1.9 大学改革と大学図書館

文部省高等教育局大学課大学改革推進室学務係長

南  新 平

 

 大学害議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」(概要)

一競争的環境の中で個性が輝く大学一

第1章 21世紀初頭の社会状況と大学像

1 21世紀初頭の社会状況の展望と高等教育

(1)高等教育を取り巻く21世紀初頭の社会状況の展望等 一「知」の再構築が求められる時代一

  ○ 多様で新しい価値観や文明観の提示等が強く求められる時代。このため,犬学等がより幅広い視点

  から「知」を総合的に捉え直し,知的活動の一層の強化のための改革が強く求められる。

(2)我が国の発展と高等教育

  ○ 大学等がその知的活動によって社会をリードし社会の発展を支えていくという重要な役割を十分

  に果たしてこそ,21世紀の国際社会において我が国が発展していくことが可能

2 高等教育改革進展の現状と課題

  ○ 大学改革は着実に進められているが,教育研究面,組織運営面等について未だ多くの問題点が指摘さ

  れておリ,21世紀に向け更に積極的な改革推進が必要

3 21世紀初頭の大学像

  ○ 各大学等が教育の不断の維持向上を図リ切磋琢磨する状況が創出され,それぞれの個性が輝く大

  学等として発展していくことが必要

(1)高等教育機関の多様な展開

  ○ 社会の多様な期待や要請等に適切にこたえていくためには,各大学等の多様化・個性化の推進が不可

  。また,国公私立大学がそれぞれの機能を発揮し特色ある教育研究を展開していくことが必要

  たすぺき機能を十分果たしていない国立大学については適切な評価に基づき大学等の実情に応じた改

  組転換を検討することも必要

(2)高等教育規模の展望

  ○ 大学・短大の規模については,18歳人口が120万人規模の場合(平成21年度以降約20年間)

  に70万人程度の大学・短大の入学規模を想定。これは,進学率上昇と学生の多様化を伴うため,教育

  機能の強化と厳格な成績評価の実施など学生の質の確保のための取組の抜本的実が必要

  ○ 大学院については,修士課程における高度専門職業人養成に留意し量的拡大を図るとともに,大学院

  全体の質の維持向上と教育研究条件の充実が必要国立大学については今後大学院の規模の拡大に重

  点を置く必要があるが関連して状況に応じ学部段階の規模の縮小も検討していくことが必要

(3)大学改革の基本理念 一個性が輝く大学一

  ○ 大学の自律性に基づく多様化・個性化,国際的通用性・共通性の確保,大学の社会的責任等を

   重視しつつ,次の四つの基本理念に沿って現行制度を大胆に見直し,改革を推進することが必要。

   @ 課題探求能力の育成を目指した教育研究の質の向上

   A 教育研究システムの柔構造化による大学の自律性の確保

   B 責任ある意思決定と実行を目指した組織運営体制の整備

   C 多元的な評価システムの確立による大学の個性化と教育研究の不断の改善

  ○ 独立行政法人化をはじめとする国立大学の設置形態の在リ方については,21世紀の新しい大学像を

  構築しようとするこれらの改革の進捗状況を見極めつつ,長期的視野に立って検討することが適当

 

第2章大学の個性化を目指す改革方策

1 課題探求能力の育成 一教育研究の質の向上一

(1)学部教育の再構築

 1)教育内容の在リ方 一課題探求能力の育成一

  ○ 課題探求能力(主体的に変化に対応し,自ら将来の課題を探求し,その課題に対して幅広い視野

   から柔軟かつ総合的に判断を下すことのできる力)の育成を重視するとともに,専門的素養のあ

   る人材として活躍できる基礎的能力等を培うことを基本とする。

  @ 教養教育の重視,教養教育と専門教育の有機的連携の確保(教養教育の理念・目標の実現

   のためのカリキュラム改善や全学的な実施・運営体制の整備等)

  A 専門教育における基礎・基本の重視(基礎・基本の重視,細分化された狭い知識の教育では

   なく教養敦育の理念・目標を踏まえた教育の展開が重要等)

