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図書館情報大学の「ディジタル図書館システム」

田畑孝一

 最近になって,未だかつてない意欲のみなぎりと覇気の息づきを,図書館の館員からひしひしと感じている.競って互いの図書館の情報をWebで発信する姿,競って資料のディジタル化を図る姿に,これからやってくる図書館員躍動の世界をかいま見るのである.そこには創意工夫の喜び,主体性の誇り,気概の高まりが溢れている.MARCで提供される無味乾燥な書誌情報の入力というこれまでの単純作業から,知的な教養を生かして様々なコンテンツを図書館員が自ら創成し,来館者のみならず世界の人々に向けて発信できるディジタル図書館の時代がやってきた.
 この新たな時代を迎えて,幸いにも,関係当局の理解と尽力により,1999年2月,本学に 「ディジタル図書館システム」 が導入された.本学のシステムの特徴は次のとおりである.
 (1)インターネットで自動収集する図書館情報学分野の国際的な情報資源を整理し,そのメタデータを作成し,学内外に提供する.メタデータとはどんな情報資源がどこにあるかを示すものである(図書館であれば所蔵目録に相当するもの).
 (2)主として図書館情報学分野のディジタル全文情報を収集し,提供する.
 (3)ディジタル図書館に関する研究開発環境を提供し,その開発成果をシステムに取り込む.
 (4)ビデオを始めとするマルチメディア情報をディジタル形態で統合して扱える機能を提供する.
 (5)書庫がかつて開架式になって自由に図書をブラウジングできるようになったように,書庫や閲覧室のあちこちに置かれたパソコンで,利用者がディジタル図書館システムやインターネットに自由にアクセスでき,またそれを自分のノート代わりに利用できるopen Desktop環境を提供する.個人のパソコンを持ち込んでシステムに自由に接続することもできる.
 本学では,特に(1)のメタデータの学外提供に力点を置くことにしている.しかしながら,本学で受け持つ分野は図書館情報学という学問分野のごく一部にしか過ぎず,またその限られた分野としてもすべてを網羅することはできない.けれども,印刷物を所蔵する従来の図書館と違って,ディジタル図書館は,インターネットをまたぐ仮想図書館であり,日本はもちろん世界中の他館と一体となって情報資源を利用者にサービスするものである.ディジタル図書館のそのような特性を生かし,他館との相互補完を常に念頭に置きつつ本学のシステムを運用していかねばならない.
 コンテンツはいうまでもなく,その作成者が著作権者や編者として敬意が払われ,尊重される.それがどこに置いてあるかはもはやディジタル図書館では問題とはならない.その意味で本学の設備に他機関のコンテンツの受け入れを呼びかけ,また本学のコンテンツを他機関に積極的に提供していきたいものである.
 あらゆる機関の図書館が互いにその設備とコンテンツについて協同と連携を行うことが,ディジタル図書館の成功の鍵である.機関の壁を超えて図書館員が互いに信頼し連携を図っていくことが,ディジタル図書館と共にやってくるネットワーク文化社会において,図書館員が意欲溌刺その主役を継続していくための原動力となるに違いない.


本学教授,総合情報処理センター長(「ディジタル図書館システム」 仕様策定委員長)
ULIS Digital Library,by Koichi TABATA