I.近代教育学の曙 -コメニウスとロック-
近代教育学の源流は、コメニウス(1592-1670)<表紙左上>に求められます。コメニウスは、主著『大教授学』で、悲惨な戦乱の世を、神による人間への試練としてうけとめ、有識と有徳そして敬神の精神で充たされた人間性の回復によって、人類再生の期待を教育に込めます。そのさい、神が創造した自然は、完全に合理的なものとして認識されました。
そして、直観と言語を通した合理的で組織的な人間形成の方法を、教授方法や学校のシステムとして確立することができる、とコメニウスは考えていたのでした。彼が創案した『世界図絵』は最初の絵入り教科書として、また『言語入門』は言語学習の模範的教科書として、後世に大きな影響を与えました。
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『世界図絵』第97章「学校」 |
『教授学全集』の巻頭を飾るコメニウス像 |
[出展文献]
- コメニウス『大教授学』 1657年(1957年)
- Johan Amos Comenius, Didactica magna, 1657, Rep., in:
- Opera didactica omnia, in aedibus Academiae Scientiarum Bohemoslovenicae, 1957.
- コメニウス『世界図絵』 1746-54年
- Johann Amos Comenius, Orbis sensualium picti pars prima et secunda, 1746-54.
- コメニウス『言語入門』第2版 1665年
- Johann Amos Comenius, Janua linguarum reserata, 2.ed., 1665.
- コメニウス『人事改善総勧告』 1966年
- Johann Amos Comenius, De rerum humanarum emendatione consultatio catholica, Editio 1, 1/T1-2, 1966.
コメニウスより40年あとにイギリスに生まれたロック(1632-1704)<頁左下>は、その合理主義を教育のうえで展開させようとしました。そこでは、健全な身体を基礎として、理性の力を頼りに、賢明な市民精神の形成が期待されていました。しかし、その合理主義にはかぎりない不安が媒介されていました。『教育論』初版<頁右下>の徳育論や宗教教育論が第3版以降では強化・拡充されたという事実は、その意味で重要です。
[出展文献]
- ロック『教育論』初版 1693年
- John Locke, Some thoughts concerning education, 1.ed., 1693.
- ロック『教育論』第3版 1695年
- John Locke, Some thoughts concerning education, 3.ed., 1695.
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Last updated: 2016/07/19