Monthly Archives: 5月 2015

教員著作紹介コメント(山口卓男先生)

ブックコメントのアイコン山口卓男先生(ビジネス科学研究科)よりご著書の紹介コメントをいただきました。
【本の情報】
『新しい学校法務の実践と理論 : 教育現場と弁護士の効果的な連携のために』山口卓男編著. 日本加除出版, 2014.11【分類374-Y24】

【コメント】
近時、学校をめぐる法的紛争が増えていますが、教員がこれに適切に対応できない事態が多く見られます。その背景として、教員の伝統的な思考・行動様式が、現代の法化社会に適合できていないことが指摘できます。しかし、すべての教員が法律に習熟することを求めるのは現実的ではなく、それよりも、学校が、いつでも法律専門家のサポートを受けられる体制を整えることの方が価値的と思われます。他方で、弁護士の例でも、学校の実情に即した有益な活動が十分にはできていないのが実情です。そこで、このギャップを埋めるにはどうしたらよいか、という問題意識が本書の基本的な視点になっています。


ミニ展示「Stop! 不正行為 あなたは大丈夫?-捏造・改ざん・盗用-」

5月22日(金)から、中央図書館本館2階のラーニング・スクエアでミニ展示「Stop! 不正行為 あなたは大丈夫?-捏造・改ざん・盗用-」が始まりました!

新入生向けのフレッシュマンセミナーでも口を酸っぱくして繰り返しているこの話題、意外とあなたの身近に、不正三兄弟は潜んでいますよ・・・

もちろん借りて読むこともできますので、気になった本はぜひ手に取ってみてください。もしも読みたい本が既に誰かに借りられていたら、下のリンクからOPACを開いてご予約をどうぞ!

Stop! 不正行為1
Stop! 不正行為2Stop! 不正行為3

参考

筑波大学研究者倫理パンフレット「知の品格」(PDF)

展示図書リスト

【研究不正・研究倫理・知的財産権に関する図書】

【論文・レポートの書き方に関する図書】


Readingバトン(梅村雅之 計算科学研究センター長)

Readingバトン梅村先生

Readingバトン-教員から筑波大生へのmessage-
山田(前)学長波多野(前)附属図書館長吉武大学研究センター長中山附属図書館長秋山先生渡辺先生五十嵐先生森先生野村先生松本先生永田学長池田先生守屋先生>、池田先生佐藤先生外山先生唐木先生青木先生に続く第18走者として、梅村雅之 計算科学研究センター長から寄稿いただきました。


自然界の非対称性 : 生命から宇宙まで Pick Up

『自然界の非対称性 : 生命から宇宙まで 』フランク・クロース著、はやしまさる訳. 紀伊國屋書店, 2002.3【分類404-C79】

Book Review
 この自然界は非対称性に満ちており,もし自然が完全に対称だったら,宇宙も生命も存在しなかった。本書は,素粒子の世界から生命・宇宙まで,自然界の成り立ちを司っている非対称性の構造と起源に迫った好著である。
 私たちは,物質世界に住んでいる。当たり前と思っているかもしれないが,宇宙の始まりに物質は存在しなかった。あったのは光だけである。高エネルギー加速器実験で,非常にエネルギーの高い光を互いにぶつけると,“物質”と“反物質”が等量生まれる。物質と反物質は再度出会うと互いに消滅して光に戻ってしまう。宇宙の始まりで起きていたことは物質と反物質の生成であり,この対称性が厳密に保たれたとすると,現在我々が住んでいる物質(のみの)世界は作られなかったはずである。我々が物質世界にいるということはこの対称性が破れたためなのである。
生命現象に目を向けると,生命体の基本分子であるアミノ酸には,化学的な性質が全く同じ左巻き(L型)と右巻き(D型)が存在するが,地上の生命はなぜか左巻き(L型)のアミノ酸しか使っていない。これを,鏡像異性体過剰ないし鏡像非対称性という。鏡像異性体過剰は,19世紀のパスツール以来100年以上にわたって謎になっている。その起源を宇宙に求める説がある。1969年,オーストラリアのマーチソン村に隕石が落下し,その隕石からアミノ酸が検出され,そして鏡像異性体過剰が確認された。宇宙空間で作られたアミノ酸が隕石と共に地球に運ばれて生命の起源となり,L型のアミノ酸だけからなる生命が誕生したというのが宇宙起源説である。(我々の研究室でもこの宇宙起源説の研究をしている。)
 本書では,この他にも,原子・原子核,人体,銀河における非対称性に至るまで,興味深く説明されている。この本を通して,自然界の非対称性の意味と,自然の奥深さを知ってほしい。

■次回の更新は6月下旬を予定しています。


教員著作紹介コメント(礒田正美先生)

ブックコメントのアイコン礒田正美先生(教育開発国際協力研究センター)よりご著書の紹介コメントをいただきました。
【本の情報】
『Lesson study : challenges in mathematics education : hardcover(Series on mathematics education:v. 3)』edited by Maitree Inprasitha … [et al.]. World Scientific, c2015【分類375.41-I57】

【コメント】
 1872年学制発布と同時に設置された師範学校(筑波大学の創基)は、1873年に附属小学校を設ける。以来、附属学校を中心に国内発展し、世界で絶賛される日本型算数授業を生み出した開発型研究方法が「授業研究」である。筑波大学教育開発国際協力研究センターCRICEDは、附属教員と共同し、世界各国の授業研究展開を支援するコアセンターとして機能している。
 本書は、2006年1月に始まり、10年目を迎えた日本政府・タイ政府提案APEC人材養成部門HRDWG「授業研究による算数数学教育の革新」プロジェクト前半の研究成果を収めた書籍である。ともに筑波大学OBであるMasami IsodaとMaitree Inprasithaが共同代表を務める同プロジェクトは、1)筑波大学で研究主題を共有する計画会合、文部科学省・コンケン大学共催、筑波大学・アジア太平洋経済協力国際会議を実施し、2)各国で授業研究を実施し、3)タイ教育省・筑波大学共催、コンケン大学・アジア太平洋国際会議で報告会合を実施する年次サイクルで展開され、APEC21ヵ国授業研究ネットワークのハブとして機能している。
 グローバル時代を生きる読者には想像し難いであろう。円の価値が著しく低かった筆者の恩師の時代には、「アメリカでは」と語る紹介や訪問調査結果の解説が最新学術動向となった。その後、観察した授業が、5年、10年後の論文出版時に変わらないことを前提にした授業記録の国際比較も盛んになった。グローバル時代を先導するAPEC「授業研究による算数・数学教育の革新」プロジェクトが目指すのは、比較のための授業データの固定化ではなく、授業改善そのものである。今日より明日、明日より明後日とよくなること、それが次世代を担う子どもを育てる授業研究である。どうすればよくなるのか。そのために日本側は、各国で授業公開し、各国教師を覚醒させ、日本の算数教科書を翻訳し、卓越した算数数学授業研究を実施し、革新的な指導法や教材、アイデアが内外で開発し合い共有し合うことを目指す。
 何がよいものであるかを示し、そのようなよりよい授業を再現可能にする、よりよい授業実現の方途を示す再現科学を構築することで日本の教育学が世界の学術動向を先導することまでも視野に加えて、本書は出版された。
関連文献
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/w5lib/?p=1959