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電子図書館と著作権

石村 恵子

 まだ誕生して間もない電子図書館にとって,その社会的文化的地位の確立を左右すると思われる最も重要な課題のひとつが,電子化された著作物の著作権問題です。

 従来より著作物の利用にあたっては,著作権法により,複製権,同一性保持権(著作者の意に反した著作物の変更,切除その他の改変を受けない権利),氏名表示権,有線送信権等著作者の権利が保護されてきましたが,ディジタル化・ネットワーク化技術の進展によって,著作物のコピー,改変,融合,送信等が遥かに容易に飛躍的な量的拡大をもって行えるようになり,著作権制度の見直しが緊急の課題とされてきました。本年1月1日から施行された改正著作権法では,新たに送信可能化権(送信の前段階のアップロード行為に対する権利)が付与され,有線無線を問わず送信可化権を含めた公衆への送信全体に対する権利を公衆送信権とすることで用語を整理しました。

 本学で実施する電子図書館においても,著作権法及び関係法令を遵守し,著作者の権利を保護しなければならないことは言うまでもありません。従って,電子図書館で公開する資料が保護著作物(著作者の死後50年以内の著作物)であれば,著作権者から利用の許可を得る必要があります。そこで附属図書館では,電子図書館の本格的稼働に先立ち,本学電子図書館における資料の利用方法について,図書館電子化推進特別委員会及び電子図書館システム研究班において検討を重ねてきました。その検討結果を中間報告書として取りまとめ学内関係者に広く意見を求め,附属図書館運営委員会の審議を経て「筑波大学電子図書館システムにおける著作権処理について」を作成しましたので,その内容を紹介します。

 本学電子図書館は学内で収集,生産された著作物を広く迅速に学内外に提供することにより,教育研究活動の一層の促進を図ることを目的としています。従って,著作権者は主に学内の研究者です。これらを勘案し,本学では,以下の著作権処理方式を定めました。

 著作権者から著作物を利用する許可を得る方法には,著作権の譲渡と利用許諾という2通りの方法がありますが,本学では,著作権は著作権者に帰属したまま許諾要件にもとづいて該当資料を利用する,利用許諾の方法に依っています。

 また,利用許諾を得るためには,著作物を利用する者が著作権者に許諾を依頼するという方法が現在一般的のようですが,本学では著作物の利用許諾を前提として著作者が電子図書館への登録を申請することとし,「本学紀要等」「学位論文」「本学における研究成果」「学事報告書等」の4種類の申請書を作成しました。著作物の利用方法や利用条件等電子図書館への具体的な登録方法については次頁の「筑波大学電子図書館システムへの登録に関する実施要項」に定めましたが,個々の許諾要件については,申請書の中で個別に規定することができます。例えば,「学位論文」及び「本学における研究成果」では,送信範囲(学内のみか学内外か)と公開範囲(全文か1部あるいは要旨のみか)を申請書の中で選択します。また,紀要等のように1冊に多数の論文が掲載されており著作権者が申請者と異なる場合には,申請前に施した著作権処理の方法を申請書に明記する必要があります。これに関しては現在,本学電子図書館への登録を1.投稿規定に明記する,2.原稿依頼文書に明記する,3.編集会議等で決定する,といった方法で申請されています。

 アナログ技術を前提としたこれまでの著作権法の枠には収まり切らない事態が生じていることにもより,電子化された資料について,著作権の侵害にあたる恐れのある行為が昨今頻発しているのも事実です。このため,電子図書館自身が著作権保護を実効化する仕組みを内在する必要に迫られています。例えば,著作権保護のために,複製防止システムや電子透かし,著作権管理情報等の技術が開発されています。こういった技術を積極的に活用し,利用と保護の適切な運用を図ることは,電子図書館に不可欠の急務です。また,情報化社会における著作権保護について利用者の注意を喚起し続けることも,電子図書館に課せられた必須の任務となるでしょう。

(いしむら・けいこ  情報システム課電子情報係長)


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Last updated: 1998/04/28