブックを示しながら解説したものである。

 これらの図書に類するものとしては、次のようなものが挙げられる(出版年順)。『大学生と図書館 第2版』(日本図書館研究会編、日本図書館研究会、1989)[017.7:N-77]、『文献を探すための本』(斉藤孝ほか著、日本エディタースクール出版部、1989)[015.2:Sa-25]、『現代人のための情報・文献調査マニュアル』(情報アクセス研究会編著、青弓社、1990)[002.7:J-66]、『現代人のための情報収集術』(情報アクセス研究会編著、青弓社、1995)[007.5:J-66]、『文科系学生のための文献調査ガイド』(池田祥子著、青弓社、1995)[015.2:I-32]、『図書館における謂査と研究:生涯学習時代の市民と学生のための案内書 新訂版』(小林矩子著、蒼文社、1995)[015.2:Ko-12]。

 上記の図書では、出版年の関係で、残念ながらインターネット上のネットワーク情報資源について触れていない。ネットワーク情報資源を対象とした文献探索法については、『インターネットで情報探索』(戸田愼一ほか著、日外アソシエーツ、1994)[547.48:To-17]、『情報検索のためのインターネット活用術』(情報科学技術協会編、日本アソシエーツ、1996)[547.48:U-95]、『調査のためのインターネット』(アリアドネ著、筑摩書房、1996)[007.5:A-71]、『World Wide Web 情報検索の達人:WWW検索サーピス完全ガイド』(山名早人、田村健人共著、カットシステム、1996)[所蔵無し]等を手掛りとして、知識を整理するとよいであろう。

 今後は、あらゆる形態の文献(紙媒体からネットワーク情報資源まで)を対象とした文献探索法の図書も生まれてくるであろう。更に、図書形態ではなく、インターネット上のホームページを活用して、多様な形態の文献を対象とする文献探索法のガイドシステムが構築されることも十分考えられる。

 本学の学生は、多様な形態の文献を入手・活用する力を備えた人材であると同時に、文献探索法に関する図書(あるいはシステム)の新たな執筆者(制作者)として活躍することも期待されている。


本学助手
Books on How to Search Literature. by Ichiro OHBA