教員著作紹介コメント(赤平昌文先生)

【本の情報】

Statistical estimation for truncated exponential families』  
Masafumi Akahira
[Singapore] : Springer, c2017【分類 417.6-A29】


【コメント】

最近、注目されているデータサイエンスにおいて、その中核の担っている数理統計学の果たす役割は大きい。

通常、統計的推定論では、母集団分布を正規分布、2項分布、ポアソン分布等を含む指数型分布族のような
正則分布族に限定して論じることが多い。しかし、正則条件を必ずしも満足しないような非正則分布族のモ
デルにおける統計的推定は比較的未開拓領域である。たとえば、(上側切断)パレート(Pareto)分布はファ
イナンス、物理学、水文学、天文学、生命科学、経済学等の分野でよく用いられているが、この分布は切断
母数(パラメータ)をもつ典型的な非正則分布で形状母数ももつ。

本書は、(上側切断)パレート分布を含む切断指数型分布族の切断母数と自然母数の最尤推定、ベイズ推定
において標本の大きさが無限に大きくなるときに高次の次数(オーダー)まで漸近的に解析して得られた、
著者らの最近の一連の成果をまとめたモノグラフである。

結局、切断指数型分布族のモデルにおいて真のモデルを推定して得られる近似モデルの損失が解析的に表現
可能であることが示されている。例として、(切断)パレート分布、切断指数分布、切断正規分布、切断ベー
タ分布、切断アーラン(Erlang)型分布、切断対数正規分布等の場合が挙げられている。

赤平 昌文