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シリーズ・電子ジャーナル(3)
日本の電子ジャーナル

 今回は日本の電子ジャーナルについてご紹介します。
 残念ながら、学術出版社の多くが自社発行の雑誌を電子化して提供している欧米に比べて、日本では学術雑誌の電子化は遅れていると言わざるを得ません。雑誌に関する出版社のWebページは数多くありますが、ほとんどが最新号の表紙の画像や目次を紹介するにとどまり、電子ジャーナル化よりも冊子体の販売促進に重点が置かれているようです。
 そんな中でも、文部省や学術団体を中心に、いくつかの注目すべき試みが行われています。

学術情報センター電子図書館サービス
(NACSIS-ELS)

 NACSIS-ELSは、日本の学会誌を電子化して提供するものです。平成11年11月現在、およそ90の学協会の発行する300誌近くの学術雑誌が収録されています。
 利用にあたっては、専用クライアント・ソフトを使うか、WWWブラウザに専用プラグイン・ソフトを組み込んでアクセスします。これらのソフトは、NACSIS-ELSのWebサイト (http://www.nacsis.ac.jp/els/equip-j.html)から無料でダウンロードできます。ここでは専用クライアントの例を示しますが、学術論文の表題、著者名、キーワード等から検索ができ(図1)、選択した論文の本文は画像で表示されます(図2)。
 利用料金はシステム使用料と著作権料に分かれており、システム使用料は当分の間無料ですが、著作権料は各学会が定めた金額を支払う必要があります(無料の学会もあります)。
 利用資格は大学や教育・研究施設の教職員、大学院生、学会員等となっており、郵送による登録申請が必要です。利用申請に関する問い合わせ先は次のとおりです。

学術情報センター管理部共同利用課
〒112-8640 東京都文京区大塚3-29-1
電話:03-3942-6933 FAX:03-3942-6797
E-mail: kyouri@ad.nacsis.ac.jp

 また、NACSIS-ELSのホームページ(http://www.nacsis.ac.jp/els/els-j.html)でも、電子図書館サービスに関するさまざまな情報が提供されています。

(図1)NACSIS-ELSでの検索画面例
(図2)NACSIS-ELSでの表示画面例

オンラインジャーナル編集システム

 NACSISでは、さらに、学会誌等の電子ジャーナル化を促進するため、編集工程の電子化や電子原稿の効率的作成を行うためのシステムを開発しています。この「オンラインジャーナル編集システム」では、論文投稿者に対して、投稿規程に沿った原稿作成を容易にする執筆支援機能や引用文献リスト作成支援機能、編集サイドに対しては、投稿受付、原稿管理、査読支援、編集工程管理、購読者管理といった機能を提供します。また、完成した電子ジャーナルを提供する際の利用者認証、書誌・全文検索機能、新着雑誌の目次のメールサービス等、利用者向けの機能も備えています。
 現在、このシステムは希望する学協会に無料で配布が始まっており、日本物理学会ではこれを実際に導入し、運用テストを行っているとのことです。

科学技術振興事業団の活動

 科学技術振興事業団(JST)では、NACSISとも連携し、「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE)を構築しています(http://www.jstage.jst.go.jp/index.html)。 これは学協会の情報発信を支援するため、電子ジャーナル出版に必要なハードウェア、ソフトウェアをJST内に用意するというもので、現在、"Japanese Journal of Applied Physics," "Journal of the Physical Society of Japan," 「資源と素材」の3誌が閲覧できます。
 また、JSTが発行している雑誌「情報管理」は、1999年4月号から電子化されており、冊子体の購読者には無料で提供されています。これは筑波大学附属図書館でも購入していますから、学内の端末で閲覧できます。筑波大学電子図書館の「オンラインジャーナル」のページ(http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/online-j/)からリンクが張ってありますのでご利用ください。

大学における紀要の電子ジャーナル化

 筑波大学では100種類以上の紀要が発行されています。これらの紀要は中央図書館の本学関係資料室に集められており、1987年以降については電子図書館で目次情報が検索できます(http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/pub/kiyo-kensaku.html)。 原文が電子化されているのは、現在のところ、17タイトルです。紀要原文の電子化については、執筆者全員の著作権上の許諾が必要なため、バックナンバーにさかのぼって行うことは困難です。 新しく発行される号から始めて、徐々に増やしていきたいと考えています。
 インターネットで公開されている他大学の電子化紀要としては、国立大学では「山梨医科大学紀要」、「電気通信大学紀要」、"Nagoya Journal of Medical Science"、「名古屋大学文学研究論集」、「コミュニケーションと言語教育(信州大学大学院教育学研究科)」、"Yonago Acta Medica(鳥取大学医学部)”、"Esakia(九州大学農学部)"、"Acta Medica Nagasakiensia(長崎大学医学部)"、「長崎大学水産学部研究報告」、「文学部論叢(熊本大学)」、「熊本法学」などがあります。また、公立大学では大阪市立大学、都留文科大学、私立大学では東京情報大学、立教大学、東京家政学院筑波女子大学などの例があります。
 このように紀要を電子化して公開する大学・研究機関はこれから増えていくものと思われます。


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