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開放型マルチメディア電子キャンパス・プロジェクト

−電子図書館システムと教育システムとの連携−

川瀬正幸

 昨年秋以来の日本におけるインターネット,特にWWWの爆発的ブームは,一種の社会的現象となったが,大学図書館の世界においても,多くの大学がホームページを用意し,情報発信を行っている.本学においても,昨年8月第1回の「ディジタル図書館」ワークショップが開催されて以来,WWW上に「ディジタル図書館ネットワーク」が形成され,その研究活動が公開されていることは,多くの方がご存じのことと思う(URL:http://www.dl.slis.tsukuba.ac.jp).
 また,学術審議会答申「21世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について」や同学術情報資料分科会学術情報部会報告「大学図書館機能の強化・高度化の推進について」等においても,大学図書館及び図書館員への期待は大きく,特に図書館の情報発信機能の整備が求められている.
 しかし,残念ながら本学は,図書館情報学の教育・研究を専門とする全国唯一の大学として,その附属図書館としても率先して新しい試み,実験をすべきであるにもかかわらず,これまで「ディジタル図書館」等の研究成果を図書館の現場に充分に生かしてこれなかった.
 今回,本学教官と図書館のスタッフの共同による新しいプロジェクトを開始することになったので,以下このプロジェクトについて,計画書に従ってご紹介することにしたい.

計画概要
 社会の情報化が急速に進む中,大学キャンパスにおける情報化が火急の研究・開発課題となっている.しかしながら,大学内の教育の現場における情報化は,コンピュータ利用を前提とした一部の科目を除いては,ほとんど電子化されていないのが現状である.また,教育活動を支援すべき大学図書館の電子化も,速やかに取り組むべき喫緊の課題となっている.
 そこで,シラバス,講義録,参考図書・指定図書,参考資料,宿題等を電子化し,大学の共有マルチメディア・データベース化することにより,教育方法の改善を図ることができると同時に,図書館が所有する情報資料のより効果的,効率的利用を推進できると考えられる.換言すれば,これは,学内ネットワークとそれに接続されているコンピュータ,その他のマルチメディア端末機器からなる環境上に,実際に教育の現場で役に立つ情報資源を構築し,それを管理・運用して教官および学生の教授方法・教育効果を最大限まで高めることにより,学内情報環境の効果的運用を目指すものである.

 この計画は,教育活動と図書館の連携という新しい試みであると同時に,教官との共同プロジェクトという,これからの大学図書館における研究開発機能の実現方策のひとつのモデル・ケースでもある.この試みを行うには,本学は最適の環境といえるであろう.
 このプロジェクトを通じて,本学で教授されている主要科目を電子化し,いわば電子版図書館情報学叢書をネットワークを通じて提供することができれば,本学の学生のみならず全国の現職図書館員の再教育にも有益であろう.合わせて図書館情報学のセンターとして,図書館員の交流の場として,本学図書館のホームページを近々公開する予定である.
 ハワード・ラインゴールドの著作「バーチャル・コミュニティ」にならっていえば,いわば電脳空間(Cyber Space)における仮想キャンパス,あるいはVirtual Universityを目指す今回の試みに,皆様のご意見,ご要望を寄せていただければ幸いである.


図書館情報課長
Open Multimedia Electronic Campus Project
-Seamless Linkage of Electronic Library System and Teaching System-, by Masayuki Kawase