筑波大学附属図書館報「つくばね」
≪シリーズ 国立大学法人元年  1≫  国立大学法人化の記録
篠塚富士男
 2004年4月1日,国立大学法人法に基づき,89の国立大学法人と4つの大学共同利用機関法人が誕生した。これは「明治19年の帝国大学令公布,昭和24年の新制国立大学発足以来の,国立大学の存在基盤を変える大改革」(国立大学法人筑波大学発足式における岩崎洋一学長の挨拶から)として歴史的に位置付けられる大きな変革であるが,本学の場合,2002年10月1日に筑波大学と図書館情報大学が統合してからわずか1年半しかたっておらず,「世の中の流れの中で大きな変革が次々にやってきた」という印象がある。しかし,こうした大きな変革の時期に遭遇するのは大変貴重な経験でもあるので,国立大学法人化にともなう図書館のいろいろな作業・動向や変化について,その記録を書きとどめておくこととしたい。
《法人化の準備》
蔵書点検
 法人化のための諸準備のうち,職員全員に関わる大きな作業となったのは蔵書点検であった。これは,国立大学法人会計基準の適用により,会計処理が従来の官庁会計といろいろな面で大きく異なることに対応したものであり,2002年度に雑誌,2003年度に図書を主たる対象として点検を行った。この蔵書点検は,学系等資料室に貸し出した図書も対象としたので,文字通り図書に関する全学的な作業となったが,200万冊を越える蔵書を図書館を閉館せずすべて点検するのは初めての経験であり,職員の当番表を作って計画的に作業を行った。また,未製本雑誌やマイクロフィッシュの取り扱い等,従来消耗品として処理してきたものを今後どのような形で管理していくか等の問題も検討しながらの作業となり,蔵書構成専門委員会での不用判定の審議等も含めると,ほぼ1年をとおしてこの作業に関連する仕事を行う必要があった。このように,特に作業の企画立案を担当した職員にとっては非常に負担の大きな仕事になったが,作業は順調に進み,予定通り資産として国立大学法人筑波大学に承継された。なお,財務会計システムの運用にともない,法人化後は財務会計システムと図書館システムの連動により資産の管理をしている。
研究協力専門委員会・学術情報分科会
 2003年度には全学的組織として法人化準備委員会が設置されていたが,この委員会の下に研究協力専門委員会学術情報分科会が設置されており,当時の林附属図書館長がこの分科会の主査であったこともあって,図書館が分科会の事務を担当した。分科会の主な検討事項は学術情報の収集と提供に関することであったが,2004年度から学術情報処理センターと教育機器センターとが統合されて学術情報メディアセンターとなることもふまえて,学術情報の収集と提供に関する新たな枠組み等に関する検討が行われた。
《国立大学法人になって》
組織の再編
 職員の立場からみると,国立大学法人となったことは,何よりも組織の再編によって実感できた。当館の概要の「管理運営機構」の部分を,法人化の前(2003年度版)と後(2004年度版)で比較すると,いろいろと異なっていることがわかるが,特に大きな変更点として,(1)附属図書館が部局となり専任の図書館長が置かれたこと,(2)副館長体制がとられ2名(教員・事務)の副館長が置かれたこと,(3)事務組織も1979年4月以来続いてきた1部3課体制から2課体制になったこと,(4)大塚図書館担当の組織が学校教育事務部から附属図書館になったこと,(5)専門職員が置かれたこと,などがあげられる。また大塚図書館が情報サービス課に所属したこともあって専任職員は79名となった。
諸規則の制定
国立大学法人筑波大学としての規則類の制定の一環として,図書館においても,附属図書館規則をはじめ,利用規程や運営委員会細則等の諸規則が制定された。これらの規則は,おおむね従来の内容を引き継ぐものであったが,学内の組織の再編による組織・名称等の変更にともなう変更があったほか,運営委員会や専門委員会等の組織の見直しが行われた。また,特に利用者に大きく関係するものとしては,相互貸借サービスに関する料金の見直しと新規の料金設定が行われたが,その理由は主に,国立大学法人になって国の会計規則の適用を受けない組織になったことと,これにともなって文部科学省が定めていた文献複写に関する取り決めが失効し,料金の徴収方法を各機関が独自に定めることになったためであった。
中期目標・中期計画と重点施策
 本学の中期目標・中期計画・年度計画の中には,もちろん図書館に関連する事項も記載されており,これらが法人化後の図書館の活動の大きな指針・計画となっている。また,これとは別に年度ごとの重点施策が,組織別に作成され公開されているが,附属図書館としての重点施策および改善目標等はこちらの方が具体的に記載されている。ここに記載されている内容は,法人化したために新たに活動を追加したというよりも,近年の図書館の活動状況から導きだされた事項がベースになっているものであるが,2009年度までの6年間をひとつの単位とする中期目標・中期計画と連動して考えることによって,その位置付けや重要性がより明確になったといえよう。
今後にむけて
 国立大学法人となって半年余りが過ぎた。事前の準備はしていたとはいえ,実際に法人になってみると,図書館に限らず学内全体でいろいろな点でとまどいもあり,手探りの状態で進んできたところもある。しかし,この半年の経験で職員の意識は大きく変わってきているように感じる。図書館としても,従来以上に大学全体の中での位置付けを明確に意識し,本学の使命と目標の達成に向け,学内組織との緊密な連携をはかりつつ,あくまでも利用者本位に堅実でありながらも大胆かつ柔軟な発想もあわせもつ活動を行っていく必要がある。法人としての筑波大学の評価は,まさにこれからの活動にかかっている。
(しのづか・ふじお 情報管理課課長補佐)
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