「またチョーケンの季節ですね。」これが年度始めの図書館情報課の挨拶代わりである。「チョーケン」これは我が課の年問を通して最大の、また受講生にとっては多分図書館職員としての人生最大のイベントであろう「大学図書館職員長期研修」の略称である。この研修は、文部省と本学の母体であった図書館短大の共催という形で昭和44年度に始められた(図書館短大閉学、本学開学の移行時の昭和54年度は東京大学、昭和55年度は東京学芸大学で開催)。以後30年近くにわたり大学図書館職員の再教育の場として1,000人近くの修了生を送り出してきた。これは受講生及び裏方として、この研修に関わってきた私の目から見た最近の「チョーケン」事情である。
生活環境の向上
最近の研修で劇的に変わったのは、居住環境であろう。つい最近まではつくぱ地区での宿泊場所は、本学の学生宿舎であった。これは学生が夏休みに帰省して空いた部屋を使うもので、蒸し暑いつくばの夏に扇風機すらない事がどんなに過酷であるか。いきおい冷たいものを飲みながらの課外研修になり、同時期に宿泊している司書講習生から騒がしいとの苦情が舞い込むことになる。現在は、本学から徒歩10分程の場所にあるクーラー付きの宿泊施設となった。東京地区での宿泊も改装前の本郷会館、竹橋会館を経て、現在は新築された代々木のオリンピックセンターとなった。ただし、環境は良くなったが課外研修については相変わらず盛んに行われているようである。
研修内容の見直し
長い間研修を続けていると、時代にそぐわなくなった講義が出てくるが、研修内容について不断に見直し、再検討を行い常に内容をリフレッシュしている。勿論これは、文部省、研修先の各機関の多大なご協力により実現している。一例をあげると、長い間国立国会図書館が見学場所になっているが、内容は大きく変わっている。以前は、書庫の中を隈無く案内していただき、「貸出制限資料群」の実際を見ることが出来たのだが、最近は、保存と修復のセクションを中心としたものとなっている。実際に修復を行っている現場を見せていただき、担当者との意見交換の場も設定していただいている。また、平成5年度からは、本学において、実際にワークステーションを使った実習もスタートしている。この実習により初めてUNIXのコマンドを使う人、電子メイルの便利さを体感する人もいて機械の食わず嫌いの解消に少しは役立っているものと自負している。なお、つくば地区での研修期間中は、各人にIDを発行しているので、自分の大学に接続し、留守中に届いたメイルを読むこと等も可能である。
ヒューマンネットワーク
昔も今も変わらないことは、3週間の研修で作られるネットワークである。毎年研修も終わりに近づくと、同窓会作りが始まる。毎年名前が付くが、昨年度はオリンピックにちなんで、「アトランタの会」となった。各年の同窓会も夏になると各地を巡って総会を開催しているようである。かくいう私自身も6月頃になると、今年は何時かなと日程が気になり出す。当日は、全国各地から三々五々集合し、集まったとたん10年以上の歳月は泡のごとく消え去り、課外研修の続きが始まる。設立母体・大学の垣根を越えた40人近くの図書館職員の仲間たち、これは私の何物にも替え難い財産である。
最近は、研修生の中に本学の卒業生を見かけるようになった。本学の出身者が着実に育ってきたかと思うと、また一段と感慨深いものがある。