2014年2月19日
Readingバトン -教員から筑波大生へのmessage-
野村先生に続く第10走者として、松本末男 附属学校教育局教授から寄稿いただきました。
Pick Up
『スタンフォードの自分を変える教室 』ケリー・マクゴニガル著 ; 神崎朗子訳.大和書房 , 2010 【分類141.8-Ma15】
Book Review
この本は,題名に惹かれて,面白いなと思って購入しました。決して,美人の著者の写真に惹かれたのではありません。著者は,現在スタンフォード大学の心理学者で,スタンフォード大学で,「意志力の科学」,「思いやりの科学」「マインドフルネスの科学」の授業を行っていますが,本書は,その中の「意志力の科学」が,ベースになっています。これらの授業で,彼女は,スタンフォード大学でもっとも優秀な教員に選ばれています。
本書の構成は,イントロダクションで始まり,9章に別れていて,授業としては,10週のプログラムで構成されていいます。人間の意志の力には,誰もが悩むことがあります。私たちの意志は,弱い意志,堅い強固な意志,様々な状況に合わせて変わります。強い意志を持ちたいと思っている人,煙草をやめたいけど意志の弱さに決断ができない人,そんな意志が実は,精神論ではなく,自分に対する思いやりと,自分の心と体の反応を科学者の目で観察することだと説いています。
本書では,心理学,神経科学,医学の各分野から自己コントロールに関する知見が述べられています。読み進めるうちに,各章に用意されている実験がなかなか面白く,興味をそそられます。また,各章の終わりには,その章のポイントが書かれていて,振り返ることができます。こうした授業が大学の講義として行われていることは,驚きでした。
私自身は,第8章の「感染した!」に個人的にとても,興味を持ちました。人は,自分が好きな人の影響を受ける。それも,大きく。例えば,母親は,自分と違う人間ですが,大事な母親のことを考えると,脳の中では自分のことを考えているのと同じ領域が反応するのだそうです。人間は,「自分」と思っているものには,自分が大事に思っている人が含まれるということが書かれていて,なるほどなあと思いました。貴方は,誰の影響をもっとも受けているでしょうか?続く第9章が「この章は読まないで」という章で、無理をして,要求を抑えると,そのリバウンドが現れることが書かれていて,上手に付き合うことが必要であると述べています。
自分の意志を何とかしたいと思っている人,是非読んでみてください。
■次は、永田恭介 学長です。