Readingバトン(守屋正彦 芸術系教授)

2014年9月29日
Readingバトン -教員から筑波大生へのmessage-
池田先生に続く第13走者として、守屋正彦 芸術系教授から寄稿いただきました。

 

 

Pick Up
『アジア宗教の基本的性格』マックス・ウェーバー 池田昭[ほか]訳.勁草書房 , 1975 【分類160.2-W51】

Book Review
 学問の上では恩師や人との出会いが重要であるが、それにもまして、本は人を導く。本書はわたしが現在の研究視点を拓くきっかけとなった、はるか昔に出版された本である。今も座右に置いている。あちこちに書き込みや線が引かれ、若いころに学んだ歴史が重ねられている。
 私は美術史を専門としており、表現されたものについて歴史的な解釈を加える。美術品を眺め、鑑賞し、解釈するが、どうしても狭隘な視点でモノを捉えがちになり、視野狭窄であった。いわゆる重箱の隅を突くのである。学生のころは資料、文献を一生懸命渉猟したが、どのように研究すればよいのか「力のいれどころ」がわからないまま知識を仕入れたのであった。
 そんな折にドイツの社会学者で経済学者のヴェーバーの著書に出会ったのである。当時、わたしは法隆寺を中心に仏教美術を学んでいた。日本的でない、グローバルな俯瞰的視点に導かれるように、彼の強引で、時に達意ある文章にわたしは酔い、彼が語るアジアの中の日本について、自己の妄想を加えながら、まさに《拝読》したのである。時が経ち、宗教学者として山折哲夫を知ることになるが、彼が本書を訳していたことは、その後になって知ることになった。1920年に亡くなった彼が著した本書が日本の一学徒に美術史を一生の糧として生きていこうと決意させたのである。

■次は、佐藤忍先生(本部教育企画室長)です。