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ターミノロジー

メタデータ

永田治樹

 手元の『現代用語の基礎知識』にはメタのついた言葉がいくつか収められている。理科で習ったメタモルフォーゼ(変態)や哲学用語のメタフィッジックス(形而上学)などの古くからの言葉も混じっているが、大抵は新語である。残念ながらメタデータはない。メタという接頭辞は、これらの用例のように「後続」とか「変化」、あるいは「超越」、「一段と高い」といった意味だ。「メタデータ」もその伝で、データについてのデータと考えればよい。したがって、この用語は元来データを扱う分野のものと類推されるが、昨今、図書館情報学の領域でも使われるようになっている。
 例えぱ、電子ジャーナル誌 The Public-Access Computer Systems Review. Vol.6, no.4 (1995)に載った"You Cal1 It Corn, We Ca1l It Syntax-Independent Metadata for Document-Like Objects."(「あなた方はそれはとうもろこしだとレ)うけれど、私たちはドキュメント類の情報オブジェクトのための、シンタックスから独立したメタデータと呼びます」)という題名のぺーパーである。その内容は、近年ネットワーク上の情報資源についての記述が必要になり、それぞれのグループが種々基準を作成し始めている。そうした基準を目録と読んでもよいけれど、目録というと AACR2 や USMARC などのイメージが避けられないし、「あなたがたはとうもろこし、われわれはとうきび(北海道の人はこう呼ぶ)」といった状況なんだから、どちらにも偏らないよう「メタデータ」と呼ぶことにして、共通する基準を作成しましたという報告である。
 Lycos や A1ta Vista などの強力なサーチエンジンによっても、インターネット上で求める情報を見つけるのは容易ではない。WWWのテキスト全文を索引化するだけの手法では、このような限界に突き当たってしまう。もちろん画像情報などの場合、この方法では対処できない。何らかの情報について情報(メタデータ)が必要なのである。とはいえ、従来の図書館目録のような負担の大きいものでは今後の状況には対応しきれない。人手のかからない、それでいて的確なメタデータが求められているのである。
 そこで IAFA (Internet Anonymous FTP Archives) / Whois++ のテンプレートを作成したグループや IETF(Internet Engineering Task Force) の URI (Uniform Resourses Identifier) についてのワーキンググループ、あるいはTEI(Text Encoding Initiatives) のヘッダーなどに関わるグループなどと、それに図書館の人々が昨年初めて会合 (OCLC / NCSA Metadata Workshop) し、共用できるメタデータのミニマム・セット(13項目)を作成した。これが、先の報告が取り上げているものであり、会議の開催地(Dub1in, Ohio)の名をとってダブリンコアという。
 このダブリンコアの合意に勢いづいて、今年も The Warwick Metadata Workshop が開催された。そこでは、ダブリンコアを各種のフォーマットに展開する議論や、より広い範囲のメタデータを利用可能にするための手法として共通の容れ物(ウォーリック・フレームワークという)をつくるといった提案がなされた。このようにメタデータの話題、つまりネットワーク情報資源を中心とした情報記述法やその扱いについての議論が、このところ盛り上がっている。(最新のメタデータ資源の詳細については、IFLA(国際図書館連盟)のウェブ、http://www.n1c-bnc.ca/ifla/II/metadata.htmをご覧ください)


本学・助教授
Metadata. by Haruki Nagata