教員著作紹介コメント(矢部愛子先生)

【本の情報】

Deaf Rhetoric: An Ecology of Health Communication

Manako Yabe

Cham : Springer, c2022【分類 369.276-Y11】

【コメント】

医療従事者や医学生、病院経営者、医療手話通訳者などを対象に、聴覚障害を持つ患者とのより望ましいコミュニケーションを目指して、コミュニケーションにおける問題点、そして対面手話通訳と遠隔手話通訳の特徴や利点・問題点を明らかにしています。現在、米国の病院では、オンライン技術の発達とコロナウイルスの感染拡大によって、対面手話通訳が減り、遠隔手話通訳がますます普及してきています。その結果、遠隔通訳を行うための技術的課題も明確になってきていますが、それ以上に患者とのコミュニケーションにおける誤解と、その結果としての誤診のリスクが問題となっています。また、予算制約の中で、重大な治療とそうではない治療における対面手話通訳と遠隔手話通訳の使い分けについて、医療従事者と聴覚障害の患者では、意見が異なる場合があることを踏まえた上で、実施する医療に相応しい情報保障を提供する必要性を述べています。また、身体的、心理的、社会的、物理的、時間的な原因が、望ましいコミュニケーション方法の選択に及ぼす影響に関して、『ヘルスコミュニケーション・エゴロジー理論』を創り出しました。この理論によって、これまでの医療コミュニケーションにおいて、意識されていながらも、解決の方向性が与えられてこなかった問題に対して、何を追求すればよいかを理解することが可能になりました。

そして、病院経営者に対しては、重大な医療おいて、何よりも対面手話通訳予算の確保と維持を優先することの重要性を訴えています。

出版社リンク:https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-030-96245-6