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Readingバトン(秋山学 人文社会系准教授)

2013年3月14日
Readingバトン -教員から筑波大生へのmessage-
中山附属図書館長に続く第5走者として、秋山学 人文社会系准教授から寄稿いただきました。

 

 

Pick Up
『論語物語』下村湖人著.講談社 , 1981【分類081-Ko19-493】

Book Review
 『論語』というと,われわれの意識には,高等学校の漢文の授業で扱われた教材,という記憶しかないかも知れません.ところがこの『論語物語』は,文筆家で社会活動家でもあった下村湖人(1884-1955)が,そのイマジネーションを飛翔させるだけでなく,司馬遷(前145-86)による『史記』の記述などにも基づきながら,実証的な考証の上に『論語』のいくつかの章節を物語風に書き改めた作品で,実に楽しく,かつ感銘深く読み通せる本です.孔子というと,漢文を通じてなら聖人君子という印象しか持てないのが普通だと思いますが,この本からは,弟子たちとの親密な交遊を通じて,孔子が何を目指していたのかが手に取るようにわかります.「孔門十哲」と称されますが,弟子たちとの交流を通してこそ,孔子そして儒学の本質が理解されるのではないでしょうか.
 もし『論語』に魅せられたなら,筑波大学の前身である東京文理科大学・東京教育大学は,『論語』を含む「四書五経」つまり「経書」を扱う「経学」のメッカであったということも想い起こしましょう.わが国の経学は江戸時代に開花しますが,特筆すべきは,伊藤仁斎(1627-1705)・東涯(1670-1736)父子による「古義堂」の文献学的な学風です.仁斎は『論語古義』を著して『論語』が諸学の規範であることを主張し,東涯はその学統を忠実に継承しました.本学附属中央図書館の和装古書コーナーには,『易経集注』(ロ810-191-1/20;1663年野田庄右衛門刊;貴重書)への東涯自筆と伝わる書き入れ本や,東涯門下に連なった高僧・慈雲尊者飲光(1718-1804)による最晩年の自筆本『法華陀羅尼略解』(ハ320-59)も所蔵されているのです.

■次は、渡辺政隆先生(広報室教授・サイエンスコミュニケーター)です。