教員著作紹介コメント(礒田 正美先生)

礒田 正美先生(人間系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『古代エジプトの数学 : 文明繁栄のアルゴリズム』David Reimer著, 富永星訳, 礒田正美監修.東京 : 丸善出版, 2017【分類410.242-R25】

【コメント】
本書は、David ReimerによるCount Like an Egyptianの邦訳です。訳者は珠玉の理系翻訳書を産出される富永星氏、礒田は自身の研究の一環として監修しました。古代エジプトの数学は、数学史研究上は20世紀冒頭の四半世紀までにその解読が完結し、早くから算数・数学教科書にも取り上げられてきました。その教材開発は、イスラエルのAbraham Arcavi (現、国際数学連合ICMI事務局長) 先生が1980年代に学位論文で手掛けた新展開により今日へと前進します。Arcavi先生の研究をふまえ、2002年には本学教育研究科で筆者のもとで岐阜県派遣の高橋秀樹先生がWebサイトと修士論文をまとめました。1998年にはじまる礒田とArcavi先生との研究交流は、第一級の国際誌Educational Studies in Mathematics (Springer)に、Learning to Listenという表題で成果を結びます(2007)。それら経験を前提に礒田は本書を監修しました。礒田は、他者の立場を想定する解釈学的な営みに基づく理解こそが、今日求められる資質・能力であることを提唱しています。その資質・能力を鍛える良書として本書を監修したことを序文に記しました。序文では、グローバル化への資質・能力育成に算数数学教育が必須であること、その教材書として古代エジプト数学を読み解く本書が評価されるべきであることを解説しています。
数学史上の原典を活用した教材開発に関わって20年、礒田が寄贈してきた貴重書は「数学の叡智」展(2015)にみるまでに充実しました。次世代を担う皆さんが、自身の世界展開の礎として、それら貴重書を活用下さることを願っています。

参照URL:
https://link.springer.com/article/10.1007/s10649-006-9075-8
http://math-info.criced.tsukuba.ac.jp/museum/RhindPapyrus/index.htm
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/exhibition/2015math/index.html


教員著作紹介コメント(島田 康行先生)

ブックコメントのアイコン島田 康行先生(人文社会系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『ライティングの高大接続 : 高校・大学で「書くこと」を教える人たちへ 』渡辺哲司, 島田康行著 東京 : ひつじ書房, 2017.6 【分類375.86-W46】

【コメント】
 一人の学生にとって一連・一体のものであるべきライティング教育が、高校と大学の双方で、独立的かつ自己完結的に、断絶や重複を露呈しつつ行われています。そこで本書では、高・大の間でつながりの悪いところはどこか、なぜそうなっているのか、どうつなげばよいかを、教師の視点から考えてみました。高卒者の半数以上が大学生となる現代日本のライティング教育の内容を、高校から大学へと続く一体のものとして、単なるハウツーを超えて論じます。
 私にとって、このテーマでは『「書ける」大学生に育てる―AO入試現場からの提言』(2012)以来の著作です。共著者の渡辺には『大学への文章学 コミュニケーション手段としてのレポート・小論文』(2015)『「書くのが苦手」をみきわめる―大学新入生の文章表現力向上をめざして』(2010)の著作もあります。


教員著作紹介コメント(鬼界 彰夫先生)

ブックコメントのアイコン鬼界 彰夫先生(人文社会系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『生き方と哲学』鬼界彰夫著.東京 : 講談社, 2011.7

【分類114.2-Ki21】

【コメント】
本書は、生き方に悩む若者が、自分の生き方についてみずから真剣に、そして哲学的に考察するための手引きとして書かれた。大学での学生指導において、そうした手引きを必要としている学生に幾度かであったことが本書執筆の直接の動機だった。彼らが本当に必要としていたのは、誰かに助けてもらうことではなく、自らの思考により自らを暗闇から救い出し、光を見出すことだった。だがそれは困難なことである。とりわけ、どのように考えればよいのか、どのように考え始めればよいのか、しかもそれを、他人の言葉に従うのでなく、自分自身の思考により見出すことは、若者にとって(そして誰にとっても)極めて難しいことである。私が本書で試みたのは、これまでに私が出会った数々の哲学者の中で、こうした営みに正面から挑み、それによって生き続けることのできた哲学者の実際の思考例、格闘例を手本にしながら、自らがそうした営みに挑まざるを得ない若者の手掛かりとなるような、導き、ガイド、手助け、ヒントを示すことだった。こうしたヒントを現に切実に必要としている学生諸君の手に本書が取られ、なんらかの助けになるなら、著者である私自身の生も君たちの行為の光によって再度照らされるだろう。


