教員著作紹介コメント(高橋 義雄先生先生)

ブックコメントのアイコン高橋 義雄先生(体育系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『国際スポーツ組織で働こう! : 世界の最先端スポーツ大学院でマネジメントを学ぶ』つくば国際スポーツアカデミー・アソシエーション(TIAS)編 ; 塚本拓也 [ほか] 著. 日経BPマーケティング (発売), 2016.12【分類780.7-Ts66 】

【コメント】
筑波大学の学生の皆さんが、選手やコーチではなく、スポーツ組織で職員として働くという選択肢は、就活でも考えることがないと思います。さらにそれが国際オリンピック委員会や国際サッカー連盟のような国際スポーツ組織となるとなおさらかもしれません。しかし近年、国際的なスポーツ組織で職員として働く日本人が出てくるようになりました。この本ではそうした日本人のインタビューと、国際スポーツ組織に就職するために有利なヨーロッパの大学院を紹介しています。世界のスポーツ組織の職員となることも夢ではありません。ぜひ本書を読んでヒントをつかんでください。


教員著作紹介コメント(Timur Dadabaev先生)

ブックコメントのアイコンTimur Dadabaev先生(人文社会系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『Kazakhstan, Kyrgyzstan, and Uzbekistan : life and politics during the Soviet era 』Timur Dadabaev, Hisao Komatsu, editors. Palgrave Macmillan, c2017【分類229.6-D12】

【コメント】

これまでの旧ソ連中央アジア地域に関する歴史研究は、主に資料を中心に構成されており、人々の声や彼らが経験してきたことは無視されることが多かった。しかし、時代の政治的なイデオロギーを多く反映する歴史資料に、人々の経験に関する記憶を加えて検討することで、時代と様々な出来事をはじめて説明することができるようになるのではないだろうか。本書では、そのようなカザフスタン、キルギスとウズベキスタンの人々の記憶を提供することで、ソ連時代の複雑さをより客観的に理解できるようになることへの貢献を目指した。
 本研究の回答者の証言から読み取れる過去(ソ連時代に対する)ノスタルジーが興味深い現象である。国民がソ連時代にノスタルジーを抱く理由は、主に二つ挙げられる。一つは、過去に対するノスタルジーがカザフスタン、キルギス、ウズベキスタンのみならず、どこの国の人にも共通するものであることである。それは、自分がまだ若く様々なことに挑戦していた時代に戻りたい、という気持ちから生じると思われる。
 二つ目には、旧ソ連を構成していた中央アジアのウズベキスタン、カザフスタンとキルギスの人々が持つ特殊性である。すなわち、自分たちがこれまで経験してきた出来事、政治体制、社会などに関する感情に基づいた懐かしさである。間接的ではあるものの、そのような懐かしさは単に過去に対する憧れだけでなく、現在の生活に対する不満も物語っている。彼らの多くは自分たちの現時点での生活や経済・社会状況の観点から当時を思い出し、ノスタルジーを感じ、ソ連時代を非常に高く評価する。具体的には、ソビエト的な価値観、社会制度、生活の安定感、人々の仕事やお互いに対する関係に見られた規律、高水準の労働や教育、そしてソ連の一部を構成しているという誇りがその理由としてよく挙げられる。これらが人々の中に未だに残るソ連時代の魅力とこの時代に対する愛着の要因となっている。

ダダバエフ ティムールと小松久男、 Kazakhstan, Kyrgyzstan, and Uzbekistan: Life and Politics during the Soviet Era, NY: Palgrave Macmillan, 2017年1月刊行
http://www.palgrave.com/jp/book/9781137522351


教員著作紹介コメント(Timur Dadabaev先生)

ブックコメントのアイコンTimur Dadabaev先生(人文社会系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『Social Capital Construction and Governance in Central Asia : Communities and NGOs in post-Soviet Uzbekistan 』Timur Dadabaev, Murod Ismailov, Yutaka Tsujinaka, editors. Palgrave Mac, c2017【分類312.296-D12】

【コメント】
出版社HP:http://www.palgrave.com/gp/book/9781137522337
目次は以下を参照。
https://www.academia.edu/30849761/_1_2017_Social_Capital_Construction_and_Governance_in_Central_Asia_Communities_and_NGOs_in_post-Soviet_Uzbekistan_Co-edited_with_Tsujinaka_Yutaka_and_Murod_Ismailov._NY_Palgrave_Macmillan._ISBN_978-1-137-52233-7_

