4.往来物 ―江戸の教科書

 往来物とは、平安後期から明治初期にかけての初等教科書の総称である。往来とは本来手紙のやりとりを意味し、平安時代には手紙を束ねて模範例文集としていた。やがて、教科書用に書簡を編纂するようになり、さらに、単語集や短文集等、手紙の形式を離れたものも作成された。当初は貴族や武士の子弟の教育のために、日常生活や儀礼、諸行事に関する文例が多く用いられていた。江戸時代に、寺子屋等の教育制度が発達し庶民層にも教育が普及してくると、職業教育、道徳教育、一般教養等、庶民を対象とした様々な往来が数多く作られた。いずれも日常生活に必要な知識や作法を身に付けることを目的として編纂され、各地域の文化、習慣に即した内容となっている。


4-1 「寛永本庭訓往来」一冊 寛永12(1635)年(乙ル185-413)

南北朝時代から室町時代の初期頃までに成立。武家や上層庶民の子弟の文字学習のために編まれた往来物であり、明治の初めまで広く普及した。
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4-2 「庭訓往来」一冊 明和9(1772)年(乙ル185-407)

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4-3 「実語教」一冊 文化2(1805)年(乙ル185-461)

子供向けの教訓書として編まれたもの。作者は不明だが貴族の作と思われ、学問を修める重要性を説いている。
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4-4 「童子教稚絵解」二冊 嘉永5(1852)年(乙ル185-470)

「実語教」と同様、子供向け教訓書として編まれた「童子教」に挿絵を入れたもの。子供の興味に訴え、理解を早めようとした。
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4-5 「女大学」一冊 明和9(1772)年(乙ル185-687)

江戸時代後期より近代にかけて、女子教育に大きな影響を及ぼした女子用教科書。
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4-6 「宝暦本女今川」一冊 宝暦12(1762)年(乙ル185-785)

室町時代、武人・文人として著名であった今川了俊が書き残したと伝えられる家訓をふまえて書かれた女子用教訓書。
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4-7 「百姓往来」一冊 寛政9(1797)年再刻(乙ル185-525)

明和3(1766)年に刊行されたものの再刻本。農民が労働や生活の為に必要とされる語彙を簡明に書き連ねてある。
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4-8 「商売往来」一冊(乙ル185-568)

江戸時代前期に成立。商業活動に必要な語彙と商人の心構えを説いている。
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4-9 「番匠往来」一冊 天保2(1831)年(乙ル185-549)

建築業にかかわる往来物。
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4-10 「本屋往来」一冊(乙ル185-575)

出版にかかわる語彙を集めたもの。
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4-11 「鹿嶋詣文章」一冊 寛政12(1800)年(乙ル185-629)

鹿島神宮の略記や鹿嶋の名所・風俗等について書かれている。江戸時代の中頃から、名所・旧跡の由来や縁起などについて書かれた同様の往来物が数多く刊行された。
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4-12 「江戸方角」一冊(乙ル185-670)

江戸の地名・町名・神社仏閣名等を集めている。近世以降、多くの江戸案内が出版され普及した。
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4-13 「東海道往来」一冊(乙ル185-636)

江戸より京都にいたる宿駅、53駅が七五調で詠みこまれているのが特徴の往来物。
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4-14 「名頭字尽し国尽し」一冊 天保11(1840)年(乙ル185-592)

人の姓名によく用いられる文字と国名を集めた単語集。
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