教員著作紹介コメント(礒田正美先生)

ブックコメントのアイコン礒田正美先生(教育開発国際協力研究センター)より、ご著書の紹介コメントをいただきました。
【本の情報】
『Red dragonfly mathematics challenge』Yasuhiro Hosomizu/editors, Peter Gould, Masami Isoda, Foo Chuan Eng.State of NSW Department of Education and Training , c2010【分類375.412-H94】

【コメント】
 本書は、現、附属小学校細水保宏副校長による「頭スッキリ-算数脳トレーニング-赤版」のオーストラリアでの翻案です。オーストラリア、ニュー・サウス・ウェルズ州政府教育省から教員研修用に出版されました。
 インド数学という言葉が一頃流行りました。そこで話題にされた教材のほとんどは、日本では以前から知られていましたし、教科書等にも入っていました。インド数学は、経済発展著しい「インド」と称し編纂され、昔、自分が受けた教育を覚えていない視聴者がみるバラエティ番組で増幅され流行しました。算数・数学がバラエティで面白いのは、わかっている大人がみるからです。わかっていない子どもが初めて学ぶ時の状況とは随分違います。
 教材のルーツを調べることは研究者の仕事。覚めた目で眺める数学教育の研究者からすれば「あの日本がインド数学を学んでいる」というニュースが、米国を発信源に世界に流布したことの方が驚きでした。衰退する日本にダメ出しをするニュアンスを伴ったニュースとして米国から世界に流れたわけです。もと情報が妥当でないだけに残念です。それは、商用タイトルがマスコミタイトルとして流れる今日の状況を象徴しており、商用タイトルで韓国が日本を含む世界を席巻し、日本ブランドが魅力を失っていく時代と符合しています。
 さて、原著「算数脳トレーニング」は、教育開発国際協力研究センターが教員研修用に英訳・西訳し、途上国の教員研修担当者に対するJICA研修や、タイ、メキシコ、チリ、ブラジルでの研修などで、現地語化され、使われてきました。日本が主導するアジア・太平洋経済協力(APEC)「授業研究による算数・数学教育の革新(筑波大学・アジア太平洋経済協力国際会議の母体)」でもこれまで紹介しています。本書は、同州教育省視学官(教科教育関係者としての最高位ポスト)Peter Gold博士が、そのよさを認め、教育開発国際協力研究センターによる英訳版(礒田、符:ブルネイ)を改めて、シドニーを含むニュー・サウス・ウェルズ州の先生方向けに、礒田と翻案したものです。序文にあるように、本書で取り上げる教材の多くは、オーストラリアでも知られてます。その本が、日本の教材を原著にまとめられている点が、日本の算数・数学とその教育がユニバーサルに共有し得る優れた内容であることを象徴しています。
 いずれにしても、皆さんの将来は、日本の浮沈とかかわっています。日本流ブームを起こす能力は、これからを生きる皆さんに必要な資質です。教育において日本の魅力を世界に示すことは教育開発国際協力研究センターの役割です。
 そのような意味で、本書を手にして下されば幸いです。

掲載ページ:筑波大学教員著作の紹介(2010年度)


Comments are closed.