教員著作紹介コメント(鷲津 浩子先生)

鷲津 浩子先生(人文社会系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『文色と理方 : 知識の枠組み』 鷲津浩子著.南雲堂, 2017.9 【分類939.02-W44】

【コメント】
「〈あいろ〉と〈りかた〉」と読みます。落語『蝦蟇の油』からガマの油売りの口上で、「遠目山越し笠のうち、物の文色と理方がわからぬ」と続きます。前半ははっきりと見えないことを示し、後半の〈文色〉は「様子、模様」、〈理方〉は「理屈、原理」という意味ですから、はっきり見えないからチンプンカンプンということですね。
とはいえ、この本は落語の解説本でも、筑波山の案内書でもありません。南北戦争前アメリカ散文についての〈文学研究〉の本です。
ああ、感想文かと思ったあなた!文学なんてくだらないと思ったあなた!この本はあなたのためにあります。
というのも、この本は時代限定地域限定の〈文学〉作品を扱うことにより、その時代のその地域のものの考え方(副題の〈知識の枠組み〉)を探ろうという試みだからです。この作業を通して、従来の〈文学〉あるいは〈文学研究〉の概念を変えようという大胆不敵な企てだからです。
文学好きなあなたには、きっと〈読む〉ことの面白さ、楽しさを伝えてくれることでしょう。


教員著作紹介コメント(山本 容子先生)

山本 容子先生(人間系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『環境倫理を育む環境教育と授業 : ディープ・エコロジーからのアプローチ』 山本容子著.風間書房, 2017.1 【分類375-Y31】

【コメント】
本書は、欧米を中心として広まりつつある環境倫理、特にディープ・エコロジーの視点を導入した環境教育の展開と特質を解明し、その授業づくりを実践的に検討したものです。
ディープ・エコロジー思想は、環境問題の解決を人間の内面の意識変革に求めており、自然の中での「自己実現」(self-realization)を通して生命の固有の価値を見つめ直すことを試みています。この思想を導入した環境教育は、特に、アメリカ、カナダ、オーストラリアにおいて広まりを見せています。
本研究では、ディープ・エコロジー思想の中心概念「自己実現」を導入し、内面の自己変革を図ることを目的とした、高校生物における環境教育のプログラム開発を行いました。ディープ・エコロジーは日本の禅の思想の影響も受けているといわれておりますので、本研究で実践したプログラムはいわば、日本から欧米に渡った日本の思想を逆輸入し、日本の学校教育と生徒の実態を考慮して開発した環境教育であると言えます。そして、日本の高校生の環境意識がどのように変化したのか、また、このような環境教育を行う上での課題は何かを検討しています。筆者が2013年に筑波大学に提出した博士(教育学)学位請求論文に基づくものでありますので、お読みいただけましたら幸いです。


教員著作紹介コメント(齋藤 一先生)

齋藤 一先生(人文社会系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『「原爆」を読む文化事典』川口隆行編著.青弓社, 2017【分類319.8-Ka92】

【コメント】
私齋藤(文芸・言語専攻)も3項目執筆しているこの「事典」、意図してはいないのですが、とてもタイムリーな本になりました。まずは今年のノーベル文学賞。長崎市生まれのイギリス人小説家、カズオ・イシグロが見事受賞しましたが、彼のデビュー作は長崎を(も)舞台にした『遠い山なみの光』(1982年)です。その一節に触れたのが、私が書いた「2 復興」です。また、この夏はDPRK(北朝鮮)による核実験やミサイル発射がアジアに緊張感をもたらしていますが、この件を歴史を踏まえて理解したい人は高榮蘭先生ご執筆の「35 朝鮮半島と核危機」は必読です。さらに、昨年映画『シン・ゴジラ』を観て、ゴジラシリーズに興味を持った人は高野吾朗先生ご執筆の「47 怪獣」も面白いでしょう。こうの史代氏の漫画や映画『この世界の片隅に』に関心がある方、ICANのノーベル平和賞受賞に興味がある方、東日本大震災以降の文学に関心がある方…この本を手にとって、目次を頼りに拾い読みしてみてください。「原爆」や「核」が私たちの「文化」の深いところに影響を与えていることが了解できるはずです。


教員著作紹介コメント(礒田 正美先生)

礒田 正美先生(人間系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『Textbooks for sustainable development : a guide to embedding』United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization Mahatma Gandhi Institute of Education for Peace and Sustainable Development (UNESCO MGIEP), 2017【分類372-Te93】

【コメント】
本書は、UNESCOレベル1センターであるMahatma Gandhi Institute of Education for Peace and Sustainable Developmentが展開する「持続可能な開発目標SDGsを実現する教科書開発」プロジェクトが発行したSDGs向け教科書開発にかかるガイドブックです(UNESCO-MGIEP発行2017年6月)。共通のガイドラインと、算数数学科、理科、社会科(地理)、言語科(国語、第二外国語等)などの教科毎に期待される教科書ガイドラインが記されています。礒田は、附属高等学校の川崎宜昭先生とのAPECプロジェクトにおける開発教材を事例に、算数・数学教科書のガイドラインを分担しています。筑波大学はUNESCO-MGIEPと共同プロジェクトを展開しており、裏表紙には、筑波大学ロゴが掲載されています。

参照URL:
http://mgiep.unesco.org/wp-content/uploads/2017/07/COMPLETE-GUIDEBOOK_Textbooks-for-Sustainable-Development.pdf


教員著作紹介コメント(礒田 正美先生)

礒田 正美先生(人間系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】
『古代エジプトの数学 : 文明繁栄のアルゴリズム』David Reimer著, 富永星訳, 礒田正美監修.東京 : 丸善出版, 2017【分類410.242-R25】

【コメント】
本書は、David ReimerによるCount Like an Egyptianの邦訳です。訳者は珠玉の理系翻訳書を産出される富永星氏、礒田は自身の研究の一環として監修しました。古代エジプトの数学は、数学史研究上は20世紀冒頭の四半世紀までにその解読が完結し、早くから算数・数学教科書にも取り上げられてきました。その教材開発は、イスラエルのAbraham Arcavi (現、国際数学連合ICMI事務局長) 先生が1980年代に学位論文で手掛けた新展開により今日へと前進します。Arcavi先生の研究をふまえ、2002年には本学教育研究科で筆者のもとで岐阜県派遣の高橋秀樹先生がWebサイトと修士論文をまとめました。1998年にはじまる礒田とArcavi先生との研究交流は、第一級の国際誌Educational Studies in Mathematics (Springer)に、Learning to Listenという表題で成果を結びます(2007)。それら経験を前提に礒田は本書を監修しました。礒田は、他者の立場を想定する解釈学的な営みに基づく理解こそが、今日求められる資質・能力であることを提唱しています。その資質・能力を鍛える良書として本書を監修したことを序文に記しました。序文では、グローバル化への資質・能力育成に算数数学教育が必須であること、その教材書として古代エジプト数学を読み解く本書が評価されるべきであることを解説しています。
数学史上の原典を活用した教材開発に関わって20年、礒田が寄贈してきた貴重書は「数学の叡智」展(2015)にみるまでに充実しました。次世代を担う皆さんが、自身の世界展開の礎として、それら貴重書を活用下さることを願っています。

参照URL:
https://link.springer.com/article/10.1007/s10649-006-9075-8
http://math-info.criced.tsukuba.ac.jp/museum/RhindPapyrus/index.htm
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/exhibition/2015math/index.html