教員著作紹介コメント(礒田 正美先生)

礒田 正美先生(教育開発国際協力研究センター)よりご著書の紹介コメントをいただきました。(2012/6/1)

【本の情報】
『Оригамика : математические опыты со складыванием бумаги』Кадзуо Хага/редакторы, Масами Исода, И.Р. Высоцкий/перевод на русский язык, И.Р.Высоцкий, Е.В. Логинова. , 2012【分類414-H12】

【コメント】
 本書はORIGAMICSのロシア語版である。原著は、日本語で明治図書、英語でWorld Scientific社より出版されている。ただし、日本語版の増補版が英語版であり、本書は英語版をさらに増補している状況下から、正確にはロシア語版しかないオリジナル書である。
 原著者は筑波大学名誉教授の芳賀和夫、ロシア語版の翻訳編者筆頭は礒田正美であるが、実際に翻訳に携わったのは2番目に名前が記されたイワン・ビソツキー(モスクワ教育大学)である。彼のロシア語訳を、礒田がバックトランスレートする形の作業となった。
 ORIGAMICSは、芳賀和夫がOrigami + Mathematicsという意味で提唱した造語である。折り紙の数学的探究という主旨で名付けられた。折り紙の数学的解析それ自体は、学位論文まである数学上の研究対象であり、古くからある数学的対象である。生物学者である芳賀は、高等学校までの初等数学による探究を愉しんでおり、その成果として万人が楽しめる数学的探究書が生まれたのである。日本語版、英語版は学校教育の中で、数学の課題学習などで度々参照されている。
 生物学実験で計時的な探究をする際に、1時間後まで顕微鏡を覗くのを待つというような状況がしばしば発生すると言う。顕微鏡の傍らには観察内容をスケッチするA4用紙が常にある。芳賀は、その待ち時間に、折り紙をはじめ、A4用紙から数々の発見を行った。なお、日本のある建築家が、それとは別の言葉ORIGAMICという語で、切って立体図形を浮き出す飛び出す絵本的手法による別の提案を行っている。そのため、ORIGAMICSをORIGAMICの複数形と誤解される方もいる。先端の創作折り紙の世界では、芳賀の作品とORIGAMICSは、たいへん著名であり、芳賀の研究成果を他の成果と混同する方はどこにもいない。