東京大学附属図書館総務課専門員 松下彰良
1.東京大学をとりまく環境の変化(特に情報環境)
・インターネットのインパクト
研究者や学生がインターネット(特にWWWや電子メール)を日常的に使い始めた。
→ 学術情報流通環境の激変
・開かれた図書館への要請(生涯学習社会への対応等)
→ ネットワーク経由であれば公開しやすい。インタネットであれば費用が安くてすむ。
・情報の海外への提供の要請(国際化)
・大学改革への対応
2.東京大学における研究教育環境・情報環境の変化
・学内LAN(UTnet2)の整備とインターネット等情報利用環境の整備
・駒場における情報処理教育の必修化 → 今後は、マルチメディアとネットワークを使っ
た講義等、教育における情報技術の活用が進むと予想される。
・3極構造化 → 柏地区に図書館・計算機センタ−・博物館等の機能を融合化させた「メ
ディアテック(仮称)」ができる予定。
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・東京大学の教育研究活動に密接に結びついた図書館情報サービス(研究教育支援機能)の強
化の必要性
・統合化された情報サービスへの要望
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(対応策)
・予算・人的資源の問題
附属図書館(総合図書館+部局図書館・室)の予算及び人的資源だけでは限界がある。
附属図書館(総合図書館+部局図書館)、大型計算機センター、教育計算機センター、
総合研究博物館、その他、学内の情報関連機関との連携の重要性・必要性
↓
・図書行政商議会のもとに設置された「附属図書館学術情報システム特別委員会」等で学内
情報関連機関と附属図書館との連携のあり方について検討中
3.学術情報システム、NACSIS、大学図書館
個々の大学(図書館)における学術情報システムは、学術情報システム全体および学術情報セン
ターとの密接な関連のもとに考える必要がある。
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│ 学術情報センター 大 学 図 書 館 │
│ 業 務 面 サービス面 │
│NACSIS │ │
│ −CAT(全国大学│ 蔵書目録DBの形成 │ OPAC │
│ 図書館総合目録)│ │ │
│ −ILL │ 相互利用・相互協力 │ 相互貸借(国公私、海外) │
│ │ │ DDS(現物、電子的) │
│ −IR │ レファレンスサービス │ 文献調査 │
│ │ │ 各種DBサービス │
│ │ │ CD-ROM、学内作成DB、その他 │
│ −Mail │ 大学個別のメールサー │ NACSIS-Mailは全国の大学の教職員・ │
│ │ バーの構築 │ 院生等が利用可能。 │
│─────────┼───────────┼──────────────── │
│ −ELS │ 電子図書館サービス │ WWW等によるサービスの統合化 │
│ │ マルチメディア │ WEB-OPAC、各種DB、オンラインジャ− │
│ │ │ ナル、利用案内、学外(特にインター │
│ │ │ ネット上)の情報へのナビゲート機 │
│ 能その他 │
│────────────────────────────────────── │
│ 学 術 情 報 シ ス テ ム │
│ SINET(インターネット・バックボーン)+ 学内LAN + インタネット │
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4.東京大学附属図書館の学術情報システムの現状
●62の図書館・室(総合図書館と63部局図書館・室)
・業務システム(資料管理、目録、閲覧、ILLローカルシステム、学情接続等)
*資料管理及び閲覧サブシステム等は一部の部局でのみ稼働
・情報サービスシステム
・事務のシステム(1人1台、電子メールの活用)
*会計事務以外、図書館事務の電算化は、大部分未実施(物品管理、人事等)
●運用調整班とシステム管理掛(=現状3名)
A.システムの現状
┌─────────┐
│ リプレース前のシステム │
│(図書館専用計算機)│
│ ホスト+専用端末 │
└─────────┘
┌────────┐リプレース
────────┤ 現行システム ├───────────
│ まだ Biblion │図書館業務システムの大型計算機センターへの移行
└────────┘
┌────────┐ 大型計算機センターと連携しつつ、汎用機中
│ 分散システム │ 心のシステムからUNIXワークステーショ
└────────┘ ン中心の分散システムに移行(予定)
B.情報サービスの現状
┌────────────────────────────────────────┐
│ 東 京 大 学 附 属 図 書 館 │
│・東京大学総合目録│・OPAC(インタネットへ公開) │
│ │ 要WEB-OPACの開発 │
│・ILL │・センターシステムとローカルシステム │
│ │ 要ILL参加部局(受付館)の拡大 │
│ │・ドキュメントデリバリー(現物、電子的)→ Ariel等の試行 │
│・レファレンス・情報サービス│・電子メールを使った参考質問受付回答サービス │
│ │・サービスDBの拡充(CD-ROM、学位、目次速報、EESその他) │
│・電子メール等 │・総合図書館メールサーバ → 附属図書館メールサーバ構築へ │
│─────────┼──────────────────────────────│
│・電子図書館サービス │ WWW等を利用した情報サービスの統合化、オンラインジャーナル │
│ │ マルチメディア広報・展示,WHOミラーサーバ、その他 │
│ │ 学外(特にインタネット上)の情報へのナビゲート機能 │
│────────────────────────────────────────│
│★情報利用環境(メディアプラザ、情報コンセント整備、教育用計算機センター端末他)│
└────────────────────────────────────────┘
5.課題
1.現行図書館情報システムの改善
・分散システムの導入
・情報サービスの統合化
・よりユーザーフレンドリーなシステムを(利用者が求める情報に容易にアクセ
ス可能な共通インターフェースの提供)
・国際標準(例:ANSI−Z39.50)
2.電子化への対応
大学図書館においては、現在、「電子図書館的機能の強化」が最重要課題の一つ
となっている。東京大学附属図書館でも、附属図書館の将来計画に関する全学的な
検討に呼応して、図書館の組織・運営での抜本的改善の方策を探るべく、鋭意検討
を行っている。電子化の課題としては以下のようなものがあげられる。
(1) 電子化の体制
・組織、予算、要員
電子情報サービス掛新設の必要性等
(2) OPAC
・検索システムとユーザインタフェース(WEB-OPAC)
・遡及入力
(3) 外部電子情報資料の利用
・大学図書館サーバ、大学図書館共同サーバ
高額DB等の共同サーバでの提供
(4) 資料の電子化
・図書館所蔵印刷資料の電子化
・新規電子化(例:電子教材の作成)
(5) 電子情報資料利用環境の整備(特に学生用)
(6) ILLシステム
・ドキュメントデリバリ−サービスの改善(Ariel等)
(7) その他
・広報(利用案内及び学内外への広報)
・電子図書館(サービス)と著作権、情報利用コスト