教員著作紹介コメント(高橋 義雄先生)

ブックコメントのアイコン高橋 義雄先生(体育系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『国際スポーツ組織で働こう! : 世界の最先端スポーツ大学院でマネジメントを学ぶ』つくば国際スポーツアカデミー・アソシエーション(TIAS)編 ; 塚本拓也 [ほか] 著. 日経BPマーケティング (発売), 2016.12【分類780.7-Ts66 】

【コメント】
筑波大学の学生の皆さんが、選手やコーチではなく、スポーツ組織で職員として働くという選択肢は、就活でも考えることがないと思います。さらにそれが国際オリンピック委員会や国際サッカー連盟のような国際スポーツ組織となるとなおさらかもしれません。しかし近年、国際的なスポーツ組織で職員として働く日本人が出てくるようになりました。この本ではそうした日本人のインタビューと、国際スポーツ組織に就職するために有利なヨーロッパの大学院を紹介しています。世界のスポーツ組織の職員となることも夢ではありません。ぜひ本書を読んでヒントをつかんでください。


教員著作紹介コメント(Timur Dadabaev先生)

ブックコメントのアイコンTimur Dadabaev先生(人文社会系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『Kazakhstan, Kyrgyzstan, and Uzbekistan : life and politics during the Soviet era 』Timur Dadabaev, Hisao Komatsu, editors. Palgrave Macmillan, c2017【分類229.6-D12】

【コメント】

これまでの旧ソ連中央アジア地域に関する歴史研究は、主に資料を中心に構成されており、人々の声や彼らが経験してきたことは無視されることが多かった。しかし、時代の政治的なイデオロギーを多く反映する歴史資料に、人々の経験に関する記憶を加えて検討することで、時代と様々な出来事をはじめて説明することができるようになるのではないだろうか。本書では、そのようなカザフスタン、キルギスとウズベキスタンの人々の記憶を提供することで、ソ連時代の複雑さをより客観的に理解できるようになることへの貢献を目指した。
 本研究の回答者の証言から読み取れる過去(ソ連時代に対する)ノスタルジーが興味深い現象である。国民がソ連時代にノスタルジーを抱く理由は、主に二つ挙げられる。一つは、過去に対するノスタルジーがカザフスタン、キルギス、ウズベキスタンのみならず、どこの国の人にも共通するものであることである。それは、自分がまだ若く様々なことに挑戦していた時代に戻りたい、という気持ちから生じると思われる。
 二つ目には、旧ソ連を構成していた中央アジアのウズベキスタン、カザフスタンとキルギスの人々が持つ特殊性である。すなわち、自分たちがこれまで経験してきた出来事、政治体制、社会などに関する感情に基づいた懐かしさである。間接的ではあるものの、そのような懐かしさは単に過去に対する憧れだけでなく、現在の生活に対する不満も物語っている。彼らの多くは自分たちの現時点での生活や経済・社会状況の観点から当時を思い出し、ノスタルジーを感じ、ソ連時代を非常に高く評価する。具体的には、ソビエト的な価値観、社会制度、生活の安定感、人々の仕事やお互いに対する関係に見られた規律、高水準の労働や教育、そしてソ連の一部を構成しているという誇りがその理由としてよく挙げられる。これらが人々の中に未だに残るソ連時代の魅力とこの時代に対する愛着の要因となっている。

ダダバエフ ティムールと小松久男、 Kazakhstan, Kyrgyzstan, and Uzbekistan: Life and Politics during the Soviet Era, NY: Palgrave Macmillan, 2017年1月刊行
http://www.palgrave.com/jp/book/9781137522351