教員著作紹介コメント(岡本智周先生)

岡本智周先生(人間系)よりご著書の紹介コメントをいただきました。(2015/01/09)

【本の情報】
『共生社会に関する調査 : 2014年調査報告』岡本智周, 坂口真康編集. 筑波大学人間系研究戦略委員会, 2014.12【分類361.4-O42】

【コメント】
 筑波大学共生教育社会学研究室では2013年から2014年にかけて、「共生社会に関する調査」に取り組みました。この調査研究は、筑波大学人間系研究戦略委員会の課題を引き受ける形で進行しました。日本の社会意識の現状を把握し、「共生」への志向性がポジティブ-ネガティブに分岐する点がいずこにあるのかを探索しています。
 この調査はインターネットを利用したウェブ調査として行っていますが、全国の成人を対象とし、性別(男性/女性)・年齢(20代/30代/40代/50代/60代以上)・居住地域(北海道/東北/関東/中部/近畿/中国/四国/九州)ごとに日本の総人口に比例した人口構成比で、計2000名を抽出しています。かなり大きな規模のデータを得ることができました。
 分析の結果を報告論集としてまとめたものが、『共生社会に関する調査――2014年調査報告』です。「共生」に関わる社会意識の様態を捉えることで、社会のなかの多様性や、支援を必要とする状況についての人びとの認識構造が示されました。また、その認識の関連要因となる社会的属性や社会的経験が分析されています。
 様々な指標に基づくそうした分析を通して、現在の日本における共生志向の分岐点を描き出しています。そしてその分岐点に関して、「いかなる働きかけが可能か」あるいは「考え方が分かれていくこと自体をいかに理解し得るか」を考察しています。これによって、今後の研究活動での検討や働きかけの焦点、および、具体的な技術や制度の提案を進めていくための起点を把握することになりました。
 現代日本の社会意識の一端を理解するために、あるいは、社会意識を把握する調査の実例を見るために、本報告論集をご覧いただけると幸いです。