小西 和信
去る1月25日(月),東京大学附属図書館大 会議室において,標記フォーラムが開催された。 関東地区と東京地区の国立大学図書館協議会共催 の本フォーラムには,両地区協議会加盟館とオブ ザーバー館,来賓の文部省学術情報課と学術情報 センター,及び海外学術出版社4社から,101 名の参加があった。
まず,六本佳平東京大学附属図書館長の開会挨
拶に続き,参加者の電子ジャーナルに対する知識
整理を兼ねて,東京工業大学附属図書館の大原寿
人氏と東京大学大学院農学研究科の増田元助手の
お二人から「電子ジャーナルの現状と問題点」に
関する基調報告があった。
ついで,両氏から東京工業大学と東京大学にお
ける電子ジャーナルの導入の現状と利用状況につ
いての事例報告がなされた。
休憩をはさんで,シュプリンガー・フェルラー ク,アカデミック・プレス,エルゼビア・サイエ ンス,ジョン・ワイリーの4社から,各社の電子 ジャーナルの開発・提供の現状について,デモン ストレーションをまじえた報告が行われた。
このあと,土屋俊千葉大学附属図書館長の司会
のもとで,質疑応答と討論が行われた。
この中で,電子ジャーナルの価格体系,アーカ
イブの保存,ILLへの対応などの問題について
突っ込んだ質問が出された。
また,冊子体と電子ジャーナルが今後どのよう
に推移していくかという参加者の疑問に対して,
各社とも将来にわたって冊子体を残していく見通
しであると表明された点は新鮮であった。
更に,参加者の中から,地方の大学等では電子
ジャーナルに関する情報が不足しているにもかか
わらず,研究者からはサービスを強く求められて
おり,図書館は苦慮している旨の発言もあった。
このあと更に議論が沸騰する様相を呈していた
たが,当初の予定時間を超過したこともあり,斎
藤武生筑波大学附属図書館長の閉会挨拶をもって
フォーラムの幕が閉じられた。
今回のフォーラムは,電子ジャーナルの導入が
図書館の焦眉の問題になりつつある現時点で,導
入の意思決定にあたる図書館の管理者及び関係職
員が,電子ジャーナルに関する最新情報をまとま
った形で得るところに主眼があったと思う。
その意味では,主要な出版社のプロジェクトの
概要と導入先行館の事例を知りえたことは大きな
収穫であった。
もちろん,たった一回のフォーラムで,導入を
決定するための十分な情報を得られると期待する
のは無理があるだろう。例えば,電子ジャーナル
の導入では,大学間での共同購入=コンソーシア
ムの問題が重要な課題になるが,今回は,その点
については触れることができなかった。
今後,この種の催しが継続的に企画されること
が期待されるところである。
なお,このフォーラム以降,一部の出版社から
は新たな提案が出されており,それへの対応も個
別の大学単位ではなく,フォーラム参加機関間で
の連携がとられるようになった。これは,本フォ
ーラム開催の特筆すべき成果だといって良いので
はないだろうか。
おそらく近い将来,多くの図書館で電子ジャー
ナルに対する何らかの決断をしなければならない
事態が生じるように思われる。このフォーラムが
その検討のための材料を提供できるとしたら,企
画準備に携わった一人として望外の喜びである。
(こにし・かずのぶ 情報システム課長)