教員著作紹介コメント(礒田正美先生)

礒田正美先生(人間系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。(2018/05/07)

【本の情報】
『SEAMEO basic education standards (SEA-BES) : common core regional learning standards (CCRLS) in mathematics and science』Dominador Dizon Mangao, Nur Jahan Ahmad, Masami Isoda editors, SEAMEO RECSAM, c2017【分類372.2-Ma43】

【コメント】
本書は、東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)理数教育センター(RECSAM)が発行した東南アジア(ASEAN)数学・理科教育課程基準である。2015年、ASEANはOne Vison, One Identity, One CommunityをスローガンにASEAN共同体を発足させ、EU同様に一体として強国化をめざす。そのための教育政策を立案するのがSEAMEOである。新興国と途上国からなるASEANは、加盟各国の宗教、民族などの文化多様性を尊重する。同時に、高質人材の育成、国境を越えた域内人材のモビリティを実現することで、一層の経済成長を実現しようとする。そのためになされるのが、域内教育課程標準化政策である。シンガポールを除くASEAN各国進学校の学力水準は、シンガポールと同等である。課題は各国内で著しく認められる格差にある。格差解消には質の高い教育課程基準を定め、それを教える教師の指導力向上が必要条件となる。そこでは各国毎の教育課程基準と教師教育の改善が求められる。それを議論するにもその現状を示す参照基準(ベンチマーク)がいる。その参照基準として真っ先に編纂されたのが本教育課程基準である。

筑波大学はSEAMEOに対する日本国内唯一の提携機関であり、その窓口は教育開発国際協力研究センターCRICEDである。CRICEDを担う筆者は、その背景から編者の一人としてその編纂に深く携わった。筆者が担ったもう一つの役割は域外研究者との橋渡しである。日本からも国立教育政策研究所関係者や数学・理科教育研究者(含む本学出身者)が動向紹介、校閲に携わった。諸兄の尽力により、その内容は世界水準で研ぎ澄まされた。

話題が逸れるが日本の大学がその国際指標において順位を下げるのは、ASEANを含めた新興国の大学に越されているからである。この時代に挑む学生諸君はもちろんだが、Top100をめざす研究大学RU11の一翼を担う我々もうかうかしてはいられまい。

Imagine the Future、その先をめざそう。