教員著作紹介コメント(津城 寛文 先生)

津城寛文 先生(人文社会系 文芸・言語専攻)よりご著書の紹介コメントをいただきました。

【本の情報】

『古語短歌 : 日本の頂点文化』
  日守麟伍著
    [東京] : インプレスR&D PODサービス, 2019.7   【分類911.168-H59】


【コメント】
本書は、著者が宗教研究や日本研究のかたわら、ここ20年ほどの間に詠んできた和歌を、
まとめたものです。内容は、古典にある「歌物語」「歌日記」に範をとった作品篇と、
「入門」「演習」の形をとった解説編の、2部からなっています。

どのような専門であれ、実用だけを目指す研究は、あまり品位のあることではなく、
美的、思想的、形而上学的な側面を涵養すること、そのためさまざまな芸術を嗜むことは、
知識人、教養人として、不可欠のことです。とくに、言語をもちいた芸術は、母語話者ならでは、
味わうことのできない、特権的な趣味です。
中国からの留学生には、漢詩を嗜むことを勧めるのと同様の意味で、日本語母語話者には、
和歌を嗜むことを勧めたいと思います。他の国からの留学生には、それぞれの国の伝統詩歌を
嗜むことを、勧めています。漢詩も和歌も、その他の伝統詩歌も、それを深く味わうことで、
文化的な自尊心を守ることができます。

グローバル化が進み、言語的には、企業でも大学でも英語化の圧力が強まる中、母語を保存、
刷新、発信することは、国際社会における文化戦略としても、重要なことです。

この小著が、若い方々が母語芸術を嗜む参考になりますように、切に祈ります。(津城寛文)