東京大学附属図書館事務部長
高 橋 柏
経済や社会の大変動と科学技術の進展の中で、日本の大学は新しい世紀を前に改革を求められ、大学図書館も変革を求められている。以下の視点から大学図書館の現状と課題を述べ、さらに課題解決の可能性を探る。どこを切り口に課題に取り組むかはそれぞれの置かれた状況で異なるが、私の日頃の経験を述べることにより、このテーマに応えたい。
1. 大学図書館の自己認識の必要性
(1)大学図書館をどこに位置づけるか
○組織目的、機能
図書館の役割を考える。
資料の収集、整理、提供、保存
過去から現在までの人間の知的営みを集成 「知の殿堂」
○大学の中で
教育、研究の支援
・学生のために学習環境の整備充実(資料、スペース、装置、機器の提供)
学習のための資料・情報の提供
・研究者に教育研究のための資料・情報を提供
・次世代型図書館 場所の提供(個々の研究室にはない情報
環境の提供)インタラクティヴ(双方向
性の情報環境をどうつくるか
○大学の外から
学外へのサービスへの期待
文化財の集積場所
○国際化の中で
技術の進歩
情報のグローバル化
国際的な情報アクセス 相互協力
日本のニーズ、外国のニーズ
○技術の進歩の中で
大学図書館情報化の年表
現状
(2)自己点検・自己評価
2. 大学の組織原理を考える
(1)学術研究
学術研究とは
(2)高等教育
大学改革
3. 統計数値に現われた大学図書館の現状
文部省の大学図書館実態調査からみると
(1)ひと 職員
(2)もの 蔵書数、受入数
(3)かね 予算(運営費、資料費)
4. 大学図書館の利用者
日本の学習人口・研究者人口をみる。
(1)学部学生、大学院生(教育を受ける。学習する。)
留学生
留学生はどこから、どのくらい来ているか。
(2)教員(教育をする。研究をする。)
外国人研究員等
(3)教員以外の職員(学習活動を支援する。教育・研究活動を支援する。)
(4)学外者
・ 学生 ・ 教員 ・ 一般市民 一般市民への図書館公開
5.大学図書館の課題
予算不足、施設不足、設備不足、資料不足、人手不足、人材不足、知恵不足
(1) 電子図書館的機能の整備
(2) 資料収集に関する諸問題
(3) 図書館間相互協力の強化・充実
(4) 国際ILL体制の整備
(5) 資料の増加と保存施設の確保
(6) 資料の劣化対策
(7) 図書館サービスと著作権問題
(8) 一般市民への公開
(9) 図書館職員の教育訓練の強化と人材確保
(10)コンピュータシステムの改善
(11)事務の効率化・事務組織機構の改善
(12)防災対策
6.課題解決のための手法
(1)ひと
○個人の力でできること
仕事をおもしろくする。楽しくする。
目標(業務量、期限)を定め、期限内に達成する。
難しいことでもやってみる。
ためになると思うことは教える。
困っている人がいれば手伝う。
○協力を得ること(役割分担、協同作業)
個人 分からないことはもの知りに教えてもらう。
組織(館内) 仲間をつくること。ブレインストーミングが必要。上司を動かす。
(学内) 教員、学生への働きかけをどうするか。
(学外) 折りに触れて図書館をPRする。
○ボランティア やってみたい人はたくさんいる。
(2)もの
○ 施設
○ 設備
○ 資料
(3)かね
○予算制度(国立大学の場合)
概算要求、補正予算、タイミングを逃すな。
単年度主義
○おかねの流れを知る(国立大学の場合)
文部省配当経費、学内配当経費、学長裁量経費、科学研究費補助金、奨学寄
附金、その他。
7.解決のヒントを見つける
計画と説得 現実的計画をつくる。 効果を明確にする。
いつでも実行できるように準備する。
計画に理解を得るための努力を惜しまない。
あきらめない。
意思決定の手順を必ず踏むこと。(組織としての意思決定とする。)
8.情報公開、公正さ