教員著作紹介コメント(松岡 完先生 )

『そもそもアメリカってなに?』書影

そもそもアメリカってなに? : メイキング・オブ・USA

松岡完著

東京 : 現代書館, 2022.5【分類 302.53-Ma86】

【コメント】

 現代書館という出版社が2022年にスタートした「そもそも」シリーズ中の1冊です。主として若い世代(中学生~高校生~大学生)を念頭に置いて、わかっているようでじつはよくわからない、世の中のさまざまな事象について考えてみようという企画です。そこで本書も、できる限りわかりやすく、読みやすく、興味深い形にしたつもりです。もちろん年齢や経験などを問わず、何かについてあらためて勉強し直してみようと考える方すべて大歓迎です。他にも「そもそも英語ってなに?」「そもそもお公家さんってなに?」などがあります。
 本書のテーマはアメリカ(アメリカ合衆国)。私たちは日々、アメリカ発の、あるいはアメリカが関与するニュースに接しています。取り囲まれている、といったほうがよいかもしれません。政界にせよ経済界にせよ芸能・スポーツ・芸術といった分野にせよ、著名なアメリカ人の名前はいくつも思いつくことでしょう。ジーンズをはき、アメリカの大学や野球チームの名をプリントしたトレーナーやTシャツを身につけた学生は、キャンパスでも珍しくありません。いや、筑波大学附属図書館に足を運びさえすれば、スターバックスがアメリカの香りとともにあなたを待っています(私もときどき行っています)。
 でも、そもそもアメリカって、どんなところ? どうやってこの世に生まれたの? この名がついた理由は? 「ユナイテッド・ステーツ」と呼ばれるのはなぜ? パンを食べステーキを平らげるのに、なぜ「米」国? どれくらい広いの? 日本から見てどの方角にあるの? どうしてこんなに大きな存在なの? アメリカ人って、どんな人たちなの? どうやって暮らしているの? どのような歴史をたどってきたの? 政治はどんなシステムで運営されているの? 外交は何をめざしているの? 経済はどのように歩んできたの? 軍隊はこれまで何をしてきたの? 社会はどんな問題を抱え、解決を試みてきたの?……こうした問いに、すぐに答えられる人がどれほどいるでしょうか。じつをいえば、私自身にもかなり怪しいところがあります――さて答えは、この本を開いてのお楽しみ。
 私自身は大学で、筑波大学でいえば国際総合学類に相当するコースに進みました。大学院で博士号をとった後、37年ばかり教壇に立ち、2023年度までは社会学類でアメリカ外交史などを教えてきました。1950~60年代を中心に、アメリカの冷戦外交をずっと勉強してもきました。「ケネディ」と「ベトナム戦争」がその中核です。ですから逆に、アメリカの経済、文化、社会、民族などについては、門外漢も同然です。白状しますが、最初この本を書くお話をいただいた時、とても自分には無理なテーマだと尻込みしました。
 実際に、かなりの悪戦苦闘を強いられました。まったく知らなかったことも、間違った思い込みもありました。この歳になってあらためて大学生となり、40年あまり前に履修した「アメリカの政治」「アメリカの文学」などのさまざまな科目を受け直したような気持ちも味わいました。でもそれがあらためて、「なるほど」「へえそうなの」「だからいまがこうなのか」といった新鮮な驚きと、学ぶ楽しさをもたらしてくれました。みなさんにもそれを共有していただければ、そしてアメリカの過去・現在・未来にいっそう興味を抱いていただければ、こんなに嬉しいことはありません。

(人文社会系・松岡 完)