教員著作紹介コメント(礒田正美先生)

礒田正美先生(教育開発国際協力研究センター)よりご著書の紹介コメントをいただきました。(2015/02/12)

【本の情報】
『Regional integration through educational innovation, exchange and cooperation : institutionalization beyond the ASEAN community』edited by Fernando Palacio and Masami Isoda/with the support of Abigail Cuales Lanceta. The Southeast Asian Ministers of Education Organization (SEAMEO) Secretariat, 2015【分類372.2-P17】

【コメント】
 知識基盤社会下で展開するグローバル化―そこでは、地域統合の志向性・ペースは経済・政策を基準に刻まれているかの如くみなされる―において様々な挑戦が求められる。その挑戦以前に、それぞれの教育機関・プロジェクトが未来像を展望する代替的方法を提供するために、その役割・視野を集約する。本書「教育革新と教育交換、教育協力を通しての地域統合:アセアン共同体を超えた制度化Regional Integration through Educational Innovation, Exchange and Cooperation: Institutionalization beyond the ASEAN Community」は、教育における国際協力とは人の絆に留まるものではなく真摯な共同活動としての制度化によって強化される組織間と国家間の結びつきと認め、であればこそ教育における国際協力が明るい未来を創造しえると信ずる人々による共同的な努力の成果である。—-以上、本書の裏表紙より。
 グローバル人材の養成では、グローバル化の展開を予見し、それを意図的に設定するなど、グローバル化それ自体を利用する革新的な人材育成が期待される。その育成を企画し実現する教育機関は、何よりもグローバル化に先んずる教育ビジョンを提示し、そのビジョンに対する制度を企画、提案し、実現する必要がある。本書は、その教育ビジョンを具体化し、制度化するために編纂された。
 筑波大学ならびに筑波大学教育開発国際協力研究センターCRICEDは、我が国で唯一、東南アジア教育大臣機構SEAMEOと提携する機関、アジア太平洋経済協力APEC人材養成部門HRDWGプロジェクトを実施する機関としての役割を担い、東南アジア・環太平洋地域における国際組織に対するハブ機関として、内外で傑出した先導的役割を担っている。本書は、上述の目的のためにSEAMEOと筑波大学が連携し2014年2月に実施した2つの国際シンポジウムNew Direction in Higher Education for the Development of Global Human Resouces: Launching AIMS Programme in JapanとBridging the ASEAN Community and Japan through Educationの成果を集約している。参加者は、文部科学省、SEAMEO事務局、SEAMEO20センター、AIMSプログラム国内参加11大学、海外関係16大学、招待講演者、筑波大学関係者等である。本書には、その講演録も収められている。特に本学関係では大学研究センターの金子元久教授による高等教育へのグローバル化、ベントン・キャロライン副学長による本学のAIMS プログラム構想、池田潤学長補佐 による本学のスパーグローバル大学構想、そしてCRICEDをハブにした日本とSEAMEOとの共同構想なども収められている。
 筑波大学教育開発国際協力研究センターCRICEDが切り開いたASEAN諸国との協力関係を反映し、本書の扉には、SEAMEOと筑波大学のロゴが示されている。本書は、SEAMEO事務局とCRICEDのweb siteからも電子書籍としても配布され る。CRICEDは、これまでAPECプロジェクトに係る教育協力の成果として、英語、スペイン語、ロシア語、タイ語による書籍を海外出版してきた。SEAMEOからの出版は、今回が初回である。CRICEDは、世界動向を牽引する一環として、東南アジアASEAN、環太平洋APEC各国・地域の教育改革を先導する諸組織と引き続き連携し、研究成果を出版していく。