本書の目的は社会主義時代以降の中央アジアにおけるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の構築過程とその諸問題を、ウズベキスタンの事例を通して理解することである。同時に、本書の主な分析対象は2016年9月に死亡したウズベキスタン初代大統領カリモフの時代であり、彼の政権下におけるソーシャル・キャピタルの構築の試みに焦点をあてる。
 1991年のソビエト連邦崩壊以降のウズベキスタンにおける政治改革に関する評価は様々であり、研究者間で多様な議論を引き起こしている。一方で、初代大統領の貢献として、ウズベキスタンの政治的な安定維持と過激イスラーム思想の普及阻止があげられる一方、彼の政権への批判点として、国内のガバナンス問題、人権問題、横領問題などがあげられる。その意味で、独立後26年を経過しながら依然として長期的な安定性をもつ一方、国民を意識した政治制度が確立されていないことは、ウズベキスタンが抱える問題である。
 同時に、初代大統領が構築しようとしたソーシャル・キャピタルモデルの分析が未だ十分に行われておらず、本書はまずこれまでのウズベキスタンにおける市民組織を取り上げ、これらの組織と国家の関係、権限の分け方、それらに関する多様な問題についての説明を試みる。本書の狙いは、これらの課題への結論を出すことではなく、むしろこれらの問題についての議論を呼びかけ、現地の視線と海外からの見方を融合させることにある。本書の各章における結論は暫定的なものであり、著者としてこれらが更なる研究のきっかけになればよいと思っている。本書は単にウズベキスタンの現状を把握することだけでなく、中央アジア・ウズベキスタンの事例を、ソーシャル・キャピタルの理論に位置づけ、日本の自治会との比較も試みている。これらを通して、中央アジアのソーシャル・キャピタルの実情をより広い観点から考えられるように工夫をしている。


教員著作紹介コメント(中野目 徹先生)

ブックコメントのアイコン中野目徹先生(人文社会系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『長善館史料館所蔵資料目録』長善館史料館所蔵資料調査会編集. 燕市教育委員会, 2017.2【分類372.105-C57】

【コメント】
本書は、新潟県燕市の長善館史料館の所蔵資料を、人文学類「日本史実習」受講の学生たちとともに整理して作成した目録です。長善館とは、江戸時代後期の天保4(1833)年から明治45(1912)年まで同地に存続した漢学を中心とする私塾で、のべ1000名もの学生が学んだといわれています。調査は、平成25(2013)年度に始まり、本年度まで4年間にわたって続けられ、毎年約20名、のべ約80名の学生たちが加わって行われました。整理して目録に収めた資料は約2000点に及びます。このなかには、歴代の館主に宛てた多くの書簡のほか、塾で使用した教科書や著名人の掛軸などもありました。また付録としてCD-ROM版の目録も付け、検索の便を高めてあります。今後は、整理した資料の精査に加えて、現在は新潟県立文書館に保存されている歴代館主の日記を解読していく予定です。実習授業の成果報告書として本書を見ていただけますと幸いです。


教員著作紹介コメント(礒田 正美先生)

礒田 正美先生(人間系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『数学的思考 : 人間の心と学び』David Tall著, 礒田正美・岸本忠之監訳.岸本忠之,添田佳伸,木根主税,渡邊耕二,小原豊,真野祐輔,北島茂樹,馬場卓也,布川和彦,溝口達也,植野義明,新木伸次,中和 渚,白石和夫,佐伯昭彦訳.東京: 共立出版.【分類410-Ta75】

【コメント】
本書の原著は、David Tall (2013). How Human Learn to Think Mathematically: Exploring the three worlds of mathematics. Cambridge University Pressであり、原題の直訳は「人はいかに数学的に考えることを学ぶか: 数学三世界の探検」である。原著裏表紙には礒田を含む3者による次のような推薦文がある。
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本書は、数学的思考とアイデアの発達にかかる30年に及ぶDavid Tall氏による研究の到達点である。それは、こどもに垣間見られる思考やアイデアとしてはじまり、やがては概念結晶として発現する。数学的思考とその学習という主題は、大きな主題であり、特定の視座においては部分的な像しか映せない、容易に全体を描き出せない主題である。対照的に、本書は、読者に大局的な鳥瞰、数学理解の発達に関する総合的で全体的な視野を提供する。

Alan H. Schoenfeld カリフォルニア大学バークレイ校、米国

友人Davidは、数学学習と数学的活動、数学授業とを通じて学習者が当面する、数学に起源する障害に重要かつ意義深い洞察を展開する類まれな研究者の一人である。本書で、彼は、研究者の夢である数学的思考にかかる統一理論を提供する。それは、幼児から大人になるまで、すべての学校段階で遭遇する肯定的ないし否定的な経験を両方とも考慮した理論となっている。その理論によって、数学世界で機能する概念結晶に先立つものとして累積経験が圧縮される様相が示される。

John Mason オープン大学、英国

Tall教授は、日本の授業研究で顕著にみられる問題解決型の学習指導も含めた数学の教授学習過程への様々な指導法に柔軟に応ずる簡潔な用語で、数学概念の発展を解説している。本書を、小学校から大学までのすべての学校段階における教員養成課程の学生・院生、教員に推薦したい。

礒田正美、筑波大学、日本

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本書は、数学的活動の三大要素(文部省1999、礒田正美2014)、1)振り返ることによる絶え間ない知識の再構成、2)数学的認識とその価値の追究、3)数学の発展方法の獲得において、特に1)と2)の実際の様相を、数学三世界を念頭に記したものである。15名の共訳者に感謝したい。
参考文献
文部省(1999).中学校学習指導要領(平成10年12月)解説:数学編.大阪書籍.
礒田正美(2014).算数・数学教育における数学的活動による学習過程の構成:数学化原理と表現世界、微分積分への数量関係・関数領域の指導.共立出版.