平成21年10月5日(月)~30日(金) 開催


開催にあたって

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 平成7年度以来恒例となっている筑波大学附属図書館特別展の季節となりました。平成18年度からは学内組織との共催での展示会を特別展、附属図書館単独主催の展示会を企画展と呼び分けることとしていますが、今回は人文社会科学研究科歴史・人類学専攻との共催による特別展です。昨年度から三か年計画で進めている中央図書館の耐震改修工事のため、残念ながら昨年は展示会開催を見送りましたが、今年は旧に復することができました。本特別展を企画した附属図書館研究開発室と、資料提供および展示構成等につきご指導いただいた山澤学先生並びに共催組織の人文社会科学研究科歴史・人類学専攻に感謝いたします。

 さて、今回のテーマは『日光 描かれたご威光 ―東照宮のまつりと将軍の社参―』です。ご承知のように日光社参は将軍・幕府の威光を示すべく、時の将軍自らが多くの大名・家臣を伴って東照宮に詣でる大行事です。「なぜ、筑波大学で日光か」とお思いのことと想像しますが、附属図書館には前身校以来、永々と築かれきた膨大な資料群が継承されています。その中の一つが今回の中心的資料である「日光御参詣警固絵図」です。まずは、これらを収集し長期にわたり安定的に保存すると共に、研究資料として活用してこられた本学の先輩諸氏に敬意を表したいと思います。そしてこれらの資料について、今再び新たな視点から研究がなされ、その成果が資料として図書館に収蔵される、こうした収集、保存、活用による知識再生産の循環の営みが図書館の存在意義の大きな部分であるといえます。

 附属図書館では収蔵する古地図・絵図について計画的にデジタル化して公開してきています。本特別展に出品した多くの絵図は常時、高精細画像による電子展示でもご覧頂けますが、描き出された徳川将軍の威光を実物のみがもつ迫力でご堪能ください。
 特別展を大いにお楽しみいただき、筑波大学の有する伝統、研究領域の幅広さと奥行きの深さ、そして人材の豊富さを実感していただければ幸いです。
 なお、本特別展の会期の後半(10月19日から10月30日まで)には、人文社会科学研究科との共催によるもう一つの特別展、筑波大学附属図書館所蔵連歌俳諧貴重書展を同時開催します。同時期に二つの特別展を開催するのは附属図書館として初めての試みでありますが、どうぞ、あわせてご覧ください。


 平成21年10月
          筑波大学附属図書館長
          植松貞夫


 このたび附属図書館との共催により、特別展「日光 描かれたご威光 ―東照宮のまつりと将軍の社参―」を開催することになりました。特別展の共催としては、平成14年度の「学問の神をささえた人びと ―北野天満宮の文書と記録」以来、二度目となります。
 当専攻は歴史学(日本史学、東洋史学、西洋史学、歴史地理学)と人類学(先史学・考古学、民俗学・文化人類学)、複合分野(現代東アジア歴史・民俗研究、地中海・西アジア研究)から成る専攻で、基礎的な専門領域の深化を軸としつつ、応用・学際的な関連領域への展望をも拓きうる研究者を養成、輩出してまいりました。

 皆さまご承知のとおり、附属図書館には、前身校の時代から収集されてきた歴史的に貴重な文献・資料類が数多く所蔵されております。当専攻では、歴史・人類学系の設置以降、附属図書館と協力しながら、それらの整理および研究、公開を進め、また、大学院・学群教育にも活用してきました。資料の公開方法が紙媒体から電子媒体へと変わりつつある昨今、附属図書館では新たなデータベースを構築する試みもなされておりますが、その際にも、基礎的な研究は欠くことはできず、私どもの果たすべき役割は変わっておりません。と同時に、データベースの構築を通じ、新たな発見がなされることも少なくありません。

 今回の特別展は、このような新しい試みのなかで史料的価値が再発見された「日光御参詣警固絵図」を中心に、近年は世界遺産として注目を集める日光に関係する附属図書館所蔵史料を展示・公開し、学界はもとより、地域の皆さまにご紹介するものです。点数としてはわずかではありますが、本学の伝統を感じさせる歴史史料の数々に触れていただくとともに、当専攻における日ごろの研究成果の一部をご高覧たまわれれば幸いです。
 最後になりましたが、当特別展の開催にあたり、ご協力、ご支援をいただきました学内、学外の皆さまに厚くお礼申し上げます。


 平成21年10月
           筑波大学大学院人文社会科学研究科
           歴史・人類学専攻長
           古家信平