  B 高等学校教育から学部教育への円滑な移行(学生の履修歴の多様化に対応し,入試における履修科

   目指定,入学後の大学教育における基礎教育の充実等を考慮。高校生が大学教育にふれる機会を提供)

  C 国際舞台で活躍できる能力の育成等(外国語教育充実,海外留学推進等)

 2)教育方法等の改善 一責任ある授業運営と厳格な成績評価の実施一

  ○ 単位制度の実質化のための教育方法等の改善を推進し,学生の卒業時の質を確保

  @ 授業の事前学習等の指示の徹底,教員の教育責任の徹底による責任ある授業運営

  A 成績評価基準の明示と厳格な成績評価

  B 学生の履修科目登録単位数に上限設定

  C 教育内容・授業方法の改善のための組織的取組の実施を大学の責務として明確化

  D 教育活動の評価の実施(学生や外部者の意見聴取と改善への反映等)

  E 学生の就職・採用活動に当たっての大学及び産業界の取組の改善

(2)大学院の教育研究の高度化・多様化

 1)大学院の組織編制の在リ方

  @ 大学院を中心とした大学の組織体制を整備(大学院研究科の制度上の位置付けの明確化等)

  A 一定規模以上の学生を擁する大学院は,専任教員,専用施設・設備を必須化

 2)大学院の課程の目的・役割の明確化(研究者養成に加え,高度専門職業人養成をもよリ重視した

  多様で活力あるシステムヘ)

 3)高度専門職業人養成に特化した実践的教育を行う大学院修士課程の設置促進(例えぱ,経営

  管理,法律実務,ファイナンス,国際開発・協力,公共政策,公衆衛生などの分野)

 4)卓越した教育研究拠点としての大学院の形成,支援(客観的で公正な評価に基づく,資源の

  集中的・重点的配分)

2 教育研究システムの柔構造化 一大学の自律性の確保一

(1)多様な学習需要に対応する柔軟化・弾力化

                    一学生の主体的学習意欲とその成果の積極的評価一

 1)学部段階

  @ 4年未満の在学で学部を卒業できる例外措置の導入(厳格な成績評価の下,優れた成績を

   修めた学生が卒業希望する場合,3年以上4年未満の在学で学部を卒業できる道を新たに開く)

  A 秋季(9月)入学の拡大(学年途中の入学に関する省令を改正し,柔軟化)

  B 単位互換及ぴ大学以外の教育施設等における学修の単位認定の拡大(現行は入学前・後

   各々30単位が上限→入学前・後にかかわらず合わせて60単位まで拡大。認定できる範囲も拡大)

  C 単位累積加算制度の創設の検討

 2)大学院段階

  @ 修士課程1年制コースの制度化(社会人対象を原則として,履修形態やカリキュラムの工夫

   により,1年以上2年未満で修了できる修士課程コースの設定)

  A 修士課程長期在学コースの制度化(あらかじめ標準修業年限を超える期間を在学予定期間と

   して在学できる修士課程コースの設定)

(2)大学の主休的・機動的な取組を可能とするための措置

  @ 国立大学の講座・学科目の編成の柔軟化,公私立大学の学科設置等の審査の弾カ化

  A 国立大学の人事,会計等の柔軟性の向上(教育研究経費の使途や繰越の取扱,大学教員の給与決定

   や兼職兼業等について柔軟性を向上)

  B 公私立大学に係る設置認可手続き等の簡素化(教員審査及び申請書類の見直し,電子化によ

   る負担軽減など)

(3)地域社会や産業界との連携・交流の推進,国際交流の推進

  @ 企業と大学との共同による教育ブログラムの開発・実施,リフレッシュ教育の実施など

  A 大学院と企業等の研究所との連携大学院方式や共同研究等の一層の推進など

  B 留学生交流,教員・研究者交流の一層の推進など

3 責任ある意思決定と実行 一組織運営体制の整備一

(1)責任ある運営体制の確立

  @ 開放的で積極的な新しい自主・自律体制構築のため,法改正を含め必要な改革を推進

  A 学内の機能分担の明確化(学長を中心とする大学執行部の機能,全学と学部の各機関の機能,

   執行機関と審議機関の機能分担と連携協力,審議機関の運営の基本等を明確化)

