Monthly Archives: 2月 2011

Readingバトン(波多野澄雄 附属図書館長)

ReadingバトンReadingバトン-教員から筑波大生へのmessage-
山田学長に続く第2走者として、波多野澄雄 附属図書館長に寄稿いただきました。


Pick Up
『歴史を学ぶということ』入江昭著.講談社 , 2005.10【分類289-I64】

Book Review
この本は、高校を卒業後、すぐにアメリカに留学され、半世紀を歴史の教育と研究に捧げた入江昭教授の自伝風の歴史の入門書です。主に新入生向けに開講している全学共通科目「大学と学問」と題するオムニバス講座の教材の一つです。
普通の入門書とはちがって、自分の体験に寄り添いながら、歴史を学ぶということは何を意味するのか、現在の世界を理解するにあたって、なぜ歴史が重要なのか、といったことを考えようというものです。例えば、自分の国の歴史をどのように理解し、どのように後の世代に伝えて行くべきか、といった問題について、私たちはどうしても日本人の立場で過去を正当化しがちです。その例が歴史教科書です。日本の教科書は、他国から見ると日本の過去の戦争や外交を正当化しているように見え、しばしば批判され、国際問題となることがあります。
この問題をどのように考えるべきなのでしょうか。歴史教科書は、その国の歴史や伝統に基づくもので、歴史を国際化したり、他国と共有したりすることはあり得ないという立場も当然あります。入江教授は、それはそれで一つの見方であるが、「一国の歴史は他国との歴史との関連においてこそはじめて意味をもってくるのだ、という考えも尊重されなければならない」と述べています。なぜなら、現代世界が人や情報や文化・文明が国境を超えて激しく移動し、私たちの生活に影響を及ぼし、いわゆるグローバル化しているとすれば、一つの国の歴史も他国との関係や世界とのつながりのなかで、その発展や特徴を考えることの方が意味があり、重要であるという見方も成り立つからです。つまり、一人一人が現代の世界をどう理解するかによって、歴史の見方も違ってくるというわけです。
本書の世界を見る眼は、悲観的であるより楽観的で、現実的であるより理想的ですが、私たちはどのような世界に生きているの、どこに向かおうとしているのか、世界の動きや過去をどのように理解すればよいのか、といったことを考える多くのヒントが含まれています。

■次は、吉武博通大学研究センター長です。


電子ジャーナルのアンケート実施中!


平成25年度以降に購入するものを含めた、筑波大学における電子ジャーナル等の整備方針を検討する上で参考とするため、附属図書館では1月末から皆様のご意見を募集しています。
3月末まで行っていますので、ぜひご協力をお願いいたします!

詳細はPrism No.27「電子ジャーナルのアンケート実施中!」や、下記回答ページをご覧下さい。

実施期間:(平成23年1月25日~)3月31日(木)まで
回答方法:下記Webページの回答フォームからご回答願います。
(学内からのみアクセスできます)
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/tsukuba-only/enqform2011.html
図書館トップページにもリンクがあります!

ちゅーりっぷさん研究・学習を行う上で欠くことのできない、重要な学術情報基盤の整備に関わるお話です。ぜひ貴重なご意見をお聞かせください!


教員著作紹介コメント(徳田安春先生)

ブックコメントのアイコン徳田安春先生(附属病院水戸地域医療教育センター)より、ご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『バイタルサインでここまでわかる! : OKとNG(「ジェネラリスト・マスターズ」シリーズ:3)』徳田安春著.カイ書林 , 2010.8【分類492.1-To35】