    ・学長補佐体制の整備(例えば,大学運営の企画立案等を行う運営会議(仮称)の整傭)

    ・学部長の職務の明確化

    ・評議会,教授会の審議事項・手続きの明確化

    ・教員人事に関する意思決定への学長・学部長の関与の在り方の明確化 など

  B 外部有識者によリ構成され助言・勧告機能を有する大学運営協議会(仮称)を設置

   (国立大学に設置,公私立大学については設置者の判断にゆだねる)

(2)大学情報の積極的な提供

  ○ 各大学が教育研究に関する情報を広く国民に対して提供することを制度化

  ○ 大学の財務状況に関する情報についても公表を促進

4 多元的な評価システムの確立 一大学の個性化と教育研究の不断の改善一

  @ 自己点検・評価の実施と結果公表の義務化,学外者による検証の努カ義務化

  A 第三者評価システムの導入

   ○ 透明性の高い第三者評価を行うとともに,大学評価情報の収集提供,評価の有効性等の調査

    研究を推進するための第三者機関(大学共同利用機関と同様の位置付けの機関)を設置

     ・評価の主たる対象は国立大学。公私立大学は設置者の判断にゆだねる

     ・個性や特色が十二分に発揮できるよう複数の評価手法に基づく多面的な評価の実施

     ・評価結果の国民への公表被評価者の意見提出機会の確保

  B 様々な評価情報に基づき適切な公的資源配分を実施

     ・配分の基本的な方針・基準の策定・公表

     ・第三者機関による評価は,国立大学の予算配分に際して参考資料の一部として活用

 

5 高等教育改革を進めるための基盤の確立等

 ○ 以上の高等教育改革の継続的推進には,国による条件整備のための財政的措置の裏付け

  が不可欠

 ○ 授業料は,学生や親の家計負担があまり重くならないよう努カすることが必要

 ○ 奨学金は経済的困難度を重視する観点から事業の抜本的拡充を図ることが必要

 ○ 私学助成は,社会的要請の強い特色ある教育研究プロジェクトの重点的配分を一層図

  ることが必要。財源多様化のための税制改正を図ることも重要

大学改革の具体的な推進方策

課題探求能力の育成

◇ 学部教育の再構築

 □ 課題探求能力の育成(教養教育の重視等)

 □ 責任ある授業運営と厳格な成績評価

  ・ 履修科目登録の上限設定

  ・ 教育内容や方法について教員の研修を実施

◇ 大学院の教育研究の高度化・多様化

 □ 大学院の組織編成の弾力化,プロフェショナルスクールの

  設置促進

 □ 一定規模以上の学生を擁する大学院の専任教員の配置等,

  卓越した教育研施拠点としての大学院の形成・支援 

法改正

省令

 

 

 

 

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システムの弾力化

◇ 多様な学習ニーズに対応する弾力化

 □ 厳格な成績評価のもと3年以上の在学で卒業できる特例

 □ 秋期(9月)入学の拡大,単位互換等の単位認定の拡大

 □ 大学院修士課程1年制コース,長期在学コースの導入

◇ 大学の主体的・機動的な対応を促進

 □ 国立大学の講座編制の柔軟化

 □ 国立大学の人事,会計等の柔軟性の向上

 口 公私立大学の学科設置等審査の弾力化・手続きの簡素化

法改正

省令

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責任ある意思決定と実行

◇ 社会に開かれた国立大学

 □ 外部有識者の意見を取り入れるための運営諮問会議の設置

 □ 情報の公表の義務化

◇ 国立大学の責任ある組織運営

 □ 学部教授会と評議会の役割分担の明確化

 □ 学長・学部長主導の評議会・教授会運営

 □ 学部の枠を超えた全学の一体的な運営

 □ 教員選考への学部長の関与

法改正

省令

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多元的な評価システム

◇ 自己点検・評価の充実

 □ 自己点検・評価の実施と結果公表の義務化

 □ 自己点検・評価の学外者による検証の努力義務化

◇ 第三者評価システムの導入

 □第三者機関を設置し,国立大学を主たる対象に透明性の高

  い第三者評価を実施。様々な評価情報に基づく適切な資源配

  分を実施。

法改正

省令

 

 

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