【コメント】
 バイタルサインは、患者の生死にかかわる急性期医療の領域で非常に重要なテーマであることから本書の出版を企画しました。
 本書のコア部分では、症例に基づいた解説を行いました。「症例提示→研修医の判断→指導医のフィードバック→ポイントと解説」で1つのセットとしました。血圧低下とショックの鑑別診断に加え、脈拍や体温の異常値の解釈や、診療所や在宅医療でも役に立つバイタルサインの「裏技集」も盛り込みました。第五のバイタルサインとしての静脈圧についても詳しく取り上げました。
 また、本書では呼吸数の評価の有用性について多くの症例を紹介しました。呼吸数は、「脱水VS敗血症」の鑑別のポイントにもなります。呼吸数の把握の無い状態で、SpO2や血液ガス分析データの正しい解釈はできません。
 本書ではまた、特別企画として、聖路加国際病院理事長・名誉院長の日野原重明先生とのバイタルサインについての会談内容も盛り込みました。バイタルサインの歴史的意義に加え、オスラー先生の回診のあり方などについて、多くの貴重なお話をお聞きすることができました。会談内容を読み進めながら、バイタルサインの病態生理学的解釈法が理解できるようにコラム欄を設置し、理解を深めることができるように工夫しました。
 医学生のみならず、ナース、救命士、検査技師、コメディカルを目指す学生にも役立つ内容と思います。


教員著作のページに3点追加

先生方からご寄贈いただいた著作3点を「筑波大学教員著作の紹介(2010年度)」のリストに追加しました。

  • 池田元先生(名誉教授)
  • 中込四郎先生(人間総合科学研究科体育学専攻)
  • 徳田安春先生(附属病院水戸地域医療教育センター)

掲載ページ:筑波大学教員著作の紹介(2010年度)


教員著作紹介コメント(礒田正美先生)

ブックコメントのアイコン礒田正美先生(教育開発国際協力研究センター)より、ご著書の紹介コメントをいただきました。
【本の情報】
『Red dragonfly mathematics challenge』Yasuhiro Hosomizu/editors, Peter Gould, Masami Isoda, Foo Chuan Eng.State of NSW Department of Education and Training , c2010【分類375.412-H94】

【コメント】
 本書は、現、附属小学校細水保宏副校長による「頭スッキリ-算数脳トレーニング-赤版」のオーストラリアでの翻案です。オーストラリア、ニュー・サウス・ウェルズ州政府教育省から教員研修用に出版されました。
 インド数学という言葉が一頃流行りました。そこで話題にされた教材のほとんどは、日本では以前から知られていましたし、教科書等にも入っていました。インド数学は、経済発展著しい「インド」と称し編纂され、昔、自分が受けた教育を覚えていない視聴者がみるバラエティ番組で増幅され流行しました。算数・数学がバラエティで面白いのは、わかっている大人がみるからです。わかっていない子どもが初めて学ぶ時の状況とは随分違います。
 教材のルーツを調べることは研究者の仕事。覚めた目で眺める数学教育の研究者からすれば「あの日本がインド数学を学んでいる」というニュースが、米国を発信源に世界に流布したことの方が驚きでした。衰退する日本にダメ出しをするニュアンスを伴ったニュースとして米国から世界に流れたわけです。もと情報が妥当でないだけに残念です。それは、商用タイトルがマスコミタイトルとして流れる今日の状況を象徴しており、商用タイトルで韓国が日本を含む世界を席巻し、日本ブランドが魅力を失っていく時代と符合しています。
 さて、原著「算数脳トレーニング」は、教育開発国際協力研究センターが教員研修用に英訳・西訳し、途上国の教員研修担当者に対するJICA研修や、タイ、メキシコ、チリ、ブラジルでの研修などで、現地語化され、使われてきました。日本が主導するアジア・太平洋経済協力(APEC)「授業研究による算数・数学教育の革新(筑波大学・アジア太平洋経済協力国際会議の母体)」でもこれまで紹介しています。本書は、同州教育省視学官(教科教育関係者としての最高位ポスト)Peter Gold博士が、そのよさを認め、教育開発国際協力研究センターによる英訳版(礒田、符:ブルネイ)を改めて、シドニーを含むニュー・サウス・ウェルズ州の先生方向けに、礒田と翻案したものです。序文にあるように、本書で取り上げる教材の多くは、オーストラリアでも知られてます。その本が、日本の教材を原著にまとめられている点が、日本の算数・数学とその教育がユニバーサルに共有し得る優れた内容であることを象徴しています。
 いずれにしても、皆さんの将来は、日本の浮沈とかかわっています。日本流ブームを起こす能力は、これからを生きる皆さんに必要な資質です。教育において日本の魅力を世界に示すことは教育開発国際協力研究センターの役割です。
 そのような意味で、本書を手にして下されば幸いです。

掲載ページ:筑波大学教員著作の紹介(2010年度)